017.アサミの救済案(4)
だいたい私がいわなかったら、そこのタクヤの事をほったらかしにするつもりだったのかと、疑いたくなるようなエンジェルの対応だった。私も騙されそうになっていたけど。本当は私一人だけを救済してタクヤは来世で優遇してあげて貸し借りなしにでもしようとしたのかなと思った。
「申し訳ございません。タクヤ様のことを忘れていました。そうですね、タクヤさまは生きていますので、魂だけを抜いてアサミ様の魂と一緒に異世界に転送する事も可能ですが」
「それじゃあ、この世界では私たち二人は死ぬという事でしょ? いくらホームレスだからと言ってもタクヤが可哀想よ!」
「まあ、ちょっとお待ちください。先輩エンジェルと相談して良い方法が無いかを確認しますから」そういうとエンジェルは目を瞑り何かの情報のやり取りをしているようだった。それにしても、このエンジェルはどうも下っ端のようだった。やはり現場に派遣するのは若いので経験でも積まそうというのかしらん。
「いくつか候補はありました。とりあえずアサミ様はタクヤ様と一緒に異世界に旅立っていただきます。アサミ様は今のネコの身体を基本に人間に限りなく近づくように再構成します。
まあ亡くなった二十二歳ぐらいがいいでしょう。またタクヤ様も今の四十三歳の肉体をアサミ様と年齢差がないように若返らせます」
エンジェルが言うようにタクヤを若返らせてもらうのは良いと思った。私がネコのときの記憶を辿るとタクヤの表情は中年の素敵な顔であったけど、もし今の年齢なら20才も歳の差があるので親子みたいになってうまくいかないかもしれないからだ。
「そのようにお願いします。ところで候補の世界ってどんなものがあるのですか?」
私がそういってみたが、とても後悔してしまった。またさっきのようなトンチンカンな候補ばかり並べられたからだ。いい加減にしてもらいたいと思ったけど、決まらなければ次の行動ができないのだから待つしかなかった。
提案されたのは、王侯貴族になるものや平凡な農民になるといった普通なら飛びつきそうなものが多かったが、まだ聞いていたら理想のものが飛び出すのかなと、何度も何度も提案してもらった。エンジェルには悪いけど、うちらも必死だから勘弁してね。
そうしていると、ようやく気になるものを提案してくれた。それはタクヤが主役になるような世界だった。私は宅やと一緒に人助けをしながら旅をするものだった。
もちろん、どこかの町で平和に暮らしていくのも悪くは無かったけど、折角生まれ変われるのだからタクヤと一生懸命生き抜いける世界じゃないのかなと感じた。だからエンジェルにその世界の事を詳しく聞くことにした、