表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/103

俺の脳内がヤバイことに・・・・・・

いろいろ暴走してます

  よし、だいたい必要な情報は集まったから次は行動に移ろう。

  まずは―、

 

  「ムース、君の部屋どんなのがいい?」

 

  ムースのために部屋を造ることからだ。

 これからのことも考え、自分の部屋は必要だろう。

  そんな簡単な考えからだったが、ムースはどうやら違ったようだ。

 

  「自分の部屋をいただけるのですか!?」

 

  無表情だったムースの目が僅かだが見開かれ驚いている。

  なぜそんなに驚く、この部屋で俺と一緒に生活するつもりだったのか?

  それはいろいろ問題があるだろう。

 

  「いや自分の部屋が無いと着替えとかいろいろ大変でしょう?」

 

  そんな風に遠回しに言ったが、実際は俺の心の問題からだ。

  ムースは無表情だが、それが銀髪と合わさり人形のような美しさを醸し出し、プロポーションも元の世界ではまず俺とは関わり合うようなことが無いほど整っている。

  そんな彼女と同じ部屋にずっといるのは逆にこっちが色々ときつい。

 

  「…………私はマスターに裸を見られても構いませんが」

 

  無表情の顔を真っ赤にしながらムースは小さくつぶやく。

  会ってからまだそれほど時間が経ってないのに、なぜムースは俺にこんな態度をとる?

  そんな疑問以上に今まで一度も女性に、そんな表情や言葉をかけられたこと無かった俺は慌ててしまう。

 

  そんな顔でそんな事言われても困るんですよ!!

 

 

 

 

  ◆◇◆◇ 神無月黒の脳内 ◆◇◆◇

 

  俺の脳内では、今まさに激しい戦いが繰り広げられようとしていた。

  紳士服に身を包み理知的な表情をしたダンディーな理性と、ムキムキな裸の上半身を惜しげもなく晒し目をギラギラさせた野性的な本能が互いに向かい合い、それを二頭身姿となった決定権を持つミニチュア姿の俺が見守る。

 

  ……まぁ、ダンディーとか野性的とか言っても全員俺なのだが。

 

  「女性があんなこと言ってんだぞ!別の部屋なんか作らなくていいだろう!!」

 

  本能が勢いよく叫ぶ。

 

  「馬鹿なことを言うな!こういうことはしっかりとして置かないとあと後問題が出てくるぞ」

 

  理性が理論的な反論を返す。

 

  「問題?おおいにイイじゃないか。

  クラウンだって言ってただろう。ここは何をしても許されるんだって、だからこのまま同衾生活が一番いいんだよ!」

  「なにをしても許されるからこそ、守るべきラインはしっかり自己判断で守らないといけないんだ。

  ムースとのことも、まだ会って間もないんだぞ。もっとしっかり彼女のことを見極める必要があるだろう!!」

 

  しばらく二人は言い争うが、意見は真っ向から対立。

  ついに痺れを切らした本能が行動に移す。

 

  「固ってー頭だな。もういいわ、俺の意見を反対するんなら、お前を倒して俺の意見を通さしてもらうわ」

  「それはこっちのセリフだ。最初が肝心だからな、しっかり本能を押さえられるように調教してやる」

 

  そして始まる激しい戦い。

  本能が理性に走り出し、そのまま勢いを乗せて右の拳を振るう。

  その拳を理性は体を捻ることでかわし、お返しとばかりに側頭部を狙いはいキックをかますが、それを本能は難なく腕でガードする。

 お互いにお互いのことがわかっているような一進一退の攻防を繰り返す理性と本能。

 

  (……両方とも俺だから当たり前か。)

 

  しかし、大振りの攻撃が多い本能が徐々に動きが鈍くなり、理性の攻撃がだんだんと当たるようになる。

  ダメージ自体はたいしたことないが、何度も攻撃が当たることに苛立ってきたのか、本能が吠えながら右拳を大きく振るい、理性の顔面めがけて殴りこむ。

  だがその吠えに怯えることなく理性は本能の右拳に合わせ、綺麗な左クロスカウンターを逆に本能の顔面にお見舞いする。

 

  わずかな沈黙。

  互いの拳をクロスした状態で動きを止めていた二人だが、やがて本能が崩れるように地面に倒れることで勝敗が決した。

 

  倒れた本能にわずかに寂しさ気な表情で見た理性は、ゆっくりとミニチュアな俺の方を向く。

 

  ミニチュア姿の俺は理性の意見に同感なので、俺は勝利した理性に称賛の拍手と言葉を贈る。

 

  「やったぞ理性!よく頑張った理性!!

