表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/103

幕間 神々の様子 出会いと約束の神は酒に酔う

ダンジョンを見ている神々の様子です

 「ブライ、よくも僕の邪魔をしてくれたな!!」

 

 神々が住まう地のとある一角。

 古ぼけた酒場で小学生ぐらい少年が、酒場の片隅で酒を飲んでいる男に怒っていた。

 金髪で透き通るような青い瞳そして陶磁器のような白い肌、ある一定の趣味嗜好を持つ女性達にとってはまさにドストライクな容姿を持った少年。

 だが、そんな少年が酒場に平然といる以上ただの少年では無い。

 神の中でも上位に入る力を持った神、悪戯の神トリクそれが少年の正体だ。

 

 一方でトリクに怒りを向けられている方はと言えば、トリクの言葉などまるで気にせず盃に注がれた酒をチビチビと飲んでいる。

 ザンバラ髪で表情こそはよくわからないが、かろうじて見える輪郭と引き締まった口元からかなり整った顔立ちということがわかる。

 和服を着崩して着ており、そこからのぞく肌に刻まれた切傷が彼の辿ってきた闘争剣戟の人生を物語る。

 彼こそがゴブリンであるヤードに加護を与えた神、任侠の神ブライである。

 

 「邪魔?なんのことだ。

 俺はただ俺の加護を与えた奴を、活躍できそうな場所に送っただけだ」

 「それが邪魔をしたって言うんだよ!

 せっかく僕が堕ちた魔族を送って、プロジェクト開始前に人生終了って展開にしようとしたのに、台無しじゃないか!!」

 「これだからクソガキは困る。

 もう少し様子を見るってことを覚えろよ。

 そんな感じで手を出していたら、またあのつまらない時を永遠に過ごすことになるぞ」

 「いいじゃないか別に!今が面白ければそれでいいじゃん!!」

 

 自信満々にそう言い切る悪戯の神トリクに、侠客の神ブライは大きく溜息を吐く。

 

 神々は総じて自分勝手のものが多いいが、その中でも天界の三大問題児と呼ばれている神は特にその気質が強い。

 天界の三大問題児が地上に干渉すると、多大な被害が巻き起こるため、他の神々は問題児達が何かしようとしている気配を察したら、手を打つようにしている。

 そのため今回も天界三大問題児の一人、悪戯の神トリクが嬉しそうに歩いているのを見かけたブライが、何かあると感じ様子を見ていたら案の定碌でもないことをしようとしていたので、それに介入して何とか被害を最小限に納めた。

 

 「……なぁトリク、おめぇも知っているだろう。

 魔族の小僧と俺らの大神様が約束したことを、『プロジェクトに神々は過大な干渉はしない』。

 さっきのおめぇの行動はそれに該当するぜ。

 おめぇさんも大神様にお仕置きされるのはさすがにもう嫌だろう?」

 

 大神様のお仕置きと聞いてトリクの怒りが退いていく。

 悪戯はしたいが、さすがに度が過ぎすぎると次の機会が無くなると思ったのか、仕方なく今回考えた悪戯はあきらめることにする。

 

 「まぁいいや。

 今回はこんな結果だったけど、次があるからね次が」

 

 あきらめはしたが全く反省の色を見せないトリクに、ブライは再び大きなため息を吐く。

 そんなブライとトリクのやり取りに、酒場にいた他の神々が声をかける。

 

 「はっはっはっ、ブライの説教もとことん無駄に終わったなー」

 「仕方ないわよ。

 トリクに本格的に反省させることが出来る神なんて、天界にも数人しかいないんだから」

 「トリクの悪戯はいつものことだろう。

 それよりよ、他の奴らはどんな感じか教えてくれよ。

 俺はさっきまで自分の加護を持った奴が行ったダンジョンしか見てなかったから、他のダンジョンの様子知らねぇんだ」

 

 酒場だけあり酒には困ることは無かったが、酒のつまみとなるのは足りなかったのだろう、最後の神の言葉を皮切りに、それぞれの神が見ていたダンジョンについて話しだす。

 

 「私が見ていたとこはDDMが女性だったからかしら?

