010.運命のフライト(4)
私達を乗せた飛行機は三時間遅れで出発した。テロ予告はなかったが念入りに機内の点検をしていたためだ。待っているだけで疲れてしまったが、しかたないことだったけど。
「美保子、そんなに怖がらなくてもいいじゃないの? そんなに怖いのだったら国内でもよかったのじゃないの?」美保子はなぜか飛行機に乗るのが怖いと言い出したのだ。まあ、気持ちはよくわかるけど。
「あたしはねえ、国際線の飛行機に乗るのが初めてなのよ! こんなのに十時間も乗っているなんて考えたら恐ろしいわよ」
「そうなの? まあ私も最初はそうだったわ。父の出張のお供にアメリカに行った事があるけど。でも、日本とは違う風景が見れて良いわよ。だから飛行中でも外は見えるから」そういって私は窓際の席を美保子に譲った。すると外はどこまでも青い海が広がり、その上には雲が点在していた。そして遠くには小さな虫のように見える飛行機が見えていた。
その時、キャビンアテンダントの女性がカートを押してきて機内食を配り始めていた。この時機内には夕日が差し込んできていた。成田を出発して二時間、まだまだフライトは八時間あるはず、だった・・・この時、私たちが乗った飛行機は日本海上空を飛行していた。
同じごろ、操縦室には航空管制から緊迫の通信が入っていた。ただちに最寄の空港に緊急着陸せよというものだった。
「コ・パイ(副操縦士)、いったい航空管制はなぜ引き返せというのだ?」機長は緊迫した声で尋ねていた。
「なんでも、世界各地で航空機が爆破されているそうです。どうも航空機の外壁に取り付けられているそうです。さきほど成田を離陸したばかりの便が爆破されたそうです。その機は緊急着陸に成功したそうですが・・・まってください。目の前で閃光が!」
目の前でどこの航空会社かわからないが旅客機が爆発し急降下していく恐ろしい光景が見えた。
「こちらオーシャニアン653、いま目の前でどこかのエアラインの機体が墜落していった! 当機も最寄の新潟空港に緊急着陸する」あわただしくコ・パイが航空管制に連絡を入れ、ただちに緊急着陸のため旋回を始めた。
「乗客の皆様にお知らせいたします。当機はただいまより新潟空港へ緊急着陸いたします。お急ぎのところ申し訳ございませんが・・・」そのアナウンスに対し乗客からどよめきが起きた。
「父さんが空港で待っているのに待ちぼうけになって可哀想よ!」そうキャビンアテンダントに言ったのは、先ほど待合室で亜佐美らと一緒にいた明日香だった。
「大丈夫ですよ。フランクフルトに連絡してお父様に遅くなると連絡しておきますよ。ちょっとお父様のところに行くのが遅くなって、申し訳ございません」
明日香はそう優しく対応されていた。この時、亜佐美がこれから起きる地獄のような惨劇を想像していなかった。