147.葉皮紙の判定
魔導士の新人研修会の参加者全員にわたされた筒の中には葉皮紙が入っていた。その紙は樹木の葉や樹皮などを原料にした粗末な材質で、すぐに破れてしまいそうなほど薄かった。だが、この粗末な紙には呪詛の薬剤が塗り込められていた。それは触れた者の前世や現生の人生と将来に関する占い結果が文字として浮かぶものだった。
その文字は今までの人生に関しては本人も読むことができるが、前世や将来についての記述は聖職者にしか読めない文字が記憶されるというものだった。魔導士ギルドがそうするのは、ひとつは適性をみること、そして邪悪な者が魔導士になることを防ぐためであった。
すべての対象者から回収された葉皮紙は審議官が詰めかけた部屋に集められ、そこで割り振る作業が行われた。毎回、ここで戦闘要員や技術要員といった部門別に分けられることになっていた。アサミもタクヤも当然振るい分けされていた。
「なんじゃ、こりゃ? この世界に来る直前はホームレスでその前が職人? なのに戦闘能力がなぜ高い? 別に剣闘士や格闘技をしていたわけないのに? まてよ前世では・・・そうか、こういうことかよ」
これがタクヤの葉皮紙の判定を読んだ審議官の感想だった。しかし前世の事についての記述と将来の展望の欄を読んでなんとなく適性があるように判定していた。
「この娘は、跳躍力もあって弓の技術も高いけど、ひいていえば秘境のような村で成長したから社会性は、どうかな? まあ、気が合いそうなパーティーにでも同行させればプラスに働くかな」
これがルンファの判定であったが、まあ判定の結果はまあまあであった。次に審議官が見たのはアサミのものであったが、なぜか膨大な文字数で埋め尽くされており、ちょっとした騒ぎになった。そんな事態は起きたことがなかったからだ。
「どういうことなんですか、このアサミという娘は? 見たところただのネコ耳娘のようですが・・・」
「そんなはずはないだろう、とりあえず寄越せその紙を!」
そういって審議官の上司である監察官が取り上げて読むと彼の顔はこわばってしまった。それはアサミの前世の記述のうちある部分を読んで青ざめていたのだ。
「まさか、こんなことがあるのかよ! 破滅の女神なのか、それとも再生の女神なのか、このアサミという娘は・・・」
この一件は、すぐ筆頭統領に報告され裁可されることになったが、通常不適切で邪悪な魔導士の登録解除は監察官の権限で可能であったが、それは許されないとの指示書がアサミの申請書についていたからだ。もちろんアサミの登録解除は筆頭統領によって拒否されたが、その事を聞いた監察官は部下にむかってこういったという。
「彼女を魔導士の仲間に入れるのは、果たして吉なのか、凶なのか。わたしには判断できかねる。これから何が起きるというのだろうか?」




