112.さあ、出かけておいで
アサミはこの夢は回想夢ではないのだと思った。姿は高校生なのに今の実情に合わされているのだということらしかった。だから父が老けていたのだ。
「タクヤさん、アサミをお願いします。一度は命をなくして生まれ変わったのですから・・・今度は幸せになるんだぞ」
そういうと広之進は荷物を持って歩き出そうとしていた。その父を二人揃って引きとめようとしたが、再び振り返るとこういって姿が消えていった。
「おふたりさん。ここからは君たちの世界だ。わたしは、もう一緒にそこにいるわけにはいけない。たとえ苦難があったとしても切り開いてくれ。さあ、出かけておいで」
ふたりは呆然としていたが、この夢は一体なんだろうか不思議でならなかった。そう思っていると不思議な事が起きた。アサミの姿がタクヤと同じ年頃になっていたのだ。着ていたものも高校の制服から大学生が着ているような洋服になっていた。しかも駅前広場にいた人も車もいなくなって、まるで映画のセットのような雰囲気になっていた。
「アサミ、そういえば君と再会してからこんな風に会うのは初めてじゃないのかな? いままで身体が変化したせいかゆっくり話すこともできなかったし・・・それと夢だろうこれって。そしたら夢が醒めるまでデートしないか?」
「デート? いいね! ほら夢の中なら何でもできるはずだから」
アサミはそういったけど、本当にタクヤも同じ夢を見ているとは思ってもいなかったので、思い切り羽を伸ばす事にした。




