107.ヴァリラディス、出歯亀になる
アサミとタクヤについて「御神託」によれば特段の事情がない限り二人一緒にさせなさいとあったので、男女同室にしていた。だけど、若い男女を一緒にするなんてこの二人は夫婦なのか? そんなふうにヴァリラディスは思っていたけど、それは違うようだった。それは二人の態度から分かった。
だから、ヴァリラディスは時々二人の寝室を悪いと思いつつ覗き見しすることにした。はっきりいえば犯罪行為のようだが要塞馬車の中の最高権力者でもあるので、「安全確認」のためという大義名分があった。
この要塞馬車の各部屋にはヴァリラディスしか使えない設定の覗き穴が各部屋にあった。部屋の中の人が何か病気にでもなって出れなくなっていないかと確認するための穴が。
要塞馬車は、緊急時以外は夜間は移動してはいけないという規則があるので、夜になると必ず停止していたので、ゆっくりと休む事ができるような静かな場所で止まる事が多かった。
今晩は、後二日で目的地に到着するところまでの地点であったが、いつものように何もない大森林地帯だったので、周囲から聞こえるのは夜行性の動物の鳴き声だけだった。
そんななか、悪いと思いつつもヴァリラディスはそっと覗いていた。この時彼が想像していたのはよからぬ事をしているのではないかということだった。
魔道士の男女のペアの場合、愛を確かめ合っていることは、よくあることだったからだ。まあ、誰かを連れ込んで「英雄は色を好む」なんて悦に入っているよりかはマシだったが。
以前にも、どこかで知り合ったかはわからないが、女性たちを大勢連れてきて、いかがわしいパーティーを開いた不貞な魔道士も一人や二人ではなかったので、作戦中はやめなさいと注意した事もしばしばあった。
そんな酒池肉林の情景を考えながら見た二人の寝姿は、ヴァリラディスはある意味衝撃を受けた。二人の寝方があまりにも珍妙だったからだ。




