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忠義の狗 VS 狂信者 前編

 スーラ視点


 主殿の命により某達は少しでも時間を稼ぐために今から狂信者と剣を交える。

 普段ならば狭い通路を十二分に利用した戦い方をするのだが、狂信者の動きを見る限り逆にこちらが不利になると判断し、第一密林エリアで戦うことに決め現在狂信者が来るのを待ち構えている。

 視線を狂信者がいる通路の方に向ける。

 まだ姿は見えないが通路からは毛が逆立つような嫌な気配が流れてくる。


 「クゥ~ン」


 傍にいた眷族の一匹が尻尾を丸め、某の足に体をすりつける。

 それに続くように他の眷族達も次々と某にすり寄って来た。

 皆本能が危険を知らせているのだろう。

 それでも体を震わせながら逃げ出さないのはひとえに某が戦うと決めたからであろう。

 身重な雌達は全て避難させている。

 今いるのは全て雄のみ、彼等は大切な仲間を守るための戦いに挑むのだ。




 やがて通路の方からコツ、コツとこちらに近づいてくる足音が聞こえ始めた。

 足音が大きくなるにつれ武器を持った手に嫌な汗が浮かんでくる。

 何もしていないのに濃くなる気配に目眩がしてくる。


 姿が見えてもいないのに、すでに体力と精神がごっそりと持って行かれていた。


 だがそれでも気力を振り絞り、狂信者を待ち構える。

 そして足音が最大限に大きくなった時、狂信者が密林エリアに姿を現した。


 モニターでは影が出来ていて、その姿ははっきりしなかったが、目の前に立たれた事でその姿がはっきりとわかる。

 身長はそこまで高くなく170ほど、筋肉質な体つきでは無くむしろ色白の肌と合わせてインドア派を思わせる。

 髪は無造作に伸び、その簾の様な前髪の隙間から爛々と妖しく輝く目がこちらを見つめている。

 だが男の印象が一番強いのはその口だろう。

 何が楽しいのか分からないがニタニタとした不快を誘う笑みを浮かべている。


 「貴様、何処の神の狂信者だ!?」


 目の前で立ち止まった狂信者に槍の矛先を向けて問う。

 もちろん答えなど期待していない。

 狂信者がまともにこちらの問いの返すなんて思ってもいないからだ。

 なのになぜわざわざ問うたのか?

 それは時間稼ぎのためである。

 答えても答えなくても何らかの反応があればそれを利用して少しでも多く時間を稼ぐ、そのためにわざわざ期待してない問いを投げかけたのだ。


 そしてスーラの想像通り狂信者は問いに答えることは無かった。

 ニタニタとした笑みを変えることなく、ゆっくりと近づいてくる。


 狂信者が近付いて来るごとに後ろに下がりたくなるのを我慢して、間合いに入った瞬間槍を突き出す。

 その突きを狂信者は横に体をずらす事で簡単にかわし、それまでの動きとは比べられないほどの速さで腕を振るってきた。

 ヤバい!

 すぐに覚り間合いから飛び退くが、浅くだが上半身を斜めに斬られていた。


 (早すぎるでござる)


 舌打ちを洩らしそうになったがその暇も無く、狂信者が近寄って来て腕を振るってくる。

 それを何とか反応して避けてはいるが、完全には避けきれず体には無数の切傷が刻まれていく。


 (このままではいかんでござるな)


 このままでは時期に致命傷を受けてしまう。

 そう判断して短く口笛を鳴らす。

 その音に反応して、スーラの後方にいた魔狼達が一斉に狂信者の周囲に散らばる。


 (これで少しは注意がそれればいいのだが…)


 魔狼達には狂信者の間合いには入るなと伝えている。

 彼等の役割はあくまで注意を逸らすためのサポートなのだ。


 実際魔狼達が周囲に散ったおかげで、狂信者の動きが少しだけ鈍る。

 その隙をつきスーラは反撃に出る。

 振るわれた腕を傷つきながらも避け、腕を振るったことにより空いた無防備になっている腹めがけて槍を突き出す。


 避けることなどできない完璧のカウンターだった。


 これが普通の相手ならば確実に致命傷を与える事ができただろう。

 だが相手は普通では無く、狂って壊れた狂信者だった。


 狂信者はその突きをみても表情を変えず無防備の腹に槍を突き刺される。

 そしてそのまま何事も無かったかのように再び腕を振るって攻撃をしてきた。



 今度は逆にスーラが追い込まれることになった。

 腹に槍を刺さっても変わらず攻撃してくる事に混乱し、槍は腹に刺さったままなので使うこともできない。

 そのため反応が遅れ、気付いたときには左目が見えなくなっていた。


 「ギッ、グゥ」


 左目に走る激痛を抑えつけ、狂信者から距離をとるために槍から手を離し後に引く。

 左目からは勢いよく血が流れていく。

 今すぐ止血をしたいところだが、それ以上に今は狂信者の動きに注意しなくてはいけない。

 少しでも目を離せばそれだけで死ぬことになる。



 狂信者はスーラを追うことは無く、ただじっと腹に刺さった槍を見ていた。

 そしてじっと見ていると思ったら今度はいきなり槍を引き抜く。

 腹からは勢いよく血が噴き出すが、狂信者には痛がる様子も見られない。

 むしろ喜んでいるかのようにそのニタニタした笑みを強めている。

 引き抜いた槍をもう興味無いとばかりにその場に投げ捨てた後、血が噴き出す腹に手を当てる。

 すると先程まで勢いよく吹き出ていた血がピタリと止まり、手をどかすとそこには傷など無かったかのような綺麗な肌があった。


 「ッ――」


 その光景を見て言葉を失う。

 あれだけの傷が手を当てただけで治るなんて常識外れだ。

 一体どんな加護を得ているというのだ。


 そんなスーラに対して、今まで一言もしゃべらなかった狂信者が口を開く。


 「あぁ~神よ感謝します。

 これほどの傷がすぐに治るなんて、なんて素晴らしい加護なのでしょう。

 この感謝の気持ちは、目の前にいる醜い犬の化け物の首を刎ねる事で表すことにしまう。

 見ていて下さいね愛の神ラブ様!!!!!!!!!」


 そう言った瞬間、狂信者の気配がさらに凶悪さを増す。

 その気配にスーラは息を飲む。

 だがここは引く訳にはいかない。

 傷を押しながらスーラは無手で狂信者に立ち向かう。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

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