013.戻ってきたわけね私
永川亜佐美の最期を思い出した私は涙を流していた。もちろん、今はネコの身体なのでエンジェルのイリス・アントラーファ・7855が仮想上にイメージとして構成したカリソメの人間体のアサミであったが。
「あなたは、あの事故で死ぬわけではなかったのです。本当は爆発は着陸後に起きて、あなたは大怪我するものの助かったはずなのです。他の乗客も大怪我する人はいても誰も死ぬことはなかったのです」エンジェルはそういったが、私は納得できなかった。
「エンジェルさん! 思ったのですけど、そんなに死ぬ人が間違うなんて頻繁に起きているのですか? わたしが死ぬのを誰が決めるのですか? そりゃ人間必ずいつかは死にますけど、どうして予定外に私死んじゃったのですか?」
そんなふうに私は詰め寄ったが、誰かが言った事を思いだした。人間を死なせるのも殺し合いをさせるのも神様の采配だと。
「正直に言います。あの時あなたが巻き込まれたテロ事件の数々ですが、この世界・・・我々エンジェルでも想定外だったフェアテクド582世界で発生したバグが原因だったんです。
そのバグで相当数の人々の運命が狂ってしまったのですが、それらはグロヴァル・コスモリアンの主催者の歪んだ魂によって引き起こされたミームが原因です。あなたの乗っていた飛行機もギリギリで運命を変更しようとしたのですが、シナリオの書き換えが間に合わなかったのです。
そのグロヴァル・コスモリアンの主催者のミームはこの世界にあってはならないので、強制的措置で今は別の空間へ追放しました」
神様いえエンジェルですら制御できなかった悪魔っているのか? 私は唖然としてしまった。でも、あの時死んでしまった私の意識がこうして甦ったのでうれしかった、永川亜佐美はネコのアサミになってしまったけど。
「エンジェルさん、わたし意識が甦っても身体は復活しないのですよね? もう死んで何年経っているのですか」
「実は十一年です。ネコに転生されたのが一年前ですから、天国でお休みされていたのは十年のはずですけど、あなたの魂が行方知れずでして・・・たぶん、非業の死だったので中々魂が癒されなかったのだと思います。それにリストに漏れていたようですし・・・」
「十一年!? それじゃあ、今から永川亜佐美が甦ったらいけないですよね。ゾンビですからそれじゃあ」
「そうです。あなたの元の身体はもう消滅していますし、あなたの元居た場所にはもう戻れないです、ご希望でしたら元の家族の近況ぐらいはお見せいたします」