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11日 バスがあります。

 バスがあります。初めは5人乗っていました。

 バス停で2人降りて4人乗りました。

 次のバス停で、6人降りて7人乗りました。

 さらに次のバス停で全員降りて2人乗りました。

 さらにさらに次のバス停では、2人降りて1人乗りました。

 文章題っぽくするとめんどくさっ。

 こんな長ったらしい文章題無い? 無いか。

 今日はバスに乗っていますー。いつコウチ家の人間と離れすぎて引っ張り戻されるかっていう、待ってるしかないじわじわなスリルが楽しいねん。結構範囲広いみたいやけど。

 ほんでな、バスの一番後ろに座って人が乗ったり下りたりするの見てたわけよ。そしたら、ふいと午前に見に行った小学生の授業でちょうどやってた、バスの問題思い出したわけよ。

 はい、今、バスには人間が何人乗っているでしょう。

 正解は一人です。でやぁ。レイちゃんできたでどやぁ。スイマセン調子乗りました。

 今、バスに乗ってるのは女子高生が一人。あれ、どっかで見たような……トーカの友達かな? 制服的に。ショートボブで、ずっとスマホをいじっている現代風な彼女です。背後来てみました。だってだって、あまりにも動き無いねんもん! つまらんやん! ただの暇人みたいなことになってまうやんか! いやまあ、暇人っちゃ暇人だけども。やらなあかんことは何一つとして無いけども。

 例の女子高生は、うちが後ろに居てもずぅっとスマホいじりっぱなしです。反応無いです。そらそうか。

 誰と話してんねやろー。

 …………見ていいかしら。何やめっちゃ気になってきた。

 えぇよな、別に見て誰かに言うわけでも無いし!

 ちら。

 ひょい。

 ……ひょい?

 ちら。

 スッ。

 ……あら?

 ちら。

 そっ。

 ちら。

 さっ。

 ……あらら?

 これは……ひょっとして、見ようとしてるの、バレてる感じか?

 断固として振り返らないあたり、なかなか慣れてる感というか、いや、むしろ生きた人間扱いでもされてる感じが。あれやんね、振り返って目あったらどうしよーって奴やんね。

 ……ふむ。

「てい」

 女子高生の座席を蹴ってみた。……お、おぉ、反応せん。何やねん、つまらんなぁ。

「てい、てい、てい」

「てい」という声と共に蹴っています。何やねん。こっちには反応せんのかい。

 しつこく蹴り続けたところ、女子高生はやっとうちの方を振り向いてくれはりました! やっとか! 長かった! ありがとう振り向いてくれて! って何か違うような。いや、あってるよな。

 しかしそれも一瞬のことで、あっという間に元の体制に戻ってしまいました。

 なんか、めっちゃ微妙な顔されてんけど。

 せやな、セリフ付けるとしたら『あ……見ちゃダメな物見ちゃった』的な。

「間もなくー……」

 あ、運転手さんの声。

 女子高生は『とまります』のピンポンを押して、停車してドアが開くや否や大慌てで出て行かはりました。支払いは、なんか『ピッ』ってやるアレ。

「こら少年。前の席を蹴っちゃいかん」

「いや、少年ちゃうけどな、うち」

 そんな短い会話の後、バスは0人の人間を乗っけて発車。

 バスに、初めは5人乗っていました。

 バス停で2人降りて4人乗りました。

 次のバス停で、6人降りて7人乗りました。

 さらに次のバス停で全員降りて2人乗りました。

 さらにさらに次のバス停では、2人降りて1人乗りました。

 さらにさらにさらに次のバス停では、1人降りて誰も乗りませんでした。

 今、バスには人間が何人乗っているでしょう。

 答えは1人。運転手さんがいるから。

 さあ、ここで問題です。

 どうして、あの女子高生が乗っていた時の答えには運転手さんがカウントされていなかったのでしょうか?

 あ、バスが急に遠くなって行くー。耳元でぎゅんぎゅん風がうなって、ハイ、コウチ家へお帰りなさい。今の問題の答えは自分で考えて。うち怖いの好きくないねん。ちょ、だれか居らんのーっ!?

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