命は大事にしようよ……
昨日侵入者を食べたアナコンダイが進化した。
ヤードいわく、プロジェクト開始前から他の魔獣達と訓練し、万魔事典で呼ぶ前から多くの獲物を食べてきたそうなのでいつ進化しても不思議は無かったそうだ。
「しかし進化って姿ががらりと変わるんだな」
「そうですね。
ですが今回の進化はそこまで変わったと言うほどでもないのですよ」
アナコンダイは進化したことで体長や鱗の色、牙など生えたがそれは進化した者の変化とすればまだ大人しい方なのだと言う。
「酷いものになりますと手足が倍以上増えたり、性別が変わる者などもいますので」
確かにそこまで変わると前の姿とはがらりと変わってしまうだろう。
「それにしても、詳しく調べると意外とDMの俺でも知らないことがあるんだね」
とある理由から、今日はダンジョン内を点検していたのだが、自分の知らない所で少しずつダンジョン内が変化していた。
例えばウットカゲに子供が生まれ、いつの間にか数が増えていた。
湿原エリアにいるカウフロッグの中に【毒粘液】と言うスキルを覚えたものがおり、食べられないように変化した。(ちなみにこの個体はホッピングスネークには食べられなかったが、ポイズンスネークには容赦なく食べられていた)
スラりんがまた分裂して3匹になった。(今回は分裂の理由は、木から落ちたときに衝撃で二つに分裂したそうだ。
相変わらずスライムの分裂については謎が多い)
など少しずつだが知らない所で変化していた。
「まぁ特に困るようなことではないのでそのままにしておくかな」
「そうですね、何かあればすぐに報告があるでしょう。
ところでマスター、一つ質問をしてもよろしいでしょうか?」
背後でそれまで質問に答えていたムースが質問してくる。
はっきり言って何を質問してくるのか予想がつく分、今は質問されたくない。
されたくはないがいつまでもこのままではいけないのだろう。
「……質問をどうぞ」
「ありがとうございます。
それでは―、
一体いつまで彼等をあのままにしておくつもりですか?」
ムースの視線の先、そこにはダンジョン内を映してあるモニターがあり、モニターには現在入り口付近からゆっくり進んでくる侵入者たちの姿が映し出されていた。
……………子供たちだけど。
「……まだ居るんだね?」
「はい、まだ頑張っているようです」
子供達がダンジョンに入ってすでに1時間ほど経とうとしている。
子供達は怯えながらも団子のように一塊りにまとまり、ゆっくりダンジョンを進んでいる。
見た所防具などは身につけてはおらず、武器らしい武器なんかも持たず、粗末な木の棒を手に持っているぐらいだ。
「さすがに木の棒で魔族を倒せるとは思ってないよね?」
「魔族は無理かもしれませんがスラりんなら倒せるかもしれませんよ。
…………あとゴンラも倒せるかもしれませんね」
どうやらムースの中ではゴンラの実力はスライムと同レベルになっているらしい。
まぁ今はゴンラのことはいいとして問題は子供たちだ。
さすがに子供たちを殺すのは少し躊躇してしまう。
「とってもお肉が柔らかそうなの!!」
仲間の一人が侵入者が入って来た時の子供を見てそう叫んだため、今は別な所に隔離しているのは別として。
「それでどうするのですか?」
「どうしようか?」
本当に対応に困ってしまう。
待ち構えているヤードからも通信が入ってくる。
「主よどうするんだ?
このままいけば密林エリアに入ってくるぞ」
「軽く傷を負わせて帰らせる?」
「それはできなくはないが俺は今回パスだな」
ヤードは加護のせいで自分よりあきらかに弱いものには攻撃の制限がかかってしまう。
「それならスーさんお願い」
「是」
スーさんはいつも通り返事をしてくれたが、その表情はどことなく気が重そうだ。
そりゃ誰だって子供と何か戦いたくないだろう。
それでも入ってきた以上は対処しなくてはいけない。
◆◆◆◇◇◇◆◆◆
主殿からの指示を聞いたスーラは気が重かった。
まさか子供と戦うことになるとは……。
仕方ないこれも主殿のため、そう自分に言い聞かせ槍を手に取る。
殺す訳ではないのだ。
ただ軽く傷を負わせ、怖い目を見せれば怯えて帰るだろう。
だから今回も眷族達の仕事は無い。
「すまんが、今回も我慢して欲しいでござるよ」
足元で待機している眷族の魔狼達の頭を撫でながらそう言う。
魔狼達はその言葉を聞き、悲しそうに頭をうなだれてしまう。
それもそうだろう。
今まで侵入者と戦うと言うことで、頑張って特訓してきたのにいざ侵入者が来ても戦えないとなれば意気消沈してしまうのも無理はない。
「そう落ち込む必要はないでござるよ。
次こそはきっと活躍できるでござる」
落ち込む魔狼一人一人の頭を撫で励ましていく。
そして最後に魔狼達の前に立つと拳を握り、強く言い聞かせる。
「次侵入者が来た時こそ、諸君らの牙の活躍に期待してるでござるよ!」
「「「「「ウォーーーーーン」」」」」
スーラの言葉に答えるように魔狼達は声をそろえて一斉に鳴く。
その力強い鳴き声を聞き、スーラも気合が入り子供達を追い出すために彼等の元に足を進めようとする。
だが、その一歩目を踏み出した所で主殿から通信が入る。
「あ~、ごめん。
何か今の魔狼達の声で子供達逃げていったわ」
その言葉に膨らんだ風船が萎むように拙者の気合が勢いよく抜けて行ってしまった。
◆◆◆◇◇◇◆◆◆
「まさか遠吠えで逃げ出すとはね。
まぁ何にせよ、下手に怪我をさせずに追いだせたのは良かったね」
「そうですね。
ですがマスター、変わりにスーラが燃え尽きたように真っ白になっていますが?」
「………………大丈夫。スーさんなら次までにはきっと立ち直るよ」
「そうですね」
ダンジョン内を映したモニターには燃え尽きたように真っ白になり座りこんでいるスーラと、その周りで心配そうに体をすりつけたり、手をなめたりする魔狼達の姿が映し出されていた。
本日も無事?に侵入者を排除することができたようだ。
よかったよかった。
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