139.魔道士としての最初の指令
アサミもタクヤも魔道士になる事が出来た。ただ、これはこの世界ではある程度の能力があれば誰でもなれるものだった。
例えるなら、地球の運転免許証みたいなものだった。ある程度の環境と機会さえあれば、誰でも取得できるものと一緒ということだ。自動車の運転は出来るし、通勤に使うことも出来る。しかし自動車の運転を職業にするには色んな条件もあるし、ましてやレーサーになれるのはほんの一部だ。
ちなみにアサミは運転免許を取得する前に一度死んでいるし、タクヤは事実上ペーパードライバーだったので、運転できるかすら怪しかった。
まあ、乱暴な例えであったが、この世界の魔道士は魔道士ギルドに登録を却下されない程度の実力さえあれば、すぐに認められるものだった。しかし、それだけで生活していくというのは難しいものだった。それに二人はこの世界の事を知識で把握していたつもりという状態で、なにか仕事につくことなど難しかった。
タクヤがホールの天井を剣圧で破壊した事は、瞬く間にハバス支部内部で広まっていた。そのためタクヤの顔を見ようと大勢の人々が押し寄せていた。
その頃、タクヤとアサミはホールの残骸の撤去作業の手伝いをしていた。このホールの梁には魔道力を跳ね返す結界があったのに、それすら破壊していた事に一様に驚いているようだった。
「こんなに人が来るなんて恥ずかしいわ! はやく着替えの服をもって着てほしいわ」
アサミは瓦礫を手押し車に入れながら照れていたが、まだ格好がビキニアーマーのままだったからだ。しかもビキニアーマーのパンツからネコの太い尻尾が目立つので、更に恥ずかしかった。変身前に着ていた服はビリビリに破れてしまったので、とりあえず支部の売店にサイズが合う服を用意してもらっている最中だった。
「アサミ、その格好の方が動きやすくないのか? それでもネコの時の方がよかったか?」
「エッチな事は言わないでよ! ネコだった時には・・・でも毛皮があったわよ、バカ!」
「それにしても、その胴衣って他にもいろんなものに変化するんだろ? シフォンヌさんにどうなるのか聞いてみたのかい?」
「うん、一応。中にはロボットみたいになったりするのもあるみたいよ」
そんなやり取りを周囲の者は仕事そっちのけで見ていたので、作業がなかなか前に向いて進まなかった。そうしたなか、支部の職員が入ってきて二人に支部長からの指令書が言い渡された。二人揃って本部で研修を受けるべしと。




