018.アサミの救済案(5)
私を救済するために派遣されてきたイリス・アントラーファ・7855さんは、良いエンジェルだったようだけど、どうも一人で決める権限はないようで、上層部といちいち連絡をとっているようだった。こちらからはやり取りは見えないけど、それなりに時間がかかっていた。
その間も夜の帳の闇は深くなり、それに伴い気温も下がってきた。いくら夏だからと言っても、ベンチのうえで寝ているタクヤが少し可哀想になっていた。
今の私は霊魂だけが取り出されている状態なので、ネコのアサミの身体はタクヤの頬に寄せていた。本当なら私の身体で抱きしめてあげたい・・・とは思ってもネコだからしかたない。
「アサミ様、惑星ガルアに二人召喚するという事にしましょう。このガルアは地球があるフェアテクド582とは僅かに違うフェアテクド795に属する世界でして、地球よりも科学技術は進んでいますが、それ以上に地球でいうところの魔力が社会の基盤になっています。
また文化は中世に近いのですが、それなりに平和な社会です、ただ、そこに他の世界から召喚されると何らかの変異が生じます。その時の変異を使ってアサミ様の身体を人間に近づけます。そのあとはタクヤ様と力を合わせて生き抜いてください。必ず幸せになるはずですから」
そうイリスさんは言うけど、どうもタクヤと幸せになりたいのなら、そこで努力しなさいといっているようだった。どうも、お膳立てはするけど、後の事は自分たち次第だと言うことらしい。もっとも、エンジェルさんたちは私が死ぬのを防げなかったぐらいだから、自分で何とかしていける方がいいのかもしれなかった。
「それじゃあお願いします。ところでタクヤがこのまま地球からいなくなっても大丈夫なの?」
「大丈夫です。体勢に寄与することはありません。それにアサミ様、実はタクヤ様は病気でして、余命があと五年となっています。もちろん、アサミ様と結婚されていたら長寿になるはずだったのですが・・・こういったらいけないでしょうけど、ホームレスとして人生が終わるところでした」
「そういうことは、ネコのアサミのままでいたら、タクヤは死んでいたというわけなの?」
「そういうことです。とりあえず手続きに時間がかかりますので、その間に自然な形でタクヤ様と召喚されるように工作します。そうそう、あなたにはネコの中に戻っていただきますが、とりあえず召喚されるまではタクヤ様には思いは伝わる事がないです。
もしよろしければ、何かメッセージを彼の潜在意識にでもお伝えいたしましょうか。そのメッセージですが多分夢として認識されるはずですから」
そうイリスさんは言ったので、折角のチャンスだしタクヤと直接話してもらえる場が欲しかったのでこういった。
「それじゃあ、すいませんがタクヤと夢の中でデートをさせてくれませんか?」