101.御神託の書
「筆頭統領。今回召喚された二人は御神託で示されていたという事ですが、どういった魔道士になるというのですか」
タラシーは化粧をしているカミーナに詰め寄っていた。彼女はガルアのどの諸邦よりも強大な権力を持つ魔道士ギルドの頂点に立っているが、その強大な権力の行使には様々な制約が課せられていた。だが誰にも制約されないものがあった。そのひとつが御神託による情報の独占だ。
「タラシーさん。それは私の専権事項だから詳細は言う事は出来ませんし、求められても公開する義務はありません。ただ、その二人の男女がこの世界の存亡にかかわる存在だという事です」
「なんですが、そりゃ? まさか災いをもたらすというのですか?」
「そうではありません。御神託によれば・・・おっと、しゃべってはならなかったわ。ただ危機が訪れない可能性もありますが、もしかすると数年のうちに世界がひっくり返るような事が起きるのかもしれないし、その公算が高いという事です。その時に役に立つかもしれないし、そうでもないかもしれないし・・・」
「本当に意味不明ですよそりゃ。筆頭統領ともあろうお方がおっしゃる事じゃないですよ、本当」
結局、何も教えそうにない彼女と話し合うことを諦めてタラシーは部屋から出て行った。それを確認した後にカミーナは重要書類入れに隠していた御神託の内容を書き記した羊皮紙を取り出した。
「アサミとタクヤか・・・ウグスティン・アルミレージェ様も二人の使命をなかなか教えてくれないんだから。この二人よりも先にやってきた不安定化要素とやがて対峙することになるとあるけど、一体どんな意味なんだろうか?」




