104.神の謝罪
御神託には神の謝罪の言葉があった。破局戦争という苦難の道を神が与え、この世界をほぼ破滅させたので、この世界の人々は神という存在も絶対とは看做されていなかったが、そんな神であっても誤りを認めるというのだろうか?
「あなた、これってどんな事情があったのか教えてもらえないかしら?」
カミーナは乱れた髪を櫛でときながら、ウグスティンの背中にそっと身を寄せていた。
「君もいじわるだな。わが上司の失敗を言うのはやりにくいのだよ。でも、これから色々と動いてもらわないといけないから」
そういうと虚空から一冊の書を出現させてカミーナに見せてから説明をはじめた。
「君に頼んで要塞馬車で迎いに行ってもらった二人についてだ。君も気付いているだろう、この世界各地で異変が起きていることを」
「ええ、人間に滅多の事で捕獲されるはずのない狼龍獣が各地で何者かによって殺害されていたり、やたらと国家元首が交代したり・・・色んな事が起きているけど、まさか?」
「その、まさかだ! 実はいま君が見ている二人の暮らしていた世界で外道の限りをつくしてい悪の因子を、その世界を担当していた神僕が強制的に排除したのさ。その世界でも破局戦争がおきる危険があったから。でも。誤ってこの世界に解放してしまったんだ。
たぶん、これからおきる悪い出来事も、そいつらのせいだ!」
「それって、この世界にはあってはならないものを、誤って送り込んだというわけなの? こうしている間にも虎視眈々(こしたんたん)とこの世界を混乱の渦に巻き込もうというわけなの?」
「そうだ! ほら、神様は自ら悪人に制裁を与える事が出来るのは、あの世に行ったときだけで、この世界では手出し出来ないというわけだ。だから神様は謝罪はしていても今まで以上に働きなさいという事さ」
「それにしても、その理由も教えてください! この御神託の内容をもっと教えてくれませんか?」




