015.アサミの救済案(2)
「エンジェルさん、もし選べるとしたらどんな救済案があるというのですか?」私はとりあえず聞いてみることにした。
ただ、定められているはずの運命が変わるのを防げなかったり、救済が必要となるぐらいまで放置するような方の案なので不安ではあったが。
「まず、もう一度永川亜佐美さんとしてやり直すのは不可能です。お亡くなりになってから年数がたっていますから」
「それもそうね、身体はバラバラになっていますし・・・関係ないかも知れないですが、最期の時に私の隣に座っていた美保子はどうなったんですか? 彼女は中学生からの友人だったのですが」
そう質問すると彼女はしばらく沈黙した後に語り始めた。
「美保子さんでしたら、あなたと一緒にお亡くなりになって、今はドイツ人少女として生活しているそうです。まあ、次の次ぐらいに生まれ変わったらお会いできるかもしれませんけど」
まあ、美保子は憧れのドイツに転生していると知って少しホットした。
「それもそうよね、日本人としてまた生まれ変われないの、あたし?」
「それは可能です。アサミ様は過去十回のうち日本人として四回転生していますから。でも、それにはいくつか超えないといけません。
まずネコとしての生涯を全うしなければいけません。ネコといった生物の場合、エンジェルは一切関与できないので、明日車に轢かれて死ぬかも知れませんし、どこかの親切な人に拾われ長生きするかもしれません。
また、そこのタクヤ様のネコとして生きていくのもよいでしょう。そうそうタクヤ様も救済しないといけないので、その場合なんかの職業と住居を得られるように采配いたします。
まあ、ネコとして生きている間は前世がアサミ様だったことは忘れていただきますが」
そういったが、あたしはそれは嫌だった。むかし、ネコを飼っていた事があって、今度生まれ変わったらネコがいいなあと思ったことがあったけど、今の境遇を思うとどうしようもないと思った。
それに折角人間のアサミの記憶が戻ったのにまた忘れるなんて、もう一度死ぬのと一緒ではないかと感じていた。
「それって。もう一度死ぬのと一緒ですよね。仮にネコとして生涯を終えたらどうなりますか」
「そうですねえ、とりあえず天国に一度帰っていただいて、然るべき時期に亡くなったタクヤ様の魂と一緒に転生していただきます。
まあ時代はどうなるかわかりませんし、どんな状況になるかわかりませんが、とりあえず彼と結ばれるようにいたします。
これはもう確約された事です。さすがに評議会も二度どころか三度も結ばれなかった魂を不憫に思っておりますので」
そんなことで同情されるぐらいなら、最初からきちんとしてほしかったのにと思わずにいられなかったが、あたしは話を続けた。
「ネコとしての生涯を閉じなくても、いまのアサミの記憶を持って転生することは可能ですか?」