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殺人鬼と拒絶


 ギィィィン!と派手な音を立てて命を奪うはずだった刃が宙を舞う。


 暗闇の向こうから舌打ちが響く。


「あ、アテナ?」


 光り輝く剣を振り上げた体勢のまま暗闇を睨んでいる。


 俺を守るようにして前に立つ彼女は鋭い視線を向けていた。


「Yeah、まさかこんなところでセブン・プリンセスの人柱を担う光の剣士様に出会えるとは光栄だねぇ」


「貴方、彼を殺そうとしたわね?」


「その質問に関してはYesだ。しっかし、甘い坊ちゃんだねぇ~。中なら安全って言う顔をしているんだから」


「拠点内で人を殺すことは重大な罪よ。私は貴方を捕縛する」


 刃を向けながら告げるアテナの声はいつもよりも冷たい。


 全てを拒絶する、そんなもの感じさせる雰囲気に俺は少し下がる。


 目の前にいるのは本当にアテナなのだろうか?


「Wow!できるものならやってみることだねぇ、いくら光の剣士様だろうと俺を捕まえることなんザ、不可能だ」


「不可能を可能にしなければならない、それが私のやること」


 アテナの剣が動く。


 火花が散る音がその場に響き渡る。


 相手の動きは見えない。


 まるで光剣だけが動いている、そう錯覚させる。


「目で追うのがやっとかよ」


 二人の動きが視えない。


 その事実が俺にあることを突きつける。


「Wow、剣士様も大変だなぁ、こんなペーペーな奴の面倒をみなければならないとはなぁ」


「・・・・・」


 返事は無言の剣戟だった。


 ローブからの挑発に彼女は答えない、相手を倒すことに集中している。何が彼女をそこまで駆り立てるのかわからない。


 大振りの一撃をローブは屈んで躱す。


「流石は最強の人柱だけあるなぁ、まともにやりあったらこっちがもたない・・・・、そろそろかえらさせてもらうぜ」


「貴方はここで捕まえる。これ以上、邪魔されてはたまらない」


「邪魔?なんのことだ?攻略の邪魔をするようなことをした覚えはねぇけどなぁ・・・・もしかしてぇ」


「っ!」


 なんだ?


 アテナの耳元でローブの奴が囁いた途端、目を見開いて、狭い壁を削りながら光剣を振るいだした。


 ローブの中で男は笑い、赤い瞳が俺を見る。


「WowWowWow!面白いなぁ!あの七徳姫様とあろうものがぁ、まるで興味ないと思っていたんだがぁ、一応、人間らしい感情というのはあるんだな。だがいいのかぁ、そんなものに現を抜かしていると攻略に支障をきたす――」


「言いたいことはそれだけ?」


 俺とローブは同時に息を呑む。


 アテナがローブの間合いに入り込んでいた。


 それだけじゃない、さっきよりも速度があがっている。光剣が煌く。


 直撃すれば、相手の命を刈り取る。


「ザァンネン~」


 派手な音を立てて光剣が後ろへ弾き飛ばされた。


 ローブは笑いながら短剣を腰のホルダーに納める。


「忘れたわけじゃないだろ?俺のユニークスキル~、こいつがある限り、お前さんであろうと殺すことはできねんだよ」


 静かに剣を構えるアテナに対して、ローブは告げた。


「そろそろ次の攻略期間がはじまるぜ」


「・・・・なっ」


「攻略、期間?」


「おやおやぁ?そこの新入り君は何も知らないみたいだなぁ、おーもしろい、おーもしろい」


「な、なにがだよ!!」


「お前、この世界がただモンスター倒して、財宝探すとかそんな説明しか受けていないんだろ?」


「・・・・どういう意味だよ」


「おーおー、本当に教えてもらっていないんだな。あれか?時がくれば話すつもりでいたのか?遅い遅いねぇ、剣士様よぉ」


「貴方には関係ない」


「いーやあるね!」


 笑って、ローブを拭う。


 ローブの中、悪人面が現れるというのを想像していたものを裏切り、中から現れたのは金髪イケメン男子だった。


「教えといてやるよ、新入り、この世界に安全なところなんてものはない。どこにいてもここが戦場であることは変わらない」


「戦場?」


「そ、この世界は戦場・・・・つまり、ここにいる俺達全員、殺し合いをしなければならないのさ」


「殺し合い・・・・だと?」


「そ、ただし、相手は人間、というわけじゃない。まぁ、そろそろわかるさ」


 イケメン男子は黒い懐中時計を取り出す。


「時間だ」


「・・・・なんだよ、あれ」


 ありきたりな言葉が口から漏れる。


 空、分厚い雲を貫くように黒い物体が現れた。


 爆発など、音を鳴らすようなことなく、それは地面から姿をだす。


 金髪イケメンは静かに笑う。


「赤の世界、そう呼ばれているここは定期的にあの塔が姿を見せる。ギルドはあれが姿を見せると攻略を始めるよう探求者に指示を出す」


「攻略?」


「その顔は何故って、表情だな。あの塔は特殊な力を持っていてなぁ、早い話、周辺のエネミーを活性化させるんだよ。活発になったエネミーはベテランの探求者を軽く殺すほどの力を持つ。最近、負け続きだからなぁ、今回の塔攻略を頑張らないと、とんでもねぇことになるだろうなぁ」


 まるで他人事のように語る金髪イケメンはアテナに視線を向ける。


 静かに光剣を構えた。


「だぁからぁ、俺の相手なんてしている暇は無いんだぜ?剣士様、いや、七徳姫ェ、お前の使命を果たさないといけないだろ?俺なんかの相手をしている暇は無いはずだぜぇ」


「っ!」


 金髪イケメンはそういうとぶつぶつと何かを呟く。


 それをみたアテナが光剣を構え、向かう。


 刃がイケメンの頬に触れないかの距離で光に包まれて消える。


「・・・・転移された」


「どういう、ことだよ」


 剣を振るった状態のアテナへ俺は問いかけた。


 今、俺の中は戸惑いと苛立ちに包まれている。


「戦争って、攻略って、どういうことだよ!探求者は元の世界に帰る為の手段だったんじゃないのか!?なんで、化け物と戦わなくちゃいけないんだ!」


「・・・・」


「何かいったらどうだ!!」


 アテナは光剣を仕舞い、対峙する。


 けれど、何も言わない。


 そのことが余計に俺を苛立たせた。


「もういい。お前と話をしていると俺がイライラする。助けてくれたことには感謝するけれど」


 これ以上、彼女といたくない。


 俺は拒絶の言葉を吐く。


 相手を傷つけることだと理解しながらも、俺はアテナといたくなかった。


「もう、放っておいてくれ」







塔攻略期限:残り7日。




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