177.インヴァラ公
下山してからの一行は順調にインヴァラ公国に到着した。この世界の国は大多数は小さな国で、そこも数多くある小国の一つに過ぎなかった。だから国といっても人口が二万人ぐらいしかいないところで、首都といっても国民の半数が暮らしていても規模もしれているというものだった。
「それにしても、魔導士ギルドもなんでここに派遣させたのだろうか? わしも、ここに国があるなんて知らなかったぞ」
ファビューは息を切らせながら歩いていた。乗合馬車すら乗り入れないような国なので、隣国(といっても、そこも大きくない国)から首都サンミュアッツの町まで歩いてきたからだ。
「ファビューさん大丈夫? 休みましょうか?」
アサミはそういったが、どうも一行で体力がないのは身体が一番大きなファビューのようだった。それはともかく、一行は公国政府庁舎に到着した。その政府庁舎といっても小さな木造三階建で、大きな看板がなければ気が付かないようなものだった。
窓口にファビューが要件を伝えたところ、奥から太った老婆が出てきた。その姿は掃除でもしているような粗末な格好だったので、何者なんかといぶかっていた。
「ようこそ来てくれました、みなさん。私がエリン・フォンヌ・インヴァラです。このインヴァラ公国政府の元首です」
「おばさん、いやあなたがインヴァラ公閣下ですか?」
あまりの事にファビューは慌てふためいていた。小さな国とはいえ、いくらなんでも国家元首があっさりと出てきたからだ。
「まあ、そう驚くのもしかたないわね。ここは国といってもちょっとした村みたいなものですし、代々世襲で元首を務めているといっても、実権などないですから、普段の仕事は政府庁舎のお掃除ぐらいですわ。それに、わたしお掃除好きですし」
そういってエリンばあさん、いやインヴァラ公はシワクチャの顔で微笑んでくれた。とりあえず彼女に元首の執務室に案内されたけど、そこは想像以上に狭いうえに古くてボロボロだった。しかも執事がいるかと思っていたら、一行に出す飲み物を閣下自ら用意していた。
「いえね、うちの国は簡単に言ってしまえば貧乏な国でね。この政府庁舎で最も給料をもらっていたいのが私なのよ」
「でも閣下、公爵なんですから財産を持っておられるのじゃないですか?」
「そんなの、ありませんわ! だから魔導士ギルドに派遣要請を出したのよ。このエヴァ・エリを探してもらいたいのよ。この執務室の下にあるダンジョンで迷子になってしまったのよ。それでついでに先代が残したヘソクリも探してもらいたいのよ。もし見つけてくれたらこの国の借金も返せるはずだから」
そういってインヴァラ公が見せたのは一枚の絵だった。そこには彼女とネコが描かれていた。それがエヴァ・エリというようだった。しかし、大きな違和感があった。
「閣下! このネコ大きすぎないかよ?」




