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Stage7:心の声

「はいはーい!みんな揃ってるわね~?」


 保健室から戻り、教室に入って第一声。これから帰りのHRだ。担任である俺の義母親(ははおや)の号令で、クラスメート全員が起立、礼、着席。


「はい、じゃあ今日は特にいうことはありません!みんな気を付けて帰ること♪」

「「「は~い」」」


 簡単な連絡を終えて、HRが終わる。そこから5分程の休み時間を取って、委員選挙をすることになった。


「さ~て、どうするか」


 俺の立候補と引き換えに学級委員の選び方を自由にできたのは願ったり叶ったりだ。卵の特売にも十分間に合うだろう。埜村古川鷹觜の要望通りにもなった。そこまではいい。


「犬飼なぁ…」


 問題は犬飼なんだ。

 この学校の学級委員は、最低一人、最高男女2人というアバウトな決め方でいい。ただし、この学級委員という役職には、クラス内の全ての才脳者を纏めるという仕事がある。身体的、技術的、脳力的、不可能現象的に才能を持った人間たちを纏めるには、それ相応の人望と実力を持った人間である必要があるために、だれかれなれるという役職ではないのだ。

 その点、犬飼はデュエルの戦績もいいし、容姿、人望、学力ともに申し分ない。確か前回の才能測定でもレベル4を出したと聞いた。十分素質があるだろう。つまりこのまま俺が立候補したところで、俺と犬飼でペアになって仕事することになる。

 …………あぁ。わかってる。もううだうだ言っててもしょうがないよな。認めるよ。俺がというか俺達がしたいことが世間的によろしくない本来悪役のすることだって。しかも先生がそれを応援してるんだからオシマイだ。なんだコレ超申し訳ない。さっきの戦いと同じで、頭がどんよりする。

 それに、俺が委員になるだけじゃダメだ。犬飼の当選阻止にはならない。うーんどうするか。

 休み時間はあと4分。


「たかのはしー」

「んー?」

「俺と握手」

「?」

「《加速》」


 召喚した鷹觜の手を握りブレインを操作。最大レベルに加速。相談に乗ってもらう前に担任のもとへ。


「えっ、ちょっ、何しとんの」

「お前も空気化発動しろ。俺も巻き込め」

「いいけど

「埜村と古川も回収するか」

 ―――アイツら今先生のとこだぞ?

「なおよし」


 加速と空気化を使った俺達は、誰にも気付かれることなく職員室へ向かった。



  *  *  *



「あー確かにその辺話してなかったわねー」


 職員室から出てきた義母親(ははおや)と友人二人を見つけた俺は、彼らにも俺達と同じ時間の流れに来てもらい、今抱えている問題をぶっちゃけた。


「犬飼をどうやって委員から遠ざけるか、な……」

「代わりの女の子とかいないかな」

「アナタや犬飼さんと同程度のレベルの人間なんて、いないんじゃない?」

義母(かあ)さん、男二人じゃダメなの?」

「ダメね。意見が偏るわ」

「一人はOKなのに?」

「それは、そういう人間がいなかった時用なのよ。今回みたいなのが例外なだけ」

「ま、担任自ら生徒に悪さしようってんだから、そりゃ例外だよな」

「…うるさいわね。こっちにも事情があるのよ」

「へいへい…」


 頬をぷく~っと膨らませる義母親。そういう仕草や、顔の雰囲気、身長とか体格も全部含めて、お姉ちゃんと本当にそっくりだ。


「なぁ御来屋、三ノ宮は?」

「え、有栖?」

「あぁ。アイツに頼んでみるのは?」

「イヤ無理だろ。アイツだって今日初めて来たんだし、これまでも来れてないし」

「……それもいいかもしれないわね」

「は?」

「あのね大ちゃん、有栖ちゃん、実は才能測定受けてなくて…」

「知ってるよ。さっきの屋上での件もそれの絡みだって」

「そっか………ごめんね」

「……許すわけねぇだろ」

「…うん……とりあえず、あの子に測定できる範囲で才能を使わせつつ、あの娘と二人で学級委員になってほしいの…できる?」

「……やってみる」

「お願い……じゃあみんな、そろそろ戻りましょうか♪」

「「「は~い」」」



  *  *  *



 教室に戻り、有栖を探す。さっき長々と話していた気分だが、加速のおかげで30秒程しか経過していなかった。

 探す…探す……いた。なぜか俺の席で潰れている。


「おい、有栖」

「ぁ…大雅さん、おかえりです」

「……何してんの」

「いやちょっと…慣れない環境で人のぬくもりに飢えてまして」

「あぁそう…」


 席を立つ前に加速したので暖かいのかもしれない。潰れたままの有栖の、きれいな銀色の髪を撫でる。お姉ちゃんの髪質に少し劣るくらいだろうか、サラサラでとてもさわり心地がいい。そんな時だった。


