第50話
「帰ったぞ」
「ただいまー」
「お帰り」
敵をかなり減らして戻るついでに薬草や木の実、山菜など採ってレイたちが見つけた湖に来た。
「へー、綺麗な場所だね」
「そうでしょう。ゼンの珍しい成果ですわ」
「珍しい成果ってひどくない!」
「戦闘では役立つが確かに珍しい」
「リョウ、フォローしているのか?」
ここは森となんか空気が違う。でも、聖獣がいた痕跡もないようだし、ただ人が見つけられないだけかな。
「戻ってきたとこわるいがクレハこいつ料理してくんね?俺、腹へった」
「おお、こいつの肉美味しいんだよね」
「食ったことあるのか?」
「うん」
ゼンたちはないのか。私はこのバーモを修業時代や魔王城で食べていた。
バーモとはでかい鳥だが、肉は牛肉と似ているのだ。
私はキメラの実験からできたのではないかと考えている。
面倒くさいキメラでもこういうのはOK
「やっぱ、分厚いステーキでしょ」
「おお、ステーキか!」
「鉄板やフライパンはあるのですか?」
「バッチリ」
血抜きがされていたから肉をカットし、塩コショウ、棒で叩いたりと下準備をして、
「紅葉、フランベできたのか」
「できるようになったの」
はい、キャンプだけどフランベします。
フライパンにブランデーを投入すると、炎が上がりします。
「おおー」
「あれ?おかしくありません。なぜにブランデーを持っていますの?」
「そんなことどうでもいいじゃんか」
「エレラ、気にしたらだめだ」
「ピンとくるコニャックがなかったから」
「そういう問題ではありません!」
「コニャックもブランデーだが」
「レイは突っ込むところが違います!」
「しかも、それは……」
あはは、ばれちゃった。このブランデーはサフェート兄さんの楽しみしていたお酒の一つだ。来る前に何本か拝借してきたのだ。
「怒られてもしらないぞ」
「レイよ、私を誰だと思っている。証拠は完璧に隠蔽してある」
「紅葉がどんどん黒くなっていく」
「早く食おうぜ」
「そうですわ。料理が冷めてしまいます」
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薬草と山菜のサラダ、ステーキ、持ってきたパン、鶏ガラの山菜とキノコスープ、採って来た木の実
「キャンプなのに豪華ですわね」
「そんなの気にしない、気にしない」
「うまっ」
「うまい。また腕をあげたな。紅葉」
「当たり前」
「美味しい」
「うまい。さすがだな」
うん。今日も美味しい。
「そうだ。クレハ、討伐はもう少し静かにやってくれ」
「今、それ言うか?」
「まったくです」
「んー」
「なぜに悩む!」
「討伐している紅葉は楽しそうだった」
「相手を歪む顔にするのって楽しくない?」
「真顔で言うか!」
え?楽しいじゃん!これはSの血が疼くんだ。
「トラップもちゃっかり作っているし……」
「因みにどうなものを……」
「魔方陣型でかかったら自分が一番苦手なものに特大サイズで追いかけられるとか、心のキズを広げたり、ホモさんの幻に追いかけられるとか」
「なかなか痛いですわ」
「男にとっては最後のが」
「ああ、恐怖体験しかない」
精神攻撃が一番!だし、個人的に好きだな。
遼は引っ掛かった人に合掌してる。
「それにこのキャンプは明日で終わるよ」
「もうですのね。そんなに倒して来たのですか」
「それもあるし、トラップにかかったのもいる」
「悲鳴がそこかしこに聞こえたな」
「クラーケンがいたらそこ行きの転移トラップが作れたのに」
「まだ言ってるのか」
「恐ろしい!」
「心残りだ!」
このトラップ作ってみたかったんだ。
クラーケンの繁殖期はぬるぬる媚薬だすし、通常でも普通に強いからね。
「相手が可哀想に思えてきました」
「ああ」
「聞いたこと忘れよう」
「見張りの順番だか……」
「それなら俺、役立つ魔道具持ってきたんだ」
ゼンは鞄からお香とベルを取り出した。
「こそは?」
「魔物避けの香と警戒ベルだ」
「なら、爆睡しても大丈夫ね」
「なら、自由時間にして個人で消灯にするか」
「だな」
こうしてキャンプ1日は終了した。
明日は朝日の王道イベントがあるだろえから観戦しよう。
◇◆◇◆
「……うまそうだな」
「うむ」
先生たちは羨ましそうにクレハたちの晩御飯を監視用モニターで見ていた。
◆◇◆◇
紅葉たちが夕食を食べている頃
「ナーシャ、私のお気に入りのブランデーを知らないか?」
「いえ」
「飲もうと思って取りに行ったら何本かなくなっていた」
紅葉が拝借した酒に気づいた魔王だった。




