第15話
「レイ、執務室がどこにあるか知ってる?」
「知ってるが…」
「そうなの!」
「ああ、何度か来ているからな」
「なのに顔を忘れられてるのね」
「ああ、今回は忘れられていて幸いだ」
レイは純血の吸血鬼だから何かと来るんだろう。
「待ちなさい」
後ろから女性の高い声が響いた。
私たちは振り向くと金髪藍眼のナイスバディーの胸元が大きく開いた真っ赤な派手なドレスを着たお姉さんがいた。
「私は四天王の一人……ん? 貴方は!」
彼女は名乗っている途中レイを見て驚いた。
「貴方はレイ・モア・フェイト様!」
「やっぱりお知り合い?」
「そうだ。やつは薔薇の魔女 ローズ」
「何でレイ様が侵入者と一緒に」
「常識はあるのだか」
「レイ様! その女に操られているのですね!」
「我儘で」
「私がすぐにお助けしますね」
「人の話を聞かない」
「貴方、すぐにレイ様を解放しなさい」
「うるさい女だ」
「フレイムダンス」
レイはローズを無視して彼女について説明してくれた。
私たちは無詠唱でシールドを張り炎の攻撃を防いだ。
「要するに面倒くさい女の人ということね」
「そうだ」
彼女はレイにご執心のようだしね。
「ほんじゃこっちも一発 アイスキャノン」
「ふん、そんな攻撃」
「一発分じゃないよ」
「な!」
一発撃ったけど何本分かのアイスキャノンが撃たれた状態になった。
「きゃっ」
避けきなかったアイスキャノンが彼女を襲う。
「そんで、アイシクルレイン」
「ダークシールド」
私の魔法が誰かの[ダークシールド]によって防がれた。
「魔王様」
「あ!」
「げっ!」
私の[アイシクルレイン]を防いだのはサフェート兄さんだった。
「ふふ、貴方の人生もここで終わりよ。魔王様がいらっしゃったもの」
「黙れローズ」
「も申し訳ありません」
勝ったきになっているローズをサフェート兄さんがとがめる。
「おひさー、サフェート兄さん遊びに来たよ」
「この無礼者」
「いい、ナーシャ」
「ですか」
サフェート兄さんの隣にいる魔族が私の態度に怒ったようだがサフェート兄さんに止められた。
「久しぶりだなクレハ」
「本当に知り合いだったのか」
レイがサフェート兄さんの態度に驚いていた。
私が言ったこと信じてなかったな。
「レイが一緒にいるとは意外だ」
「そうなの」
「ああ、唯一の純血種の吸血鬼だからな」
「唯一!」
「なぜそこで驚く? お前も吸血鬼だろ」
「クレハはそういう常時にうといんだよ」
「エデル兄たちから聞いてないもん」
純血種がレイ一人だけだったなんて……。
「それにクレハはお前の気持ちをある意味理解できるだろう」
「どういうことですか」
「?」
「クレハも唯一種ということだ」
「まさか純血種!」
「いや、始祖だ。クレハが来たときにお前に紹介しようと思ってたんだがもう出会ってたとは思わなかった」
「……始祖……」
「世界樹の森でレイの足につまずいて出会ったの」
「そうか」
レイは私が始祖という事実にフリーズした。
「待ってください。始祖は滅んだはず、なのになぜ」
「エデル様たちがな」
「……」
ナーシャという魔族は絶句した。
あれ? なんで? 神様だからありでしょ。
「吸血鬼の王はクレハということですか?」
復活したレイがサフェート兄さんに聞いてきた。
てか、レイって吸血鬼の王だったの!
「いや、今までどおりレイがやれ」
「ですが」
「クレハは王なんてやらないぞ」
「当たり前じゃん。そんな面倒くさいことやるか。ねえ、サフェート兄さん今さらだけどそこの人誰? アキガって人どうなった?」
「アキガはすでに治療ずみだ」
「そう」
「こいつはナーシャ。魔族の国マディーダの宰相で四天王の一人だ。ナーシャ、彼女はクレハ、さっき言ったように始祖の吸血鬼だ」
「ナーシャ・ミスト 二つ名は幻影と申します」
「クレハ・オエ・サクラウッドです」
「クレハはこれからどうするつもりだ?」
「何日か魔族領に滞在するつもり」
「そうか、部屋を用意させよう。レイの分もな」
「すぐに準備させます」
ナーシャさんはそう言ってどこかに行った。
こうして魔族領での生活か始まった。




