183.螺旋回廊
エリン公爵とヒヴァールが鍵を開けると扉が観音開きで開き始めた。どんな入口だと思ったらそこは緩やかなスロープが見えた。ダンジョンというから岩の階段か何かを想像していたアサミは肩透かしを食らっていた。どこもかしこもダンジョンは同じものではないのだから当然といえば当然であるが。
「皆さん、途中の結界が張られているところまではご案内します。本当はこのダンジョンの管理人を呼ぶべきでしょうけど、あいにく求人募集をかけているのですがまだ決まらないモノでして。しかたないので私が案内いたします」
「閣下、どうしてですか? あなたは案内されないのですか?」
「そこのサル娘・・・ルンファさんでしたか? わたしは即位したときに一度ダンジョンに行ったときに腰を抜かしまして・・・とにかく怖いのです! 勘弁してください」
「すいません閣下。研修の規則を教えてください。どの時点で終わりですか?」
「エヴァ・エリちゃんが見つかれば終了ですが、ポイントとしてはそれまでにダンジョンにいる物の怪と可能な限り接触する事! もちろん友好的にです。殺したいするのは論外。いまからお渡しする呪詛の葉皮紙を持ってもらう事。この紙に記録されますので後で数えます、
またズルをしないようにこちらのメイファンさんが魔道力で監視していますから、そのつもりで。それと二班はここでコイントスで結界の右に行くか左に行くかを決めてもらいます」
そういうとエリン公は作業服から一枚の小さな銀貨を取り出した。そして紋章がある方を当てた方が決めるという事を説明してからトスした。
「あーん、間違っちゃった!」ルンファの情けない声が響いたのはその直後だった。出しゃばってきた彼女がやったが、間違ってしまった。それをしり目にヴァークロウ・ラヴェルスは右に行くと宣言した。
一行が結界まで来たとき、そこから向こうは奈落にでも続いているかのような巨大な空洞が見えてきた。そしてそこには螺旋状のスロープが下まで続いていたが、その螺旋は左右に分かれていた。螺旋回廊は二本存在したのだ。
「それじゃあ、幸運を祈るぞ! なんてね」ヴァークロウ・ラヴェルスはそういってさっさと出発していった。彼らの方が様々な魔道士の器具を持っているようだったので、自信ありげだった。
一方のファビュー班といえば、ファビューが背中の荷物から何かを取り出そうとして探し物を始めていたので、なかなか出発しなかった。すると、ようやくファビューは一冊の本から何か小さなチラシらしきものを取り出していた。
「あった、これじゃ。むかし、どこかの商人からもらったのを思い出した。たしかダンジョン・デ・サンミュアッツにいるダンジョンマスターの事について書いていたんだと。もし、この人と接触できたらすぐ見つかるかもしれないから」
ファビューはそうは言ったけど、そんなボロボロの紙にある情報で間違いないだろうかと心配する一行だった。




