159.長湯しすぎちゃった
アサミとルンファが入浴から帰ったのは、相当遅い時間だった。今回の魔導士研修生の女性用宿舎の管理人は呆れた声で言った。
「あんたたち、そんなに全身の毛を洗うのに時間かかるわけ? 溺れているんかと心配していたんじゃよ」
その管理人はミリといって、病弱そうな青い顔をしていた。彼女は入り口の番台みたいなところで横になりかかったような状態で座っていた。
「申し訳ございません、長湯しすぎちゃったです」
アサミはそういったが、本当はアサミはいろんな形態に変身していたから遅くなったのだ。それにしても普段はこれといった反応を示さないキュリットロスが協力してくれたほうが不思議だった。もしかするとウォーミングアップのつもりだったのかもしれないけど。
「まあ、ほどほどに入りなさいよ。あんたたちは溺れたりしないだろうけど、時間の管理はしときんさいよ、そいじゃあお休み」
そういってミリは番台の扉を閉めてしまった。どうも二人が戻ってくるのを待っていたのかもしれなかった。
二人は部屋に戻ったら、そのまま寝具の中に入り込んでしまった。そのときアサミの頭にシフォンヌの事が浮かんできていた。彼女はかつてキュリットロスの胴衣を自由自在に使いこなして、活躍したという事だったけど、どうして私にそんな大事なものを託したのだろうかと。いったいその根拠とはなんだったんだろうかと。
そのとき、ルンファの寝言がかすかに聞こえてきた。はっきりとは聞こえなかったけどどうも誰かに謝っているかのようだった。それで悪いと思いつつルンファの寝顔を見ると目から涙が流れていた。そのときかすかに聞こえてきたのは、どうも父親に謝っている言葉だった。どうも半ば家で同然に飛び出してきたようだった。
「そうかあ、父さんか、わたしの父さんには別れの挨拶はできなかったわね。本当は奈緒美みたいにお嫁に行きますとか言えたらよかったんだろうけど、わたし死んじゃったんだよね」
アサミもなんか切なくなっていた。




