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172.下山を前に

 ギウムは結局、長々と話を地下にある温室で続けたが、これから起きるであろう事について聞かされたので、眠気が起きなかったほどだった。アサミとタクヤをめぐり”闇の魔導士”と”筆頭統領の夜食班”の水面下の抗争が既に始まっていることを聞いてしまったからだ。そんな事を知らないファビュー班一行はギウムの憔悴しきった顔に怒泥いていた。


 「神官様、どうされたのですか? なんだか体調がすぐれないようですが・・・」


 アサミが心遣いの言葉をかけたが、ギウムは鋭い眼差しを投げ掛けてしまった。この娘の存在がこの世界の行く末を左右すると思うと、おもわずしてしまったからだ。しかし、そんなことで悟られてはならないので、気を取り直して言った。


 「すまんのう、夜中に整理しないといけない書類があったんじゃよ・・・別に君等には関係ないさ。

 まあ、魔導士の研修でこんな山奥の神殿に若い娘さんが二人も来る事は初めてなんじゃないかと、思い出していたんだ」


 「そうですか、あたいも認めてくれたんだ、こんな密林の集落から来たサル女も。ところで神官様。インヴァラ公国ってどんなところですか? あたいって、集落から出るのも今回初めてだから想像できないのですよ」


 ルンファはそう質問してきた。この班のなかでそこに行った者がいなかったからだ。


 「そこはなあ、まあ大きな国ではないさ。盆地の中にある岩山の麓にインヴァラ公爵の居城サンミュアッツ城の周りにちょっとした町があるほかは田園風景が広がる綺麗なところさ。サンミュアッツの町で君たちが行くのはたぶんダンジョンだな。あそこは色々なものが巣食っているって有名なんだ」


 その言葉を聞いたアサミはそれって昔、友人の美和がはまっていたネットRPGゲームの話に出てきたものではないかと思い出した。たしか、いつも迷いこんでは出れなくなってしまうと嘆いたことを。まさか自分がそんなところに現実に行くことになるとは思ってもいなかった。


 「そのダンジョンってどんなところなんか? わしも他の諸邦の領主の依頼で商品を取りに入ったことはあるけど、インヴァラ公国は行ったことないから。あそこはそんなに豊かな国じゃないから、そんなに財宝なんてダンジョンにあるとは思えないし」


 ファビューは頭を書きながら言っていた。彼の極度に太い剛毛が揺れるのを見てタクヤはあることを思い出した。若い時に就職していたソフトウェア会社でゲームソフトの営業をしていた時に扱っていたソフトにそんな設定があったことを。


 そのゲームでダンジョンのなかのモンスターをいろいろと設定していたし、ソフトの営業用のパンフレットにファビューのような剛毛の巨大なモンスターが描かれていた。ただ・・・


 「あのゲームって悲劇的に売れなかったな。他社の人気作の模倣作なんて言われていたな。そういえばダンジョンで俺たちはモンスター退治でもするのかな、それとも財宝でも探せとでもいうのだろうかな」


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