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揺れ動く意思

「レッドゼルを視認した!数は4、俺が先行する」


「サポートします、ベルトルトさんは撃ち漏らした敵をお願いします」


「お、おう!」


 廃墟の中でうごめくレッドゼルの姿を視認した俺はスキルを発動する。


 先手必勝とばかりに【クロスアタック】を放つ。


「お?」


 驚いた声を漏らしつつも、輝きを放つ籠手の一撃、それに巻き込まれたレッドゼル達が後ろの壁にたたきつけられる。


 赤い体をべっとりとまき散らし粒子をまき散らして消滅した。


 動けない俺を狙うレッドゼルにエクスクラメイテッドが襲う。


 炎の一撃がレッドゼルを飲み込む。


 耐性をもたないエネミーの体が炭となって消滅する。


 ブン、と炎を纏った剣を動かしながら俺の後ろに立つ。


 荒い息を吐きながらベルトルトがやってくる。


「ふ、ふぅ・・・・エネミーは!?」


「倒したぞ」


「えぇ!?ざ、残念だな!僕の華麗な魔法裁きをお見せできなかったことが」


「それなら後ろのエネミーは任せたぞ」


「へ、後ろ?」


 指摘におそるおそる後ろを振り向くベルトルト。


 そこにはや!とあいさつするように触手を向けているレッドゼルの姿がある。


「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃい!?」


 腰を抜かして座り込んだベルトルトへレッドゼルの触手が牙をむく。


 しかし、レッドゼルが攻撃に移る前にレティアの剣が相手を滅ぼす。


「大丈夫ですか?」


「は、ふ、ふぅ!当然だ。僕は奴隷解放団体のリーダーだ」


「それ、今は関係ないだろ」


「う、うるさいな、キミは!」


 顔を赤くして睨むベルトルトから籠手へ視線を下す。


 新しい武器はなんというか以前よりも使い勝手がいい。


 自分の思い通りに動く。


 そんな感じだ。


「聞いているのか!僕が本気を出せばここのエネミーなどすぐに屠って」


「じゃあ、やってもらおう」


「へ?」


 ぽかんとするベルトルトへ俺はある一角を指す。


「あそこにレッドゼルより一個上のエネミー、イエローゼルがいる。アイツをお前ひとりで倒してこい」


 さっきは俺とレティアで倒したが、こいつの実力を把握する必要があることを忘れていた。


 一緒に組んでいるわけだから把握することも必要だろうという考えだ。


 イエローゼルの姿を見て、俺の顔を見るベルトルトは鼻息を鳴らすと胸を叩く。


「任せたまえ!僕にかかればあんなエネミーすぐに屠ってみせよう」


「そうか」


「その顔は信じていないな!?任せていたまえ、5分であんな連中、ミンチだ」





























5分後。
























「逆にお前がミンチになりかけてどうする!?」


「こ、こわかったよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


 消滅するイエローゼルの前で腰を抜かしているベルトルトへ叫ぶ。


 涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしている姿は奴隷解放団体のリーダーとしていろいろと問題のあるものだった。


