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君はいつも唐突に。

作者: 栗飯

短編2作目になります!

恋愛ものは初めてです。

アドバイスや感想等、ぜひともお気軽にお願いします。

「あのねえ、私って超能力ってやつが使えるのよ。」


数年ぶりくらいに、この女に呼ばれたから、本から目線を上げたら、俺の顔をずいっと覗きこんで変な事を言ってきやがった。


今時の女子高生ってやつは、もっとこう、着飾る割には現実的なのかと思っていたが、こいつは巷で噂の電波系とかいうやつだろうか。


「・・・・はあ、それで?」

「あら、アンタは驚きの一つもないのね。つまらない人。だから、彼女の一人もできないのよ。」


全く心外なもんだが、反論はできない。なんせ、俺は生まれてこのかた、彼女なんかできたことない。学校で喋れる、女生徒もこの女を含めた数人だけだ。


「俺をからかうのは結構だが、お前は今日、自習に来たんじゃないのか?」


「私、アンタをからかってなんかないわ。本当に使えるのよ、超能力。しかも凄く強力なの。」


少々不機嫌さを含んだ声を発しながら、大きい瞳をこちらに向けた。その目は真剣そのものだ。


「じゃあ、使って見せてくれよ。その、超能力とやらをさ。」


「・・・・無理よ。見せられないの。」


はあ?ここまで言っといて見せられないっていうのは、やっぱり俺を、からかっていたのか。

俺の心情が読み取れたのか、不機嫌さを更に体中から放ちながら、イライラした声で言う。


「超能力って言ったっていろいろあるでしょう?その全てが見せれるようなものではないじゃない。」


「じゃあ・・・・なんだ?つまりお前は目に見えないタイプの超能力とやらが使えるってことかよ。」


「そうよ。悪い?」


なんだか面倒くさいな。俺ははっきりいって、この女が超能力を使えようが使えまいがどっちでもいい。


「別に悪くないんじゃないか。もうこの話は終わりにしよう。」

俺は再び本に目線を落とす。できれば関わりたくない。それでも活字が並ぶ本からは、女のじんわりとした影が消えない。


「ねえ、なんで信じてくれないの?私は正直者だから、嘘なんかはつかないわ。本当なのよ。」


「わかった信じる、信じるよ。だからもう帰るよ。」


先程まで眩しいくらいの夕日が差し込んできた窓は、今じゃすっかり、薄暗い空に浮かぶ街頭の光に変わった。


「そう、じゃあ私も帰るわ。」

そう言ってこの女は、机に広げていた数冊程度の本を鞄に入れて、身支度を進めている。


俺がいつもの通り、ドアから出ようとすると、止められた。


「ねえ、今日は一緒に帰りましょうよ。」


思わず目を見開いた。

どうしたんだ、この女は今日。こんなに話したのは中学以来で、高校に上がってからは、お互い事務的な会話をした記憶しかない。


「何をぼんやりしているの。帰るわよ。」




外はもう、どっぷりと暗かった。

俺が家路につくと、すたすたとこの女もついてきた。お互いに話すことなんてないので、無言を貫きとおした。


「じゃあ、私こっちだから。」


と、俺の家路とは逆の方向を指した。

しかし、この女は俯いたまま、まったく足を動かそうとしない。この、よくわからない状況に俺は戸惑っていた。何をするべきか、いや、何もしないべきなのか。

そうして12月の冬空のもと、5分程が過ぎた。すると、女が顔を俯かせたまま言った。

「ねえ、さっき私は超能力が使えるって言ったじゃない?」


なんだ、またその話か。本当に何が言いたいのかわからない。


「またその話なのか?その話はさっき終わっただろう。」

「お願い、聞いて。これだけは聞いて。私のね、超能力はね・・・・」


やっと女が顔を上げた。僕はそれを見て、更に戸惑った。

学校でも人気の高い顔を歪めて、目からは大粒の涙を零している。


「未来予知なのよ。」


俺は何も言えなかった。ただ呆然としていた。何に対し呆然としていたのかはよくわからなかった。


「じゃあね。またね。」


そう言って、女が走り去った後も、俺は、星が美しい真冬の街灯の下に立ち尽くした。



「立花 美琴さんが、亡くなりました。」


