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171.ティアム山の黒い影

 アサミの視線の先には黒い影がたしかにいた。ハバス市で憑依蛾による騒動の張本人だった。ずっとアサミたちを尾行していた。ただ、今回は山道なので尾行しているのがすぐばれるのでわざと大きく遅れて追っかけていたので、夜中になってようやく神殿のそばに到着したのだ。


 その黒い影は普段人通りの多いところでは珍しくない旅の行商人の格好をしているが、この山中では全身を黒ずくめに見えた。そうみえるのは周囲と同化する特殊な魔道布を使いこなしていたからだ。だからアサミは気配を感じても、それ以上はわからないのでただの思い過ごしだと思ったのだ。


 黒い影は神殿を見下ろす峰の上にいたが、ここは標高の高いのでネズミよりも大きい小動物しかおらず、住民もいないので誰にも気づかれることはなかった。その影はなにやら珠のようなものをかざして念じていた。すると珠の表面になんらかの文字が浮かんできた。それを読んだ黒い影はなにやら大きなため息をしていた。


 同じ頃。ギウムと魔導士ギルドとの会話は熱を帯びていた。アサミとタクヤのことについてであった。


 「あの二人が神に契約された関係だと? そのような前例などきいたことありませんよ。本当に御神託にあったのですか?」


 「ああ、そうだ。この私も直接全部を見たことはないが、大まかな内容はそういうことらしい。だから、あの二人については前例のない待遇なんだ。そうだろう、いくら登録だけでいい魔導士といえども、あの一行だけが今回、いきなり実戦を行うなんてあまり例がないだろう?」


 「実戦・・・ですか? ほかの二人には迷惑ではないではないですか?」


 「あの二人なら大丈夫。前もって潜在能力も高く相性がよさそうな者を選抜していたから、いいんだ」


 「はあ・・・そうですか? それにしても、あのアサミという娘の影の魔道力ですが、あれってどうして対策を取らないのですか? 封印するぐらい簡単でしょ!」


 「そのことだが、”筆頭統領の夜食班”の力ならたやすいが、彼らも実はアサミが暗黒面と決別しないことを望んでいる」


 「なぜ、”筆頭統領の夜食班”が動いているのですか? あれって秘密部隊でしょ」


 「そうだな、あのアサミの事だが時間が来れば、彼女に課せられた使命が明らかになるはずだ。しかし、今は彼女にもあのタクヤにも言ってはならないぞ。そうそう、その神殿の近くに”闇の魔導士”の工作員が見張っているから、これからいう事は地下に移動してもらいたい。そしたら重大な事を伝えるから」

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