 とにかく部屋の内装に気を使ってたわね。

 最初の従者契約で出てきたのが、スケルトン一族のものだから悲鳴を上げてたけど、今では結構仲良く過ごしてるわね。

 彼女一緒にお風呂まで入ってるけど、あのスケルトン男って知らないのかしら?」

 「わしの所は少しつまらなくてのぅ。

 DPを無駄に使わないって言って、ずっと寝てばかりで行動を起こさないのじゃ。

 あやつはこれからどうするつもりなのか…、そう言った点では気になると言えば気になるDDMではあるのぅ」

 「俺ん所は爆笑必死だったぜ。

 従者が止めるのも聞かないで、いきなり強い魔族を万魔事典で呼び出そうとしてたから、ついついそいつの願いを叶えてやろうと、魔竜族のヒドラが出てくるように設定してやったぜ。

 そしたら、ヒドラの奴突然の召喚にパニックってよ。毒の息吐き出すは、何本もある首を振りまわすやで部屋の中が大参事よ」

 「………それでそこのDDMは無事だったのか?」

 「一応はな。

 何とかもう一度万魔事典を使って送還した後、毒のせいで体は痺れるは、部屋はボロボロで使いものにはならないわで、半ば魂が抜けた状態だぜ。

 従者が必死に声をかけてるが、まったく反応しねぇ。

 そいつのその顔本当に笑えるぜ、見てみるか?」

 

 酒場にあるモニターにそのダンジョンのあり様と魂の抜けたDDMの姿を映し出す。

 それを見て笑い転げる者もおれば、困ったような顔をする者など、神々でも反応は様々だ。

 そうして困ったような顔を浮かべていた一人の神がポツリとつぶやく。

 

 「クラウンがそれを聞いたら、まったく笑えないでしょうね。

 彼頑張ってプロジェクトの候補者調べて集めたというのに……」

 

 

 

 

 

 それからも神様方は自分が見ていたダンジョンの様子を聞きとして話し続ける。

 今までになかった試みに、神々もワクワクしているのだ。

 だがそんな神々が楽しく話している中、話に交ざらず一人カウンターで黙々と酒を飲んでいた一人の神が、ドンっと空になったグラスをカウンターに叩き付け大声で叫ぶ。

 

 「まっらく~、何なんですか、あの男どもはー!!!」

 

 すでにかなり酒が入っているのか、顔は真っ赤で呂律も回っていない。

 普段はしっかりしている彼女の知っているだけに、そんな酔いが回った姿を見て、酒場にいた神々はこそこそとささやき合う。

 

 「おい、ランデどうしたんだ?」

 「普段はあやつ酒など飲ぬじゃろう?」

 「そんな彼女が酒を浴びるほど飲むとは、よほどのことがあったのでしょう」

 

 皆何か彼女の事情を知らないかと聞き合うが、誰も彼女の事情を知る者はいない。

 本人になぜそんなに酒を飲んでいるか聞いてみるのが一番簡単なのだが、今の酔いが回った彼女に話しかけようとする神は誰もいない――。

 

 いや、一人だけいた。

 

 誰が彼女に事情を聞くか、神々が役目を押し付け合っている中を意気揚々と、笑顔でランデに近づいていく。

 

 それはもう楽しそうに。

 何か面白いことを考えているかのように。

 

 悪戯の神トリクが、新しい悪戯を思いついたような顔でランデに話しかける。

 

 

 

 「どうしたのランデさん、そんなに酒を飲んで?

 何か楽しいことでもあった?」

 

 どう見ても楽しいことがあったとは思えないのに、わざとそんな風に尋ねる。

 そう、そうすれば―、

 

 「楽しいことなんかないわよー!!」

 「そうなの?

 でも理由を知らない僕にはそれが本当か分からないよ」

 「いいわよ、にゃら話してあげる。

 ちゃんとはたしの話をききなちゃい!

 そうすれば、楽しいことなんてなかったてにゃかるわ」

 

 怒りだし、自分から怒りの原因を話しだす。

 

 

 

 

 

 それから数十分後、呂律が回らないためになかなか話が進まない彼女の話をまとめると、こうなる。

 

 従者契約で呼び出された者の中には、いきなり体を玩ばれるものや犯されるものが居たそうだ。

 中には襲いかかってきたDDMの魔の手を、頑張って防ごうとしたものもいるらしいのだが、契約のためそれも上手くいかず、みな汚されてしまったそうだ。

 

 もちろんそれらの行為で、DDMが罰を受けるようなことではない。

 クラウンがプロジェクトに誘って条件、何をしても許されるというのがあるのだから。

 

 ただ、だからと言ってその行為に納得できるとは限らない。

 

 ランデは出会いと約束の神。

 人間達には恋の神様の一人として知られている。

 そんな彼女だからこそ、このプロジェクトでの異世界人と魔族の最初の出会いがどんなものか楽しみにしていたのだ。

 

 始めて見る魔族の姿に一体どんな反応をするのか?