 てか、一応敵である俺へ向けている時点で色々と問題ありか。


「しかし、困ったな」


 ベルトルトは近接系の武器は使わず、魔法を使う。


 武器を使っていたら色々といえるが、残念なことに魔法はてんでダメだ。


 こういう場合、


「レティア、頼む」


「私・・・・ですか?」


「俺は魔法が使えないからな。お前の方が適任だろ?何よりも、一応、俺は敵だからな」


「主≪ごしゅじんさま≫は頑固というか意固地ですね」


「警戒心が強いといってくれ」


「わかりました」


 レティアは微笑むとベルトルトの方へ向かう。


 その間、俺は周囲を警戒する。


 10分ほどの時間を費やしてレティアの指導は終わった。


「大丈夫なのか?」


「問題ありません、次はあの人の特性を活かした戦いができると思います」


「レティアがいうなら大丈夫だな」


「嬉しいです」


 レティアは頬を赤らめる。


「エネミーを探すとしよう」



「それは僕の役目だ!」


 ベルトルトが叫ぶと地面へ手をかざす。


「紡ぐ!その名は地に轟き知らぬ者はいない世界の秘密を解き明かすべくその力を響かせよ!」


 魔法の言葉を紡ぎ、手をあててベルトルトは魔法を発動させる。


「ここから西にエネミーの反応がある」


「それは探知の魔法か?」


「アースサーチという魔法です。敵や物を探知する魔法の中では上位にあるものです」


 レティアが説明する。


 指示する方向へ俺達は歩く。


 しばらくすると狼型のエネミーが見つかる。


「本当にいた・・・・」


「僕の探知に間違いはない!」


「よし、俺とレティアで攻める」


「紡ぐ!風の唄はどこまでも遠く遥か彼方の楽園まで響き渡りその声を聴いたものは心まで癒される!」


 魔法の言葉を紡いだ途端、俺の体が軽くなる。


「何を?」


「【ウィンドウォーカー】対象の移動速度を補助する魔法ですね」


「足が軽くなった気分だ」


 とんとん、と足を叩きながら俺は地面を蹴る。


 続いてレティアが続く。


 エネミーが牙をむく。


「主≪ごしゅじんさま≫私が先行します!」


「わかった」


 舞うように宙へ跳んだレティアの刃がエネミーへ襲う。


 斬撃から逃れたエネミーは隠れているベルトルトの姿を見つけて唾液をまき散らしながら走ろうとする。


「遅いぜ」


 アクティブスキル【クライ・クライ】をエネミーへ放つ。


 攻撃を受けたエネミーは悲鳴を漏らし地面へ崩れ落ちた。


 ズザザザザと靴底が熱を帯びながらも残りのエネミーを屠る。


「凄いな、ここまで短時間に終わるんだな」


「主≪ごしゅじんさま≫はあまり魔法に精通していなかったから仕方のないことです。支援魔法は攻撃魔法と比べると劣るとみられガチですが。サポート面において右へでる魔法はないのです。誰かを手助けすることによって真価をみせるのが支援魔法です」


