121.契約の指輪
目を覚ました二人は驚いた。昨夜まではなかった指輪をしていたからだ。
「アサミ、この指輪俺していたかな?」
「わたしもしているわ。ひょっとしてあなたもアルミさんから・・・」
「ひょっとすると、君も同じ夢を見ていたのかよ? ということは、あの夢って・・・」
二人とも、あの夢は本当に神の啓示ではないかと考えた。いままでだったら、神の存在など信じなかったタクヤも、わりあいクリスチャンとして信仰していたアサミも、そのような超絶した存在など懐疑的だったが、信じざるをえなかった。
その時、ヴァリラディスが二人の寝室の戸を叩く音がした。彼には昨夜なにが起きたかを知っていた。すべては御神託で予告されていたものだったからだ。もっとも御神託の内容のうち極一部しか知らされてはいなかったけど。
「おはようお二人さん、今日はこれからハバス市に向かうから。そこで君たちの住民登録をやるから。それと君たちは良いものを頂いたね。”契約の指輪”を」
「ヴァリさん、なんで知っているのよ? 指輪の事を、まさかヴァリさんが?」
「それはないよ。だって部屋の鍵はしまっているだろ? 神僕さんがされたのだよ。君らの元いた世界はしらないけど、この世界では神様の使いが舞い降りて来る事がときたまあるのさ。それよりも着替えて朝食を召し上がれ。かみさんがまっているよ」
そういわれ二人は寝巻きから着替え始めた。そういえば、此処に来てからあまり意識をしていなかったけど、こんなふうに着替えるのを違和感なく行っているのは不思議だった。いくらアサミがネコだった時から一緒に生活しているとはいえ、アサミは耳と尻尾がついているほかは普通の女の子だから。
「アサミ、俺の前でそんなふうに着替えるのって恥ずかしくないのか?」
「言われてみると、そうだね。やっぱ恥ずかしいと思うのが自然よね。父の前でもこんなふうに着替えていたことはないし」
この世界の下着は、身体にピッタリとしていないので、まるで浴衣のようだったが、それでもはたけるので素肌が透けて見えていた。だからアサミの女性らしさをタクヤにアピールするかのようだった。もし、下心があって衝動を抑えられない男なら、そのまま抱きついてしまうかもしれない姿だった。しかしタクヤは抑制的だった。
「君の姿はセクシーだよ。でも、俺ら二人は魔道力をある程度上げるまでは貞操を守らないといけないという事だな!」
「そういうことね。でもこれから私たちは”契約の指輪”に導かれるという事だね」




