アクノマ商会 広報担当
子供達が入って来た次の日、今日こそは普通の侵入者が来て欲しいと思いながらみんなと食事を取り、その後日課のメールをチェックする。
すると今回アクノマ商会から普段と違った感じのメールが入っていた。
『どうもいつもあなたのお傍にアクノマ商会です。
皆さまの日々の御活躍により、暇を持て余していたあの腐れ神々様も大分喜んでおります。
そのせいでウチ等の大事なボスであるクラウン様が、また腐れ神々様方にいろいろと無理難題を言われ多忙を極めておりますので、今度からアクノマ商会からの連絡事項などは、このアクノマ商会広報担当に任命したフールがいたしますのでよろしくお願いします。
いや~、意外にこの仕事したいって悪魔たちが大勢いたために、拳による穏便な話し合いの結果何とかこの仕事につくことができて本当に嬉しいです。
あいつらとガチで殴り合うと私が負ける可能性が高いので、こっそり食事に毒を混ぜていたのが利きましたね。
まぁ、商会のルールとしてDDMの方々に贔屓をする訳にはいかないのですが、その分色々とみなさんの近況状況などを伝えていきますので楽しみにしていて下さい。
さて早速ですが、今日でプロジェクト開始から10日になりますね。
10日間の間にすでに攻略されたダンジョンが5カ所あります。
2日に1個のペースで攻略されている計算になりますので、DDMの方々は自分のダンジョンを攻略されないように気を付けて下さいね。
えっ、どう気を付ければいいかですか?
そうですね、気を付ける所がわからなければ気を付けようがないですもんね。
それではみなさんの疑問に、どこぞの愛の神様よりも慈愛に満ちているこの私が懇切丁寧にお答えしましょう。
まず攻略されてしまった5個のダンジョンの敗因を教えいたします。
一つ目がダンジョンに住む魔獣、魔族の種類ですね。
いくら自分が女が好きだからって、戦闘力も低い種族ばかりダンジョンに呼んだらそりゃあ防衛もできずに攻略されちゃいますよ。
ちなみにそこのDDMさんの夢は腹上死だったらしいですけど、最後は腹に剣を刺されて丸焦げになってしまいました。
それ見ていた腐れ神々様の大ウケのこと。
まぁ、あのブタの丸焼の様な死に方は魔族にとってもいい笑いもんでしたけどね。
二つ目が人間たちと交流を持てると思っている事ですね。
このDDMは前の世界の漫画かラノベの影響か知れないですけど、ダンジョンの外に住む人達と仲良くなって争いも無く、幸せに暮らせると思っていたみたいです。
馬っ鹿じゃないですか!
そんな甘い話ある訳ないじゃないですか。
この世界ではすでにライフ様の神託で皆さん世界の敵になってるんですよ。
甘い考えは捨てて下さいね。
あっ、ちなみにこのDDMは人間達と交流をしようと笑顔でダンジョンの外に出ていき、全身に矢を受けてハリネズミみたいになって死にましたよ。
三つ目が従者の意見に耳を貸さないことですね。
ま~、これは私達の商会も悪いかもしれないんですが、自分の好きなように過ごせると言った手前、いろいろ口出ししてくる人間が傍にいるとうるさいと思う気持ちも分かります。
ですが私達もわざわざ一回無料で従者契約させたわけじゃないんですよ?
彼らには事前にある程度の情報を与えていますので、耳を貸すことでかなり有利になると思います。
…………すでに従者の契約した者に色々嫌な思いをさせた方はその情報を素直に教えてくれるかわわかりませんけどね。
話を聞かなかったここのDDMさんは、ハンマーで頭をスイカみたいに割られて死にましたよ。
四つ目はエリア環境の無さです。
なんでわざわざ環境アイテム売ってると思ってるんですか、環境を上手く使って戦えってことですよ。
海の無い土地にダンジョン造ったんなら海エリアぐらい造って下さいよ(高いけど)
砂漠の土地にダンジョン造ったんなら極寒エリアぐらい造って下さいよ(高いけど)
毒沼エリア造って下さいよ(高いけど)、山岳エリア造って下さいよ(高いけど)
針山エリア造って下さいよ(高いけど)、灼熱エリア造って下さいよ(高いけど)
……はい、すみません。
環境エリアアイテムが高くて買えないんですよね。
でもまぁ、安いのもありますのでぜひ買って見て下さい。
今なら「なんで俺のエリアが無いんだよ」って馬鹿な子共みたいに拗ねているその環境の腐れ神々様から褒美を貰えるかもしれませんよ。
ここのDDMさんは普通の迷宮型造っていたみたいですけど、普通に攻略されて最後は命乞いをしようとして、その前に首を落されていましたね。
この首の斬り方が素敵だったとかで、首を落した方は断頭の神から加護授けられてましたよ。
最後の5つ目は一人だけでもいいので強い魔族を呼んで下さい。
これは本当に皆さんに聞いて欲しいです。
ここのDDMさんが造ったダンジョンはかなり完成度が高かったと思います。
ですが一つだけ欠点があり、それが呼んだ魔獣や魔族がみんな平均的だったことです。
平均的な戦力も悪くはないです。
悪くはないんですけど、我々魔族は強いものに従う本能があるんです。
一人でも強い存在がいるだけで、心に安心感が芽生え、その存在だけで十二分に力を発揮することができます。
なのでダンジョンには一人だけでも強い存在を持つ者がいた方がいいですよ。
さて以上が5カ所の攻略されたダンジョンの敗因と対策です。
どうです?参考になりましたか。
DDMのみなさんは今一度自分のダンジョンを見直してみて下さいね。
後ついでに耳よりの情報ですが、そろそろ本格的に人間達がダンジョン攻略に乗り出そうとしてますよ。
数人のグループで、それぞれ武器などが違っていたら注意して下さいね。
それでは皆さんの活躍を期待しております。
アクノマ商会 広報担当 クエスチョン・フール
神無月黒様、アクノマ商会からの賞与が来ています
【狗の縄張り】 :ダンジョン内部に一定数以上の狗系の魔獣がいる
賞与500DP
【変化を遂げた者】:進化をした魔物がいる
賞与1000DP
【防衛成功】 :始めてきた侵入者を撃退お呼び全滅させる
賞与1000DP
神様方から褒美が来ています
【慈悲を持つ者】 :慈母の神マザーから200DP授与されます
【狗に慕われる者】:狗神ウォルフから150DP授与されます
●お知らせ
現在のDDM数 982名』
色々とツッコミ所満載のメールだったが、今は流しておこう。
それに結構有意義な情報もあった。
攻略されたダンジョンの敗因は今の所俺には無い。
だからと言って安心できるかと言われればできないのだが、取り敢えず今言われたことをもう一度確認しておこう。
そう思い仲間に通信を入れようとした所で、頭にダンジョンに侵入した者がいる警報が鳴る。
すぐにモニターを付け入り口付近を見ると、そこには三人の男達がそれぞれ違う武器を構えながらゆっくりとダンジョンを進んでいた。
一人は両手剣を持ち重そうな鎧を着ている男。
一人はさっきの男とは反対に軽装に身を包み、両手にそれぞれ短剣を持った男。
最後の一人は魔法使いなのかゆったりとしたローブを着て手には杖を持っている。
その三人を見たときに思わず息を飲んでしまった。
本格的に人間達がダンジョンを攻略しに来たのだ。
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