110.このあとは・・・
あの時の事を思い出した。たしかゲームセンターを出て、カラオケボックスにでもタクヤに連れて行ってもらいたいなあと、駅前広場を歩いていた時、いつもなら帰ってくるはずのな時間にもかかわらず、帰宅途中のアサミの父の永川広之進とばったり遭遇してしまったのだ。
あの時、本当はアサミが引っ張り出したのに、タクヤが庇ってくれて娘さんを連れ出したのは僕ですと謝罪してくれたこと。その後、広之進が専門の刑事訴訟法の話を持ち出してきて、未成年者を連れまわすと場合によっては犯罪になる場合もあるのだと説教したことを思い出していた。
しかし、分かっているはずなのに夢の中の二人は、あの時をリプレーするかのような行動を続けてしまった。アサミはタクヤの腕を引っ張るようにしてゲームセンターを出てしまった。そういえば、生前の永川亜佐美がこんなに男の人と積極的に付き合おうとしたのは、やっぱり最初で最後だったんだと思った。
「永川さん。そんなに急いでどこに行くつもりなんだ? 君はまだ高一じゃないの!」
タクヤはあの時と同じ台詞を言ったが、本当ならこの時が永遠に続けば良かったのにと思った。もし年齢差を超えてタクヤと付き合っていたら、若くしてアサミは死ぬことはなかったかもしれないし、タクヤもホームレスになることもなかったかもしれない。
だから、高校生だったこの時代が幸せ絶頂だったかもしれない。そういえば、アサミの母も人生で最も輝いているのは、もしかすると高校生の時かもしれないと話していたことを思い出した。
たしかに、そうかもしれなかった。高校生のとき、無限に可能性があるのだと少し信じていたのかもしれない。だからこそ、こうして大学生のタクヤを連れまわせることが出来たんだと。でも、この夢はただの回想なの、それとも・・・
そう夢で思っていたところ、ばったりと父と遭遇してしまった。父の永川広之進教授はいつも大量の書籍と書類を入れたキャリーバックを持っていたので、すぐに分かった。それは相手も一緒だった。
「アサミ! お前いったい何をしようとウロウロしているんじゃ! それに男と一緒とは。いくらなんでも・・・」
そういう父の顔を見ると違和感があった。その顔は当時ではなく白髪も増え顔にシワが深く刻み込まれていた。その顔は亜佐美の死後十五年経った現在の顔だった。