「御来屋君。ちょっといいかしら」


 背後から名前を呼ばれた。有栖から手を離さず振り返ると、犬飼とその取り巻きと思われる女子が数名、何やらみな穏やかじゃない目つきで、腕を組み俺と有栖を囲むように立っていた。この異様な光景に自然とクラス中の視線が集まっているのが理解わかる。


「アナタのそれは、いったい何をしているの?」

「それ?」

「アナタの手よ!いったいどういうことなの!?」


 指さされて気付く。有栖を撫でていることを言っているのだろうけど、これが何だというのだろうか。


「そんなに馴れ馴れしく女子に触るなんて、最低よ!クラスの風紀が乱れるわ!」

「はぁ!?」


 たかがこの程度で何言ってるんだコイツ。


『そうよそうよ!』

『三ノ宮さんはようやく学校に来れたのよ!』

『何セクハラしてんのよ変態!』


 取り巻き共が口々に俺を糾弾する。って言うか変態て。

 取り巻きの一人が俺の手を取り、思いっきり捻り上げる。その間にほかの取り巻き達が有栖を俺の席から立たせ、俺から引きはがしていた。


『大丈夫三ノ宮さん?』

『ほかにも何か酷いことされてない!?』

『あの変態は私たちが責任もって先生に引き渡しておくからね』

「えっちょっ、えぇぇ……!?」


 いきなり知らない奴らに囲まれて見当違いのことを矢継ぎ早に質問されているせいで、有栖は緊張してうまく話せないでいる。それを怖かったからと思ったのか取り巻き共はさらにいらん心配をし、それにさらに有栖がテンパるという悪循環が発生していた。


「…おいおい、クラスメートへの態度がなってないんじゃないか?」

「そうかしら。学級委員として当たり前のことをしているまでよ?」

「学級委員だぁ?まだ決まってないだろが」

「もう決まったようなものよ。この私以外に、このクラスを治めるのにふさわしい人間なんていないもの」

「治めるねぇ…。ハッ、笑わせんじゃねえよ。クラスメートに適切な対応もとれないような奴に統治できる場所なんざあるワケねぇだろ」

「面白いコト言うわね。でも残念ね。少なくとも変態に対しての対応を間違えた覚えはないわ」

「エラく視野が狭いじゃないの犬飼さんよ。お前は自分のペットの面倒も見れないのか?」

「……何が言いたいの」

「てめーの取り巻き、有栖を守ってるようには見えないんだがなぁ?」

「…!」


 初めて犬飼が有栖の方を見る。俺を押さえている奴を除き、残りの全ての奴が有栖の周りに張り付き皆口々に『心配』の言葉をかけていた。有栖の周りを囲むように。あの時と同じように。揃って似たような、『心配するフリ』の言葉を。


 そろそろくるな。サン、二、イチ



「ふっっざけるなぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」



 ゼロ。有栖の憎悪に満ちた叫びとともに取り巻き全員が吹き飛んだ。


「だいじょうぶ…?ずいぶん軽く言ってくれますね……。誰も助けてくれなかったくせに…!私を!お前らが!消したくせに!」

「さ、三ノ宮さん……!?」

「何ですか誰ですか偉そうに人の名前を馴れ馴れしく呼ぶなんてよほど常識を弁えてない下等な教育を受けてきたんですねクズが死んでください」

「……!!?」

「あぁもうここいる奴らは知能が猿並みのようですね動物園に帰ったらいかがでしょうお仲間が待ってますよ?大体なんですかいきなり来て会話に割り込んでくるなんてお前らの親はよほど常識を持っていなったようですね子は親の鏡とは言いますがあなた方を見れば育ちが知れるってもんです」

『な、何よその言い方!』

『そうよ!私たちはあなたを心配して!』

「誰ですかアナタ達。最初に名前も名乗れないようなモブに心配されるなんてありがたいと思う人間がいると思いますか?もしいらっしゃるのでしたら頭の精密検査をお勧めしますが。今日登校してから1日話しかけもせず昼休みにはシカト決め込んでおいて『心配』ですか。ずいぶん都合のいい頭をお持ちですね。今日1日だけじゃない、今までの5年間、今年度が始まってからの1週間、誰一人としてその世間一般に言う心配ととれるような行動を私相手にとってなかったように思えますが」

