109.プリクラ
眠っているところを覗かれていたアサミとタクヤは同じ夢の中にいた。それは遠いある夏の日の情景だった。アサミがタクヤと生前最初で最後のデートのような事をしたときだった。それはアサミの自宅近くの駅前商店街だった。
「先生、一緒にプリクラ撮りましょ!」そういってアサミはタクヤの手を無理矢理引っ張ってプリクラのボックスに入っていた。タクヤは満更でもないというか、アサミの勢いに負けていた。
しばらくしてプリントされてきたシールを見てアサミは驚いた。これは高校一年の時のわたしだと。プリクラのシールに写る自分の姿が三つ編みのお下げ髪をしていたからだ。着ていたのは懐かしい高校の夏の制服だった。青いスカートにブルーのラインが入った白いブラウス、そして赤いネクタイだった。当然ネコ耳ではなかった。
「さあ、次はどこに行きますか、付いてきてくださいね」そういってアサミはまたタクヤの腕を引っ張っていた。その頃の自分はまだ世間知らずで怖いもの知らず、無鉄砲までに行動していたことを思い出した。
でも、これって回想じゃないのかなと思った。だって夢だったら途中で変えられるはずだし思い切った行動をすることも出来るはずなのに、出来なかった。逐一、記憶にあるのと一緒だった。たしか、この時写したぷリクラはずっと財布に入れていて、空から墜ちて死んだ時も肌身外さず持っていたと。
「永川さん、そんなにはしゃがなくてもいいじゃない! 僕はネコを連れてきただけだから」タクヤは少し困った顔をしていた。無理もないことだった。七つも年下の女の子に主導権を取られていたからだ。
その時、アサミは次に起きた事を思い出した。たしかお父さんとばったり会ってしまったのだと。




