136.憑依蛾
ダガーを操っていたのは憑依蛾と呼ばれるはぐれ魔道士が使う偵察用道具だった。誰が発明したかは定かでないが、破綻戦争以前にあった生命操作技術によって誕生したという説が有力である。
憑依蛾はサイズも普通の蛾と同じなので、警戒されることも無く潜入して偵察をしたりするほか、時には人間や家畜に憑依して操り人形にする事が可能であった。もっとも、古くから使われている手なので、憑依を防ぐ方法も数多くあるし、侵入を許さない結界を張ることも可能であった。
それにもかかわらず、魔道士ギルド支部の中枢にいる役職つきの魔道士に憑依するなんておかしすぎることだった。一体どこの誰がダガーを操り人形にしたというのだろうか?
「ダガーは・・・まあ、あんまり説明して親切に我々の正体を教えてやる事もないが、こいつに憑依して驚異になりそうな魔道士がいないかを探っていたところさ。なのに、こいつ余計な事にお前ら二人の力量を測ろうとするもんだから、暴走しやがって! せっかく、数ヶ月も潜伏していたのに、つまらない疑問を持つからいけないんだよ。流しとけばよかったんだからな、「お前ら二人の事は」
ダガーを操り人形にしていたと思われる何者かの意思を表明しているようであった。そうしているうちに、ダガーの首筋が突如光った。
「おい、アサミさんでもタクヤさんでもいいから、あの憑依蛾をどうにかしてくれ!」
ヴァリラディスの叫びにいち早く反応したのがタクヤだった。逃げようとしていた憑依蛾を叩き落そうとして剣を振り回したところ、物凄い嵐のようなものが起き、憑依蛾を粉々にした。
ついでにホールを支えていた梁の一つが折れてしまい、ホールの天井が落下してしまった。その轟音でようやくギルドのハバス市支部の面々が駆けつけて来た。
「あんたら、遅すぎるんじゃよ! 一体なんで来なかったんだろうか?」
ヴァリラディスは呆れた声を出していたが、タクヤは自分がした事なのかと、腰を抜かしていた。




