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可愛狩る カワイガル

今回の話ですが少しグロイです。


 しばらくして顔をあげたスーラの顔には涙の痕はなく、変わりに決意に満ちた表情となっていた。

 その表情を見て安心した俺は次へと進む。


 まずは先ほど呼び出した魔狼達のために新たにダンジョンを拡張する。

 そして新しく造った部屋を【森林】エリアに変えて、そこに彼等を住まわすことにする。


 「森林エリアじゃなくて、草原とかの方がよかった?」

 「いえ、魔狼の狩りは身を隠せる場所が多くあった方がいいので、森林エリアで問題ないかと」


 スーラがそう言って答えてくれる。

 ちなみにスーラが持っているスキル、眷族使役【狗】のおかげで魔狼達はスーラが出す指示に従い、行動してくれる。


 「もともと魔狼達は群れのリーダーの指示で行動しますから、今回は某が彼等のリーダーになったからですよ」


 命令に従ってくれたウインドウルフの一頭の頭を撫でながら照れたように言うスーラだが、多分魔狼達もスーラから出る雰囲気で従ってもいいと思ったに違いない。

 そしてウインドウルフを撫でるスーラを見ていると、俺も無性にそのきれいな毛並みを撫でたくなり、隣に座り一緒に撫で始める。

 滑らかでありながら、しっかりとした手ごたえもある上質な毛並みのさわり心地はかなり気持ちがいい。

 気持ちよすぎて、ついモフモフと撫でまわしていたら、いつの間にかウンドウルフは腹を見せ「ココも撫でて」とアピールし始め、他の魔狼達も撫でてもらおうと俺の周りに集まり座った姿勢でこちらをじっと見つめてくる。

 スラりんの撫で心地とはまた別にはまってしまいそうだ。






 そうしてしばらくにこにこしながら撫でていると、背後からムースが聞いてくる。


 「ずいぶんと気持ちよさそうですね」

 「うん、かなり気持ち良いよ。

 ムースも撫でてみたら、きっと気持ち良いよ」


 俺の勧めに、ムースはゆっくりとこちらを見つめている一匹のシャドーウルフの頭に手を置きゆっくりと撫で始める。

 最初はぎこちなかったが、やがてその手触りが気にいったのか、無表情に少しだが嬉しそうな笑みが浮かべながら撫で続ける。

 ヤードとメーサにも撫でさせてあげようと、二人を探すため辺りを見渡すと、ヤードは撫でる気が無いのか、我関せずとばかりに近くの木に背中を預け瞑想している。

 一方のメーサはというと、魔狼達から少し距離を置きこちらの様子を窺っている。


 「メーサもこっちに来て一緒に撫でようよ」


 「いい、メーサここでいい、ここで見てる」


 誘いの言葉を掛けても、メーサは断り近寄ろうともしない。

 もしかして怖いのか?

 そう一瞬考えたが、それなら魔狼を呼びだす時にメーサは何か言うはずだ。

 一体なんでメーサは近寄らないのだろう。


 「きっと石化の瞳のせいでしょう」


 ムースが思案していた俺にそう教えてくれる。


 「石化の瞳って見た者を石に変えるアレ?」

 「石には変わりません、ですが見た者の本能が恐怖に固まり身動きが取れなくなり、まさしく石のようになってしまいます」


 それが石化の瞳の能力らしい。

 「石に変わらないんだ……」物語に出てくるような能力だと思っていたので少し堕ち込んでしまう俺に「石に変わったら食べられないではないですか」と、ムースが至極まっとうな意見を言う。

 もともと獲物が逃げないための能力らしい。


 「あれでもメーサの石化の瞳って今能力制限で微弱じゃなかった?」


 微弱では能力を発揮しても効果はほとんどないはずだ。


 「微弱とはいえ効果はありますし、彼等も魔獣ですからね。

 本能的に捕食者に怯えてしまうのですよ」


 それはどうしようもないほど抗えない自然の摂理。


 「怯えた者と無理やり仲良くなっても、それは逆にメーサが傷つきます」


 いつか能力制限がとれ、しっかりと自分の能力を使えこなせるようになればきっとメーサも仲良くなるはずだ。

 それまではしばらく我慢してもらうことになりそうだ。

 そう思いながら、こちらを羨ましそうに見てくるメーサの表情を見るとなんだか申し訳なく、代わりと言っては何だが、メーサにとって気がまぎれるエリアを作ってあげることにした。

 ついでに、食料事情も少し関わることだしね。














 「うわ~、マしゅターすごい、すごいなの!!」


 新しく造ったエリアを見たメーサは両手をあげ歓声を上げる。

 そこは大部屋よりも少し小さな空間の湿地エリア。

 常に空気は一定の湿気を孕み、湿気を帯びた地面には所々に水溜りや泥だまりができている。

 そしてそんな水溜りや泥だまりの中では手の平サイズの生き物が鳴き声を上げ動いている。


 「ゴウェー、ゴウェー」


 両頬を風船のように膨らませながら鳴く生き物、魔獣『カウフロッグ』。

 彼等は自分たちで動くのが嫌で、その場から動かず長い舌を使って獲物を獲る湿地地帯に住む魔獣だ。

 俺はそんなカウフロッグを30匹と、普通のカウフロッグの三倍の大きさがあるキングカウフロッグとクイーンカウフロッグを万魔事典で呼び出した。

 ちなみにキングカウフロッグの色は茶色だがその頭には金色の突起がありそれがまるで王様のように見え、クイーンフロッグの方はなぜか全身ピンク、それも蛍光色に近いピンク色の肌をしている。

 (後でムースが教えてくれたが、クイーンの肌が明るいピンクなほどオスにモテるそうだ。

 …………カエルの趣味はわからん)







 そんなカウフロッグがあふれる湿地エリアを嬉しそうに眺めていたメーサは、こちらを振り返り嬉しそうに聞いてくる。


 「ねぇ、マしゅター。本当に本当にイイの?」

 「もちろんだよ。

 さっき約束したことが守ってくれさえすれば好きにしていいよ」

 「うん!メーサ守る。約束守る!!」


 そう言うと、メーサは再び湿地エリアに目を向ける。

 いや正確には、湿地エリアにいるカウフロッグに目を向ける。


 そして―、



 「メーサ可愛がるの。イッパイイッパイ可愛がるの!!

