105.カミーナの疑問
カミーナがそう質問したのは今回の御神託が長文で意味が互いに矛盾している箇所もあったからだ。しかも曖昧で抽象的な表現も少なくなかった。ただ、アサミとタクヤの二人がこれから起きる事態に対処するのに不可欠なことだけがはっきりしていた。
「実はこの御神託、結構急いで出したそうだ。それにわかるだろう。場合によっては結果など変わってしまうものだと。対処に失敗すれば最後にあるように、ふたたび世界は良くて混乱の海に沈み、悪ければ永遠の沈黙、すなわち滅亡するというわけだ」
「そうなんですかウグスティン様。最後の後者の方は絶対嫌よ! いつか、この世界が終わるかもしれないけど、この御神託にあるように悪が栄え善が滅び、最後はシロアリに喰われた木造の家屋のように世界は崩れ去るというのは・・・」
「カミーナ、そんなことにならないように注意を喚起するためにこの御神託がもたらされたんだよ。それにあの二人・・・この世界に転生するために魔道士としての能力を与えているから、きっと対処してくれるはずさ」
そういってカミーナの肩にウグスティンは手をまわした。もし自分が神僕で彼女が筆頭統領でなければ、一緒にずっと暮らしたかった。もし、次に生まれ変われるなら次は平凡な人間になりたかった。それが降格措置だとしても・・・
「それにしても、なんであの二人なの? 派遣したヴァリラディスの報告によれば、アサミはそこそこ能力がありそうだし、誰にも仕えようとしなかったキュリットロスの胴衣が受け入れたというのに、もう一方のタクヤは平凡な男だということだ。
そのタクヤってアサミの付き人かなにかなのよ? 御神託にあるような活躍などしそうもないよ。それになぜ、あの二人なのよ!」
カミーナはウグスティンの腕に頬ずりをしながら甘えるような声で尋ねていた。