 驚くのか怖がるのか、それともそれらを通り過ぎて一目惚れでもするのでは?

 異種族との種族を超えた恋を想像して、一人悶えていた。

 

 「それなのに!それなのに!!」

 

 大事なことなので二回言った。

 そんな恋を想像していたのに、出合った結果が獣と変わらない欲望むき出しの行動では、酒でも飲まずにはいられなくなるというものだ。

 

 

 

 「な・ん・で男はすぐ欲望に走るんれすかー!!

 もっとちゃんと胸キュンとかして、思い出に残る出会いから愛を育んで下さいよ!!!」

 

 大声でわめき、酒を飲み、暴れ出し、暴れ疲れて休憩がてらにまた酒を飲む。

 さすがにこのまま飲み続けさせるのはまずいと、神々が止めようとするが、彼女の飲酒は止まらない。

 

 

 

 そして、そんな酔って暴れる彼女を止めるのに忙しかったせいで、酒場にいた神たちは目を離してはいけない神から目を離してしまった。

 その失敗に気づいたのは数十分後。

 

 「ジャンジャガジャーン!!

 落ち込んで、酒を飲まずにいられないランデさんに朗報です。

 夢見ていた恋の様子が見れなかったランデさんに、彼女がとってもいい言葉をあなたに伝えてくれるそうでーす」

 

 酒場の入り口を勢いよく開て入ってきたトリクが、酒場にいる全員に聞こえる大声でそう宣言する。

 トリクの声を聞き、その表情を見た酒場にいた神たち全員が嫌な予感を覚える。

 

 あの顔はなんかやるつもりだ。

 

 トリクが何かする前に止めようと動こうとするが、その前にトリクの後ろから一人の女性が酒場に入ってくる。

 長い金髪の髪を美しくなびかせ、男女関係なく見る者の全てが唾を飲み込むような色気を放つメリハリな体を持ち、それとは対照的にその表情は聖母のように穏やかな笑みを浮かべている女性。

 

 その神を見た瞬間、全員が最悪な展開がこの後待っていると理解できた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 女性は穏やかな母親の様な聖母の様な慈悲に溢れた笑顔で、ゆっくりと酒を飲んでいるランデに近づきまっすぐ彼女の目を見て告げる。

 

 「どんな出会いでもいいじゃない。

 大切なのは体で愛を語り合うことよ」

 「うっせーよ!!!

 このビッチ神が!!!!!!!」

 

 そう笑顔で告げた彼女、性交の神セクスに遠慮なしで殴りかかるランデ。

 

 出会いと約束の神であるランデにとって、一晩限りの付き合いでも、肉体だけの関係でも、金もうけのために体を売ることも全て良しの性交の神セクスは、まさに水と油と同じぐらい合わない関係なのだ。

 

 勢いよく頬を殴られ吹き飛ぶセクス。

 そして吹き飛んだセクスに、さらに追撃を仕掛けようとするランデ。

 慌てて止めに入る酒場にいる神々。

 

 混沌となった酒場の様子を見てトリクは腹を抱えて笑う。

 

 「あ~面白い。

 もっとやれ!もっとやれ!」

 

 トリクの笑い声は混沌とした酒場の喧騒にまぎれてすぐに消えていく。

 

 

 

 

 

 暇を持て余していた神々。

 どうやらその暇つぶしは、プロジェクトを始める前からかなり達成されようとしてた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オマケ

 

 「あぁ、気持ち良い。

 殴られて感じるこの快感。

 痛みが体の芯に届いて、あなたの気持ちが私の心に届きますわ!

 これも一つの体での交わりですね!!」

 「うっせーよ!!

 この変態ドMが、そんな殴られて嬉しいなら昇天するくらい殴ってやるよ!」

 

 性交の神セクス、彼女の器の広さはもしかしたら大神様より広いのではと言われている。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

評価やブックマーク、感想などいただけるとうれしいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