 だから他のみんなは仲良く食べるの!!」


 メーサの髪の蛇達が一斉に鳴く。

 それを合図に、密林エリアから蛇の魔獣達が集まりカウフロッグを食べるために襲いかかる。

 毒の牙で相手を動けなくさせてから丸飲みする蛇や、一気に体を包み込むように締め殺してからゆっくりと飲み込む蛇などそれぞれのやり方で食べていく。

 蛇達がカウフロッグを殺し食べていく中、メーサはゆっくりとした足取りで湿地エリアを進んでいく。

 眷族である蛇達が嬉しそうに食事するのが嬉しくて、その表情はいつも以上の笑顔だ。




 そしてメーサの目的の前まで来たので足を止める。

 メーサの目の前にはキングカウフロッグとクイーンカウフロッグがいる。


 二匹は目の前にいるメーサを見て恐怖で動けず、ただ黙ってメーサを見つめることしかできない。


 「安心安心する。メーサ君達を食べない」


 笑顔でメーサは二匹に告げる。


 「メーサはただ君達を可愛がるだけ!」


 笑顔でそう告げるメーサ。

 その言葉を理解するだけの知恵は二匹にはないが、その笑顔を見た二匹は喰われる絶望に似たものを感じた。






 ゆっくりとメーサは手を伸ばし、キングカウフロッグの肌を撫でる。


 「ヌルヌル、少し気持ち悪い。

 でも面白い!!」


 そう言って何度もその肌の感触を味わう。


 一方撫でられているキングカウフロッグは、恐怖からメーサに触れられるだけで次々と脂汗にも似たガマ脂があふれ出る。


 しばらく撫でると、次はクイーンカウフロッグの肌を撫でる。


 「こっちもヌルヌル気持ち悪い、けど面白い!!」


 クイーンカウフロッグも触られるだけでガマ脂が次から次へと出てくる。




 そうして満足したのか、メーサは笑顔でうなずくと髪の蛇達が一斉に鳴き、その鳴き声を合図に湿地エリアにいた蛇達が一斉に元の場所に帰っていく。


 「ありがとう。メーサとっても楽しかったの!!」


 笑顔でメーサは二匹に頭を下げる。


 そして変えをあげたメーサは二匹に告げる。


 「マしゅターが言ってくれたの、君達なら怖がられても気にしなくていいって。

 傷つけたり、殺したり、食べたりしなければ好きなだけ可愛がっていいって。

 だから、また可愛がりに来るの。その日がとってもとっても楽しみなの!!」










 「えげつないことするな主は」

 「そう?俺としては効率がいい方法だと思うけど」


 メーサが自由に触れる魔獣と、食料となる魔獣の確保。

 カウフロッグ自体はスライムよりも少し高い5DPぐらいで呼びだせられる。


 「だが、毎回食料として呼び出していたら結構の出費ではないか?」

 「大丈夫。そのためにキングとクイーンも呼んだんだから」


 キングとクイーンは値段が大きさと比例して30と50DPかかったが、それでも初期投資だと思えば安いものだ。


 「彼等の特徴知ってる?」

 「出産の多さだろう」


 そうカウフロッグは一度に200から300の子供を産む。

 そして生まれた子供達はすぐ成長する。


 「だが、それは出産する回数が少ないからだろう?」


 カウフロッグは滅多に交尾をしない。

 それは交尾するために動くのがめんどくさいからだと言われている。

 そして子供の成長が早いのも、子育てが面倒で母親がすぐ育児放棄するので、早く成長しないと死んでしまうからと言われている。

 その特徴を利用する。



 「そうだね。

 でももし出産する回数が増えればどうなる?

 例えば―、


 恐怖に怯えて、無理やり種族保存の本能を刺激されたとか」


 死の危機に瀕した者は、子孫を残そうとする働きがある。

 その本能を利用する。


 他のカウフロッグ達はいない。

 残っているのは二匹だけ。

 なら恐怖にさらされた二匹がやることは決まっている。


 目をキングとクイーンに向ければ、メーサが後ろを向いて遠ざかるや否や、キングが早速クイーンの背中に覆いかぶさる。


 「……本当にえげつないな」

 「そうだね。でも俺は仲間が生きていくために今度からもこんなことしていくよ」



 そこは間違えてはいけない。

 自分にとって、仲間のために必要ならどんなことでもする。


 「わかってる。俺は主を守っていくだけだ」


 ヤードもえげつないと言ったが、その理由を知っているから咎めるような真似求めるような真似もしない。

 二人でそんな事を離していると、メーサが笑顔で駆け寄ってくる。


 「マしゅター、メーサとってもとっても楽しかったの」

 「そうか、それは良かった。

 また可愛がってあげてな」

 「うん!!」


 そう話しながら三人は湿地エリアから出て大部屋に戻っていく。




 湿地エリアではキングとクイーンの鳴き声だけが鳴り響いていた。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

評価やブックマーク、感想など頂けると嬉しいです。


日に日に増えていくブックマークの数が

私の励みとなっております。

ここで今一度感謝を述べさせていただきます。

本当にありがとうございます

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