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011.運命のフライト(5)

 後にアサミとなったわたしが、タクヤと冒険の旅に出かけているとき、なかなか馴染めなかったのは空を旅するときだった。大きな鳥の背中に乗ったり、ゴンドラで吊るされたり、巨大な飛行船都市に乗り込んだり・・・

 いずれも怖くてしかたない場合があった。そう、この後起きた惨劇の記憶、永川亜佐美としての最期の恐怖の体験が消えなかったからだ。


 私たちを乗せた飛行機はシベリアに向かうのをやめ、日本海上空を旋回し新潟空港を目指していた。特に機長やキャビンアテンダントからの説明が無かったが、機内Wi-Fiサービスを使ってネットニュースを閲覧した乗客が、いま世界で起きている情報をもたらしていた。


 「世界各国で旅客機が同時に多数爆破されたそうだ。先ほど日本海上空で北京からバンクーバーに向かっていた旅客機が消息を絶ったというが、さっきの閃光がそうじゃないのか?」

 「どうやら機体外壁に時限爆弾が取り付けられていたそうだ。手段はわからないが、さっき成田空港で発見されたそうだ。この飛行機も大丈夫か?」

 「それで、念のために世界各国で運行されている航空便は最寄の空港へ緊急着陸するようにと決められたそうだ。だからこの便も緊急着陸するんだろうよ」


 乗客たちの囁きあう情報が、いやでも私の耳に入ってきていた。その情報を聞いて美保子が青ざめていた。今回の旅行は美保子が手配したからだ。


 「ごめんよう亜佐美、こんなことになって。私が最初の予定の日時で申し込みが出来なくて」


 「いいよ、こんなトラブルがあったと後で話すことができるじゃないのよ。あなたの結婚式のスピーチでこんなことありましたというネタのひとつになって良いじゃないのよ」


 「でも、折角の旅行が・・・」そういって美保子は落ち込んでしまったので、話題を変えた。


 「ところで美保子。卒業式のあとの謝恩会も企画しているじゃないの? それにうちの父を招待するって言っていたけど本当? あんな気難しい人で大丈夫?」


 「あなた気難しいというけど、永川教授の授業は面白いと評判なのよ! まあ、あなた学部が違うから刑事訴訟法は取っていなかったけど・・・どうして法学部に入らなかったの? あなたの高校時代の成績だったら入れたのに」


 「なんといったらいいのかな、ほら親が子供に教える時、なんでこんな事が出来ないのよって怒る事なかったかな? 結構うちの父は勉強に厳しくって・・・それで私は父が勤めている大学に入学しても授業を受けなくても良いようにと教育学部に入ったのよ」


 「それって迫崎先生のように教育実習をしたかったからじゃないの? でも就職先は教育教材を作るところだけどねえ、あなたは」


 「あなただって法学部なのに就職先は・・・」と言い掛けた所で、私と美保子との会話は永遠に途切れることになってしまった。物凄い爆音と共に天井に巨大な穴が開いてしまったのだ。私たちが乗っていた飛行機にも爆破装置が外壁に取り付けられていたのだ。


 むかし航空事故を扱ったテレビ番組で、機内に持ち込まれた爆弾が炸裂して外壁に穴を開けた場合、そこから猛烈な勢いで与圧された空気が噴出し、針を刺された風船のようになってバラバラになるという事をいっていたことを思い出した。これって、墜落するというわけなの、この飛行機は?

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