『『『………ッ、』』』

「おーい、有栖」

「あぁ大雅さん、すいませんまたやらかしてしまったみたいですとりあえずだきしめてください」

「ちょ、ちょっと何言ってるのよ!」

「またあなたですか。先程私があなたにわざわざ常識の一端を教えてあげたというのにもう忘れてしまったようですね」

「~~~ッ……三ノ宮さん、あなたずいぶんな口のきき方じゃない?」

「相手のレベルに合わせてあげたのですが一向に感謝状が届きませんね」

「ふざけないで!」

「ふざけてんのはおめーだよ犬飼。お前の取り巻き連中が有栖をここまで怒らせたんだろ?関わらなくてもいいことに首突っ込んで、管理不行き届きで余計に騒ぎを大きくしたのはお前じゃねーってのか?」

「学級委員って、サルでもなれるんですね。もういいです。不愉快なので消えてもらいましょう『つっちー』」

『なーによ。こんなところでするの?ま、有栖の怨みは相変わらず素敵ねぇ……♪今なら『麒麟』も出せちゃいそう♪』

「いいですね。こいつら全員消してしまいましょう。きり―――――」

「はいストーップ」


 まるで子供をたしなめるかのような声色とともに繰り出された担任の蹴りが、有栖の顔の寸での位置で止まっていた。


「有栖ちゃん?ちょーっとやりすぎかな?」

「…ぁ………はい」

「犬飼さんも、気が早すぎるわ。ちゃんと手順ってものを踏まないとダメよ?」

「は、はい…」

「大雅、よく動かなかったわね。偉いわ流石私の子供!よしよし♪」


 いきなり笑顔で抱きしめられ姉との遺伝を感じさせる超大玉ビックバンに顔をうずめるのを強いられる。身長は俺のが高いが、角度的にどうしてもこうなるのだ。


「血はつながってないんだけどね…(もごもご)」

「いいのよそういうのは♪私が育てた私の子だもんっ♪」

「……ぅん」


 教室内の空気がある程度凍結したところで、俺はようやく解放された。結構長い間抱きしめられていたように感じるのは多分気のせいじゃないと思う。暖かくて優しい甘い匂いがしてやわらかかったのでちょっと眠くなってしまった。


「さあて、さっきの騒動の一部始終は知ってるわ。犬飼さん、あなたが原因よ」

「どうしてですか!私は!」

「アナタが悪いわけじゃないわ。一番悪いのは大雅よ。被害者は有栖ちゃん。でも、そうなる原因を作ってしまったのは、犬養さん、アナタよ」

「……ぅ」

「とりあえず、今からあなた達3人は私の言う事に従いなさい。これだけの騒ぎを起こしておいて、ごめんなさいじゃ済まさないわよ?」

「今からって、具体的に何をするんですか?」

「さっきも言ったわ。学級委員を決めるのよ。あなたはさっき自分で言ったとおり、このクラスの学級委員にふさわしい人間よ。それこそ、有栖ちゃんや大雅よりずっとね。でもあなた達はさっき『ケンカ』をしたわね。ケンカって言うのは、するときに互いの立場は等しい物なの。最初は確かに違ったわよ?大雅が有栖ちゃんにあんまりよくないことをして、犬飼さんが注意したわね」

「…はい」

「でもあなたが自分のお友達を把握しきれなかったことで、あなたの絶対的な正当性にヒビが入った。それによって大雅に反論の余地を与え、有栖ちゃんはあなたのお友達の被害者としてあなたに直接文句を言える立場になった。ここまで来たら、これはもうケンカよ。学級委員にふさわしい人間の居る立場と同じ位置にあと二人いるの。なら、その二人もあなたと同じ立場と私は判断するわ」

「そんな!」


 そうきやがったかおかあさま…。


「ま、どうせケンカするなら、認められた方法でやりなさい。そうしたら他人に迷惑はかけないから」


 そう言うと俺たち全員を席につかせ、黒板に何かを書き始める。


  『学級委員戦挙』


 でかでかとそれを書くと、教員用のブレインを操作し始めた。数秒の後顔を上げると、クラス全員にこう告げた。


「このクラスの学級委員は、御来屋、三ノ宮、犬飼の3人の中からギフトデュエルで決めるわ」

誤字脱字感想ポイント待ってるのに来ないんだぜ。

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