教室に入ってきた担任が、クラス中にそう告げた。泣き出す生徒、それを慰める生徒。反応はそれぞれだ。


今日は、学校が午前で終わった。午前は、あの女のための全校集会だった。

この高校はあまり大きくないから、皆があの女を知っていたし、あの女の為に泣いた。

俺以外は。


俺は今、屋上にいる。

俺は真面目な生徒だった。それがだ、俺は、校則を破ってここにいる。


なんだか面倒くさかった。何が面倒だとかは、まったくわからなかったけれど。


たぶん、たぶんだけれど・・・・昨日、あの女はわかってた。今日こうなる事を。


そういや、いつから俺は“あの女”なんて呼び方をするようになったんだろうな。


中学の頃は、仲良かったんだけどな。


そうだ、中学生の頃、俺とあの女はいつも一緒だった。学校でも一緒、放課後も一緒。

ただ、いつからかあの女は俺を遠ざける様になった。

話しかけようとすると、クラスの女子のもとへ走っていき、帰りも一人で帰るようになった。

俺は理由もわからず、ただ、家に帰っては泣いた。


そんなのが、一月程過ぎた時、あの頃の俺は我慢ができなくなって、とうとうあの女を、放課後の誰もいない教室で問い詰めたんだ。


「なんで俺を避けるの?」

「避けてなんかないよ。」

「避けてるよ。」

その時、あの女はグッと拳を握り、息を吸うと目に涙を貯め大声で言った。


「嫌いになったの!」

「もう大嫌いなの!だから一緒にいたくない!そばに近寄るのやめて欲しいの!」


言葉の意味は理解ができた。

ただ、頭がついていかない。

頭が鈍器で殴られたように痛んだ。


俺は思考を停止させたまま、ただ夕焼けに照らされる床を見ていた。


それからだ、俺は心の中で“あの女”と呼び、声に出して名前を呼ばないように、できるだけ関わらないようにしていた。





そうか、そうだったのか。

今になって分かった事がある。


あの頃の俺は、あの女を好きだったのか。

だから、あの女なんて呼んで嫌いになろうとしたんだ。

まったく、中学生なんてやつは簡単な思考回路をしている。


あの女は、やはり俺の事が嫌いだったのだろうか。

嫌いだったのかね、やっぱり。




まてよ、そうなるとおかしい。


じゃあなんで、昨日あの女は俺に予知能力を伝えようとした?


なんで、死ぬってわかってる日に自習なんてする?


最後に会うのが、なんで俺なんだ?


頭の中をグルグルと、薄暗い疑問の羅列が回っている。


あいつが、本当に言いたかったのは、超能力が使えるということだけじゃなくて・・・・




「・・・・あの時、俺を突き放した理由か?」



突き放した理由。あの時俺は、言われた言葉をそのまま受け取り、それが全てだと思った。

そして、嫌いになろうとしたんだ。


もし、中学生のあの時くらいから、急に予知能力が使える様になったとしたら?


それで、仮にだけれど自分が死ぬ日を知ってしまったら?


そういえば昨日、強力な超能力って言ってたな。

もしかしたらそれは、数分後の事を知れるとかそんなレベルではなくて、数年とかそんな規模の話だったんじゃないか?


そして、中学の時の俺はあの女が好きだった。

俺が好意を抱いてたことくらい、わかってたんだろう。

そして、俺が告白する未来なんかも予知して。



それも、わかってたのか?


わかっててその前に俺に会いに来たのか?


その意味くらい・・・・馬鹿な俺でもわかる。


美琴は・・・・俺のこと、嫌いだったんじゃなかったんだな。


俺の為に突き放してくれたのに、俺は嫌いになろうとしたんだ。


今まで言ったのは俺の独りよがりの仮説だ。

もしかしたら、真実はまったく違うものかもしれない。


紅い夕陽が俺を染めて、いやに目の前をキラキラと輝かせた。


「じゃあね。またね。」


昨日の夜の、振り向きざまに見せた、くしゃりと泣きながら笑う美琴のあの表情が、俺はこの先、死ぬまで忘れられない。









読んでいただき本当にありがとうございます!

恋愛ものの難しさを知ることができました。

ぜひ、いい作品を作れる様になる為に、アドバイスや感謝をよろしくお願いします!

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