  これからムースの部屋を造って、しっかりとプライベートな空間を持つようにするよ」

 

  その言葉に紳士理性は満足気な笑顔になる。

 

  「決定権の俺よ。それでこそ俺が頑張ったかいがある。

  そして……、もし頑張った俺に褒美があるのなら、ムースにこの服を着てもらいたい」

 

  そう言って懐に手を入れ一着の服を取り出す。

 

  取りだされた服はメイド服。

  だがそのメイド服の前にエロって言葉がつくような、そんな服面積が少ないメイド服。

  突然取り出されたその服を見て、拍手をしていた手が止まってしまう。

 

  えっ?何その服。

  あきらかに短いよねそのスカート?

  なんで胸を強調するような作りになってるの?

 

  確かにムースのメイド服は本格的なメイド服で、色気というのは感じないが、これを取り出して理性は一体どういうつもりなのか。

 

  戸惑うミニチュア姿の俺に理性は実にイイ笑顔でサムズアップしてくる。

  そのイイ笑顔は何千という言葉で語るよりなお雄弁に語ってくる。

  そう…、『エロメイドって男の浪漫だよね』っと。

 

  「変態紳士かーーーーーーーーー!!!!!!!!」

 

  俺は盛大にツッコム。

  えっ、何これ?

  理性ってもしかして、ただの変態だったの?

 部屋を造ることに賛成したのも、本当は部屋を分けることで生まれるいろいろなハプニングシチュエーションを楽しみにしていたからじゃないの?

 

  って言うか、俺の脳内にはエロしかないの?

 

  自分で自分のことがよくわからなくなってくる。

 

  俺が戸惑う間にも変態紳士と判明した理性は、エロメイド服を持って近づいてくる。

  このままではその服を手渡されたら、俺はムースにその姿を強制してしまうかもしれない。

  あと一歩でミニチュアの俺に変態紳士理性がたどり着くという所で、その足が急に止まってしまう。

  理性が何事かと足元を見れば、ボロボロになった本能が、必死になり変態紳士理性の足を掴んで食い止める。

  そして腫れあがった顔で口を開く。

 

  「女性に自分の趣味を押し付けるのは駄目だ。

  男ならただ黙って女性のすべてを受け止めな」

 

  「本能ーーーーーーーーー!!!!!!!!」

 

  思わず涙を流しながら叫んでしまう。

 

  えっ、何この本能?

  なんでこんな本能がハードボイルド風なの?

 さっきまでエロい願望全開で戦ってたのに、殴られてなんか回路でも変わったの?

  そしてなおも傷ついた体に鞭を打ち、本能は話し続ける。

 

  「エロメイド……、確かにそれは浪漫だ。

 だが強要したエロに何の意味がある?

  男ならありのまま……、そうありのままのムースを受け止めろよ」

 

  言ってることは何かカッコイイが、結局エロい事に関しては全く否定していない。

 

  理性はしばらく黙って本能を見ていたが、やがてゆっくりと膝を降り、本能に手を差し出す。

  その手を本能は最初驚いたように見ていたが、やがて漢らしく笑うとその手を握る。

  二人の間に熱い友情が生まれた。

 

  そんな光景を目の前で見せられて、ますます自分のことがわからなくなってきた。

 

  悪魔がいるということも驚いたが、自分の脳内の事情の不思議さの方がもっと驚きだ。

 

 

 

  ◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

  驚き過ぎて固まってしまった俺は、心配したムースに声をかけられるまでずっと固まっていた。

  そして結局ムースの部屋は造ることになった。

  もちろんあの服のことなど一言も口に出してはいない。

 

  これからのことを考えると無いと不便だからという結論に俺の中ではなっている。

 

 

 

 

 

  本人が遠慮してこじんまりとした質素な造りのおかげでDPの消費は200ほどですんだ。

  他にも必要かと考え2部屋同じ部屋を造り、今俺がいる部屋をマスタールームと呼ぶことにして新しく造った大部屋に全てつなげる。

 造りとしては大部屋に扉が7個あり、3個がそれぞれの個室、1個が俺のマスタールーム、1個がキッチン、1個がシャワー室、そして最後の一つがダンジョンへの入り口という造りだ。

  全ての造った合計DPは1000DP。

  これだけで今持っているDPの6分の1を使ったことを考えるとこれからが心配になってくる。

 

  だが一応今日の所はこんな所でいいだろう。

 なんだか必要以上に頭が疲れてしまった。

  本格的にダンジョンを造るのや、魔物を呼ぶのは明日だ。

 

  そうして俺が異世界に来ての一日目が無事終了した。

 

 

 

 

 

 

 

  ちなみに今回起こった俺の脳内の戦いは、厳重に封印し無かったことにしたが、後日煩悩の神から【理屈だけでは到達できず、本能だけでも到達できない、二つ揃って初めて見えてくる極致に至った者】という大変長い称号を授けられました。

 


黒はいたって普通の世人男性です。

ですが彼も異世界に着て色々疲れていたのでしょう……。


最後まで読んでいただきありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