プロローグ
雲一つない真っ青な空の下、一人の男子学生が歩いていた。
彼の名前は染白 無式。
ごく普通の高校に通う、17歳の少年だ。
ある日、彼はいつものように通学していた。
「今日の数学、小テストがあるんだよぁ」
そんな事を呟きながら学校に向かって歩いていた。
「おはよー!」
すると後ろから元気な挨拶が聞こえた。
無式は声がした方を振り返ると、挨拶を返した。
「おはよ、奏」
そこには学生服姿の一人の女の子がいた。
彼女は無式に近づくと話をはじめた。
「無式くんは今日の小テストの勉強はしたの?」
「いや、全然やってない」
「やっぱり...」
彼女の名前は洲崎 奏。
無式の隣に住んでいる幼馴染で、同じ学校に通っている。
「無式くんはいつも勉強しないよね」
奏はため息混じりに呟くと、カバンから弁当箱を取り出した。
「はい、今日のお弁当」
「いつも悪いな、ありがと」
「気にしなくていいよ、おばさんが海外出張から帰ってくるまでお弁当作るって言ったの私だしね。
おばさん、忙しそうだね」
「その辺の事はあまり知らないけどな」
奏と話をしている最中、無式はこちらに向けられる視線に気がついた。
「?」
その視線のする方に目を向けると、そこには金髪で無式よりやや幼く見えるドレスを着た少女が立っていた。
「(綺麗な髪の子だな...)」
無式は彼女の方を見つめていた。
すると彼女は無式に向けて手招きをした。
「俺を呼んでいるのか?」
無式は彼女に吸い寄せられるように近づいた。
「無式くん、どうしたの?」
少女の姿は奏には見えていないようだ。
無式が少女に近づくとその小さな口を開いた。
「私達に...力を貸して...」
少女の言葉はあまりに弱々しく、聞き取るのがやっとだった。
無式は彼女に近づく。
「君、今なんて?」
「助け...て」
無式は彼女の様子からただ事ではないと感じた。
「…」
そして、無言で頷いた。
「ありが...と」
そして次の瞬間、奏の目の前から無式の姿が消えた。
「無式くん!?
き、消えた?」
奏は今起きた現象が理解できず、その場に立ち尽くしていた。