180.ダンジョン前で
目的であるダンジョンへの入り口は村役場のようなインヴァラ公国政府庁舎の裏庭にあった。そこは農家の中庭みたいな雰囲気で、農機具置き場や肥料置き場、そして家畜小屋などがあって、その一角にある公爵官邸の脇のドアがそれであった。
しかも公爵官邸といえば聞こえはいいが、平屋で壁土に亀裂が入りまくっているような、ボロ小屋でその周囲にある民家よりもみずぼらしかった。
「うちはねえ、ほらお金ないから民の暮らしに関係しないものには使わないのよ。だから、うちの後継者の孫なんかは他の国の大学に行ったきり帰ってこないのよ。貧乏な生活はいやだなんかいってね。
昔から言うじゃないのよ、ボロは纏っても心は錦ってね。だから、わたしは死ぬまで公爵として勤めないといけないのよ」
上品な顔立ちなのに清掃員の着るボロボロの衣装を着たエリン公爵に案内されたファビュー班とラヴェルス班は愚痴を聞いていた。この国は貧しくても歴史があるとか、観光客だけでなく魔導士すらやってこないとか、長々と聞かされうんざりとした表情をしていた。
「閣下、それよりも聖獣を探しに行かないといけないのでしょうか? 魑魅魍魎の類に危害をく割れられたりしないのですか?」
アサミは話を切り出してエリン公爵の講釈を打ち切った。おばさんの愚痴なのか自慢なのかわからない終わりがなくオチのない話に付き合うのにあきたこともあるけど、早くダンジョンに入りたかったからだ。
「ごめんなさい。それじゃあみんな説明するわね。目的は私のエヴァ・エリちゃんを地上に連れ戻すこと! 当たり前だけど怪我をさせたら許さないわよ。それに万が一死なせたら一生恨むし、巡回刑事法院に訴えるからね。
ギルドの方から事前に説明を受けたと思うけど、これから行くダンジョン・デ・サンミュアッツだけど、財宝らしいものはないのでトラップなどはないけど、たくさんの魔物が住み着いているから。どんなものがいるかは、この冊子にあるから読んでみて」
そういって渡された冊子は年季が入ったようなボロボロで、たぶん使いまわししてきたような雰囲気があった。
「あっ、ごめんね。この冊子は私が即位したときに、もの好きなトレジャー魔導士が調べてくれたのよ。だから四十年ぐらい前かな、この冊子の情報は。
そういえば彼が言うにはあんなに物の怪がいるんだから財宝ぐらいあってもいいのに、何もなかったとつまらなそうな顔をしていたわ」
その言葉を聞いた一同は、大丈夫なのかと不安な気分にどっぷりとつかり始めていた。




