100.魔道士ギルド筆頭統領カミーナ・カンヴァーラ
アサミとタクヤが宿場町サジュルーにいるころ、目的地ジェムシームにある魔道士ギルド本部では、ちょっとした騒ぎになっていた。理由は二人の扱いであった。
「筆頭統領! なんで異世界から召喚された者の向かいに、なんで本部直属の要塞馬車を派遣したのですか? 予算の無駄使いじゃないですか!」
運営評議員のタラシーが魔道士ギルドのトップ、筆頭統領の執務室に直談判しにやってきた。その運営評議員の役割は予算執行の監視だったので当然の事だった。
その時の筆頭統領はカミーナ・カンヴァーラという女性だった。ただ彼女自身は魔道士ではなく北の大陸にある大国フォムラスの元国家元首であった。
「タラシーさん。その案件だが、筆頭統領直属の任務だ。予算なら統領府の工作会計から支出しているから、問題はない」
「しかし筆頭統領。いままで異世界からの召喚者といえば、このジェムシームといった大都市が大多数じゃないですか。なんで二人は辺鄙な地の果てに召喚されていたなんて・・・そんなに遠い所なら最寄に住む管轄魔道士にでも任せればいいではないですか?」
タラシーは怪訝そうな顔をしていた。筆頭統領に就任して以来、カミーナとは何度も顔を合わせてきたけど、今回のような事は初めてだったからだ。
「実は今回の件はこの世界の将来を左右しそうなんだ。もしかすると、この世界は終わることになるかもしれないわ。そうならないためにも二人には頑張ってもらわないといけない。そうだねえ、期待の新人というわけだよ」
「なんと仰々しい事をいわれるのですか? これって御神託にでもあったのですか?」
タラシーはなおも不思議な表情をしていたが、それに構わずカミーナは髪型を直しし、化粧をし始めた。




