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ゼロを織るもの  作者: 蒼井湖美智
第一章 神様
4/5

踏み出した一歩

 世界を救ってくれと頼まれて、良いと言うか嫌だだと言うか。もちろん普段の俺ならば後者を選ぶに決まっている。そんなことが俺にやり遂げることができるわけがないのだから――


「なあ、お前ってさ一体何者なわけ?」

「私か?私は・・・いわゆる魔法使いってところかな」

「ふーん、そうなんだあ。・・・・・・って、魔法使い!?」

「うん」

 彼女は『何を驚いている?』というような顔で返事をした。

 あのおんぼろマンションからの帰り道、俺らはお互いのこと、世界の救い方など父さんのことには一切ふれず、話をしていた。お互い気を使っていたのだろう。

「・・・・・・ここ、現実だぞ。夢じゃないんだから、目を覚ませ」

「は?とっくに覚めてるけど」

「いやいや、魔法使いって、ファンタジーじゃないんだから」

「私は本当のことしか言ってないけど?」

 彼女は真顔でそう言った。

 ほ・・・本気か?何だ、この信じてくれとでも言うようなその瞳は。俺にそんな目で訴えてもだ・・・だめだからな。信じないからな。

「君だってその力は持っているさ」

「分かった。信じる」

 彼女は笑顔でそう言った。

 俺はうなだれた。

 この少女の笑顔には勝てない。負けた。そのとても綺麗な瞳にも俺は弱いみたいだ。

「で、俺はこれから何をすれば良いわけ?」

「うん、そうだな・・・。忠政様から聞いた感じだと、君が何を使うか決めるってところかな」

「何を使う?何だそれ。そんなことから始めんのか」

「そんなこととは何だ。とても大事なことなんだぞ。決めたものによって未来が変わると言っても過言ではない」

 彼女はそう、少し怒ったように言った。

 未来が変わるって、ちょっと言い過ぎなんじゃ。

 と、ちょっと冷たい視線を夏樹におくると彼女は自慢気に言った。

「ちなみに私はどの魔法使いよりも強い。選んだものが良かったんだな」

 ムフンッ。

 とてもじゃないが『良かったな』と言えるような様子ではない。

 俺は一歩退いたように彼女を見ると、ようやく彼女はこちらを見た。

「何だその目は」

「いや、別に」

 彼女は睨みつけてきた。

 俺は恐ろしくなって、目を背けた。

 なかなか鋭い目をお持ちだ。だが、もうそろそろ止めてくれないかな。怖いから。

「・・・じゃあ、お前は何がしたいと思っている」

「な、何があるんだ?」

 夏樹は俺を睨みつけたまま、不機嫌そうにそう言った。

 感情豊かな子でなによりだ。

「私と同じ魔法か、剣か、銃か、錬金術か、人形使いか、妖精使いってところかな」

「結構多いんだな」

「ああ、世の中には2つのものを使い分ける変な奴もいる」

 変な奴って・・・。

 でも、すげえな。2つも使い分けるのか。俺にも、できたらかっこいいだろうな。

 そう考えていたら、どうやらにやけてしまっていたようだ。

「なんだ君は。気持ち悪い。ニヤニヤするんじゃない」

「え?ああ、ごめん。俺にやけていたか?」

「気持ち悪いぐらいに、とっても」

「ごめんごめん。俺は・・・剣使いにでもしようかな」

「そうか、それは丁度良かった」

 彼女は微笑んだ。

「丁度良かった?」

「うん、ついて来い」

 そう言って、彼女は俺の前を歩き出した。

 何を考えているんだ?

 まだ、会って間もない彼女に俺は困惑させられていた。

 この少女には、少し近づき難い雰囲気がある。それは、何を考えているかが見えないからなのだろう。


 まだまだ蒸し暑い夕暮れ時に、俺は夕日に問うのだった。


『彼女は、何を隠しているのですか?』

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