第20話
出発の日
「寂しくなるな」
「そうですね」
「レイ様に迷惑かけたら許しませんわ。クレハ」
「二人とも身体に気を付けるのだぞ」
「レイ貴方にこれを」
ナーシャさんがレイに小さな箱をわたした。
「それは強制ピアスだ」
箱を開けて見ると金色のリングのピアスが入っていた。
「おまえの魔力は人間にしては多すぎる。あちらに着いたらそれをつけろ。詳しい説明はクレハから聞け」
「はい」
「レイににあいそうだな」
「サフェート兄さん、人間との戦争が起こったら呼んでね」
「おまえは心配しなくていいと言っているだろう」
「私も魔族のはしくれだよ」
「はー」
「いい、絶対だよ。無理やりでも来るからね」
「わかった」
「じゃあ、いってきます」
「いってきます」
「「「「いってらっしゃい」」」」
私たちは転移した。
「海だー」
私たちが転移した場所は海。
「ここから飛んで行く」
魔族領と人間領は海で別れている。
吸血鬼は魔力は使わずに飛べるんだ。
「はーい、フェン、おいで」
「ああ」
フェンを抱いて幻術をかける、レイにも。
ノアールはもとから肩に乗っている。
幻術をかけるのは魔族領から来たと知られないため。
「ねぇ、レイ」
「なんだ」
「レイの転移で行けないの?」
「俺は人間領に行ったことないから無理だ」
「そうか。あ! いいこと思いついた!」
「なんだ」
「嫌な予感がする」
「ウィング」
「うわっ!」
「ヤッホーイ」
「これなら早く着くな」
◇◆◇◆
何時間か飛んでいるとフェンが何かに気づいた。
「クレハ、すまない。止めてくれ」
「どうしたの?フェン」
「どうした」
「ヨルが近くにいる」
「ヨルってヨルムンガンド?」
「そうだ」
「襲って来ないか」
「大丈夫じゃない。人質じゃなくて狼質がいるから」
「ひどいぞ、クレハ」
「挑発するようなこと言う」
ザザザザ バシャーン
「ん?」
「ギャァーーー」
「お出ましだ」
「でかっ!」
ヨルムンガンドが海面から出てきた。
「兄さんを離せー」
「え?」
「なんか誤解してない?」
「おまえのせいだろ!」
「ヨル、止まれ」
「大きさ的に無理だろ」
「だよねー」
ヨルムンガンドは毒を吐いて攻撃してきた。
「うわっ」
「危ないな」
「ヨル!」
「フリーズ」
私は海面を凍らせたてフェンを投げた。
フェンはもとの大きさに戻って着地した。
「ヨル」
「ギャーー」
「くっ、仕方ない。許せよ、ヨル」
フェンはヨルに突進した。
「弟への愛のムチだ」
「バカなことを言わない」
「なんで止めるの兄さん!」
「おまえは誤解している」
「誤解?」
「そうだ。クレハは俺の主だ」
「でも、狼質って」
「やっぱおまえが原因か」
「冗談じゃん。海の中で聞こえないと思ったもん」
「ごめんなさい」
「いや、こっちこそ悪かったな」
兄思いの弟だな。
「フェン、いい弟を持ったね」
「ああ、優しい弟だ」
本当にいい弟を持ったよ。
「ヨルムンガンドはこれからどうすんだ?」
「どうするって」
レイがヨルムンガンドにこれからどうするか聞いた。
「俺たちはこれから人間領に行く。おまえはどうする?」
「ついていっていいの?」
「いいぞ」
「よっ、レイ格好いー」
「うるさい!」
「どうやって連れてくんだ」
問題点はそこだ
「レイと使い魔契約すれば」
これが得策でしょ。
「は?」
「そうだな」
「お兄さん」
ヨルムンガンドがキラキラした目でレイを見る。
「うっ」
「ほら、レイ」
「レイ、頼む」
「わかった」
「ありがとう、お兄さん。」
方法は魔力の交換。
紋章は浮かんだらしい。
服で見えないのかな?
「俺はレイ。吸血鬼だ。これからよろしく」
「私はクレハ。レイと同じ吸血鬼だよ。よろしくね」
「僕はヨルムンガンド。よろしく」
こうして毒・土・水属性の魔法が使えるフェンリルの弟ヨルムンガンドがレイの使い魔となって仲間になった。




