128.カイムの剣とキュリットロスの胴衣
「ヴァリさん、アサミ、ありがとう。でも、この剣って俺が持ってもいいのもなんだろうか?」
タクヤはさっきのタヌキのような主人がいる骨董屋で購入した剣を腰に下げていた。腰には剣を下げるためのベルトもしていた。
「ヴァリさん、結構値切っておられましたけど、それでも高価な買い物ではなかったのかと心配ですが」
アサミはそういっていたが、彼女も購入した皮袋の中にあったポーチのようなものを腰に下げていた。それもキュリットロスの助言によるものだった。
「それにしてもカイムの剣ってどんな剣なんですか、結構錆付いているし、これじゃあイモも切れそうにないですが」
タクヤはそういって腰の剣を確かめていた。さっき、刀身を確認したら薄っすらと錆が浮いていた上に刃が付いていなかった。どっちかといえばただの古い金属棒のようだった。
「それはなあ、持つものの精神波によって力を発揮する一種の魔道力を実体化する武器なんじゃ。まあ、君のレベルではまだ使いこなせないだろうけど、そのうちかカイムのように使いこなせるようになるさ」
ヴァリラディスはそう言っていたが、すべては御神託の書にある事であった。アサミにはキュリットロスの胴衣と化粧袋、タクヤにはカイムの剣と道具箱・・・道具箱は北の遺跡で二人と合流する前に要塞馬車に搭載済みであったけど、あとでわたすつもりだった。
「これで、御神託による指示は終わった。後は市政府庁舎に連れて行けばワシの任務はほぼ終了だ。しかし、これほど御神託の書の指示が詳細なのは聞いたことは無いなあ。それに、なぜワシだったんだろうか?」
キュリットロスにカイム・・・・魔道士のネットワークが諸邦の支配者よりも力を持つようになった八百年前の時期に活躍した伝説の魔道士ペアだ。二人は新生時代と呼ばれる今の社会体制の初期に続発したトラブルを数多く解決したことで有名だった。
しかし二人の末路は悲劇だった、キュリットロスは強力な敵による魔道力によって身体は四散し魂だけを胴衣に閉じ込められ、カイムも剣による捨て身のアタックと引き換えに、身体が消滅したからだ。だからアサミとタクヤが持っているのは遺品だった。
「さあて、ふたりは伝説の魔道士ペアを越えることが出来るというのだろうか? でも再び悲劇だけはおきて欲しくないものだなあ」
そう思いながら二人を引率するヴァリラディスだった。それから間もなく壁のように細長い市政府庁舎の前の広場が一行の前に見えてきた。