「なるほど、魔法に詳しくないからレティアに任せて正解だな」


「役に・・・・立てましたか?」


「あぁ」


「うれしいです!」


 頬を赤らめてレティアは嬉しそうに笑う。


 そんな様子をベルトルトは複雑そうに見ていた。














「ナオヤ・アカギ、話がある」


 太陽が地平線に沈んでいく時刻、そろそろ拠点へ戻ろうという時間になった所でベルトルトが話しかけてくる。


「なんだ?」


「二人だけで話をしたい」


「・・・・レティア、ここで待っていてくれ」


「わかりました」


 レティアから少し離れた廃墟の中へ入る。


 エネミーの気配はない。


「なんだ、話っていうのは?」


「僕はキミへ聞きたいことがある」


「なんだ?」


「レティアさんが奴隷になった経緯だ」


「・・・・なぜ、それをきく?」


「キミが奴隷を買ったと訊いたからだ。キミならその経緯も知っているのだろう」


 いきなりの質問に俺は困惑しながらも首を横に振る。


「残念ながら知らない」


「・・・・知らない?いや、そんなことはない購入するときにその人が何をして、どんなことが原因で奴隷になったかを伝える義務がある」


「レティアは違法で奴隷にされていた。偶然、俺は彼女と契約を結んでしまい、ずっと一緒にいるそれだけだ」


「だ、だったら、何で彼女を解放しない!?」


「奴隷を解放しようにもギルドに止められている」


 本当ならすぐにでもレティアを解放するべきなのだろう。


 だが、ギルドが素性の分かっていない彼女の自由に難色を示しているのだ。


 こちらとしてはすぐにでも解放して一人で元の世界に帰る手段を探しにいきたい。


 いや、本当は。


「満足か?これ以上、レティアについて文句を言うならクエストはここで終了に」


「僕は・・・・罪を犯した奴隷を除く者達は苦しんでいると思っていた!」


 レティアのところに戻ろうとしたところでベルトルトが叫ぶ。


 動きを止める。


「けれど、けれど、キミと一緒にいるレティアさんは、苦しんでいるようにみえない・・・・それどころか、楽しそうだった」


「だからなんだ?」


「キミは・・・・悪い人間、じゃないのか?」


「それはお前が判断することじゃないのか」


「っ!!」


 ベルトルトはなんともいえない表情を浮かべる。


 数時間、接しただけでその人間を理解できるかといわれれば、それは人によるだろう。


 俺の前にいるベルトルトはどちらかというなら理解できる方だ。


 だから――。


「俺から言ったことを鵜呑みにしたって意味がないだろ?お前の目はかざりじゃないはずだ」


「・・・・・」


「話がこれだけならそろそろ拠点へ戻るぞ。夜間のエネミーは危険なものもいる。慣れていない限り無茶は控えるべきだ」


「・・・・わかった」


 ベルトルトが頷いたのを確認してレティアの下へ向かう。


























 クエストが終わり、ベルトルトはナオヤ達と別れた。


「僕は、どうしたら」


 思い悩んでいるベルトルトの所へ解放団体のメンバーがやってくる。


「ベルトルト様」


「どこへいっておられたのですか?」


「すまない、街を見て回っていた・・・・」


「ルテイル様がお呼びです」


「さ、屋敷へ向かいましょう」


「・・・・わ、わかった」


 団員に連行されて仮説本部の屋敷へ向かう。


 中規模の門をくぐり屋敷の中、そこにある一室へベルトルトは入る。


「遅かったわね?どこへいっていたのかしら」


 入室したベルトルトを一人の女性が出迎える。


 派手なドレスに身を纏い、口元は扇のようなもので隠していた。


 ルテイル・フォン・ノースファイ。


 ここではない拠点、トワイライトキングダムという場所においてそこそこの地位を持つ貴族の当主であり、ベルトルトの婚約者となっている。


 元々、彼女が苦手だった。


 どこか高圧的な態度で、人を人とみていない彼女のことを好きになれない。


 しかし、親の決めた婚約なので、家督を継いでいないベルトルトに逆らう権利など存在しなかった。


「そ、外で視察だよ」


「そう~、被害にあっている奴隷はみつかったかしら」


「・・・・そ、そのことなんだけど」


「レティアというダークエルフの奴隷がいるそうね」


 衝撃でベルトルトは顔を歪ませる。


 どうして、彼女がそれを知っているのか。


 無言の質問にルテイルは笑みを浮かべた。


「何を躊躇しているのかしら?話によればその奴隷は無理やり印を刻まれているのでしょう?だったら、無理やりにでも解放させて、私達が保護するべきじゃないのかしら?」


「そ、それは・・・・」


 言葉を出せないベルトルトの肩にルテイルの扇が当たる。


 ぱちぱちと扇を鳴らしながら耳元で彼女が囁く。


「問題ないのよ?彼女は無理やり奴隷にされているの、主が事故で命を落とせば解放する大義が私達にでるわ。その意味・・・・わかるわね?」


「ま、待ってくれ!」


 いきなりのことにベルトルトは驚愕に顔を染める。


「どうして、そんな話になるんだ。彼らは、幸せそうにしているのに」


「幸せ?それは奴隷に主が魅惑の魔法をかけているからかもしれないのよ?そんなものを信じるなんて、どうかしているわ」


「そ、それは・・・・」


「わかっているはずよ。奴隷というものは主へ抵抗することができない。それどころか魔法で操られているという自覚すらない。そんなものを楽しそうというなんて、おろか以外の何ものでもない」


「で、でも・・・・」


「リーダーとあろうものが毒されるなどあってはならない!」


 バシッと扇で殴られる。


 ベルトルトは赤くなった頬をさわりながら沈黙を貫く。


「明日の昼まで猶予を上げます。それまでに結論を出すことね」



「・・・・わかったよ」



 退室するベルトルトからルテイルは目を合わせない。


 完全に遠ざかったのを確認してから溜息をこぼす。


「あれは、もう用済みかしら?」




連続更新はこれまでになると思います。


残りの話はできあがっていれば、投稿していきます。


質問や思ったことがあれば感想にかいてください。

可能なものなら答えます。

誹謗中傷は受け付けていませんけど。

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