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6日 作ってみよう、暇つぶしと薔薇

「ぎゃぁあああああああああああ!」

 どーも、レイです。高く高く昇ったとこから急降下中。ひゃっほー!

 なんかね、どうもね、幽霊になって早々発見したことなんやけどもね、どうもうち、行動範囲限定されてるらしいんよ。

 で、それを無視って旅に出ようとしたら、モーレツな勢いで引き戻されてしまうって言う。

 酷ない? 酷いよな?

 ……でもな、これ、引き戻されんの結構楽しいねん。猛スピードで景色過ぎ去って行くんやで。しかもや、幽霊やからその辺の家とか施設とかもするっとすり抜けられんねん。上に昇ってったら、地面に向かって急降下やし。

 しかも!

 何が良いって、地面に叩きつけられてもあんま痛ないねん!

 多少感じる衝撃が、これまたくせになってやな……あれ? なんかうち、おっさん臭ない? 衝撃ってマッサージですか?

「あれ⁉ アイスは?」

 んぉっ?

「もう無かったけど」

 ちなみにうちの視界に入ってるのはテーブルの裏側のみです。家の中に落ちました。

 よいしょ、とテーブル突き抜けて起き上がってみたら、見知った顔がありました。うちがこんな口調やのに周りが標準語なのは、何を隠そう彼女等に付いて来たからなのです。

 ……うん、分からんな。まあ、要するに、うちは目の前でそれぞれの行動をしている姉妹の家族と共に、関西圏からこの地へとお引越ししたんです。

 最初はな、軽い気持ちやったんよ。たまたま引っ越しトラック見かけて、どんな家族かなー、どこ行くんかなーって、興味本位で憑りついて一緒に来ただけなんよ。でもな……そしたら、この一家から一定以上の距離離れられん事になっちゃった。

 …………アホやろ。笑わば笑え!

 …………やっぱ笑うな! 何かムカつくわ。ほんで軽く傷つくわ。

「……うぉっ⁉ トーカちゃん、お帰り!」

「ただいまー。って、さっきアタシの声に反応したよな?」

「エイかと思ったー……」

 この姉妹の下にもう一人弟が居て、このお家は三人兄弟。皆声が似てるのが微笑ましいようなややこしいような面白いような。えぇよなー、こういう、兄弟似てる感じのヤツ。

 名前は上から、トーカ、カエ、エイト。しりとりやんね、絶対コレしりとりやんね。しかも綺麗に一周してるっていうな。考えたなご両親。

 長女のトーカは高校二年。今日も授業参観的な感じでちょっと見かけた。

「……何しよ。暇だなー」

 なんでやねん。宿題とか出てたやん。

 後な、何かな、方言がちょい抜けて来てるのがちょっとレイちゃん寂しいなぁ。

 指先ツンツンしてる間に、トーカは何かを思いついたらしい。ネットも使える音楽機器を取り出して、ちゃちゃっと何かを呼び出して打ち込んで……で、今度は二階に上がって机についていたワゴンの中を漁る。

 ……ぅん? 探しモンか?

 トーカが取り出しましたる物は! ……折り紙でした。

 ちょー待て。なんで暇やからって現役女子高生が折り紙出してくんねん。小学生か。幼稚園児か。

 パラパラとめくって一枚を取り出し、折り紙のサイト(だと思う)を見ながら熱心に折り折り。……ぼっちの幼稚園児か!

 上半身だけ床突き抜けて見たら、次女のカエ(中学生)はちゃんとお勉強中。いや、美術やけども。宿題と思われる、大きな画用紙に絵の具で塗り塗り中。ほら! やってる事はともかく、妹の方が真面目やぞ!

 上半身(というか頭)だけを天井からぴょっこり出して、一階をずりずり移動。お、長男で末っ子のエイト発見。

 …………あんな、まだお外明るいねん。

 別に雨降ってへんねん。曇ってるけども。

 なんで男子の小学四年生がお家であやとりしてんのん!? お外行こうや小学生! 子ども! 鬼ごっことかボール遊びとかして来ぃや!

 ほんで、何気あやとりのレベル高いしな。速いしな。の○太くんか! ひょっとして射的も得意なんちゃうお前!

 田んぼ、川、また田んぼ、馬の目、つづみ、船……一人あやとりか。懐かしなー。

 ……何で長男長女そろって昔の遊びやねん。カエも宿題終わった途端お手玉始めるんちゃうやろな。

 …………念の為確認。まだ宿題中やった。

 エイトの場所に戻って来たら、手に持ってる者があやとりからゲーム機になってた。……う、うーん。現代っ子っぽいけども。何やってんのやろ。

 あれ。

 あれれ?

 まさかの謎ゲー? しかも何コレなんか難易度高そう。そして明らかに小学生向けでは無さげ。ソフトのケースを見たらCって書いてある。……ってことは……対象年齢15歳以上、やんね。

 一緒に問題を見てみた。分かれへんかった。頑張れ、エイト。うちお手上げやわ。

 ぐっと体を持ち上げて、二階で立ち上がる。……んぉ? ベランダやん。結構移動したなぁ。トーカはどうなったんかな、戻ってみよか。 

 ガラスの窓をすり抜けてカエの部屋を過ぎて、トーカの部屋。

 まだ手ぇ動いてる。何か、いっぱい折り目の付いた折り紙を抓んで、グッと真ん中に向かって力を入れると……真ん中を中心にしてクルクル丸まった。何作ってんのや、コレ。

 トーカのベットでゴロゴロすること数分。ようやくその手が折り紙を離した。

 薔薇や。薔薇がトーカの机で咲いとる。めっちゃリアルやん! どうなったらこうなんの!?

 トーカも満足いく出来らしく、写真撮ったりとかしてる。無料でメールやらなんやら出来るアプリを開いて何か打ち込んでる。

『暇がこじれてこうなったw』

 ……ああ、こじれが紙に現れて薔薇ですか? ねじってるって言うのかはともかく、巻いてたもんな。

「よし」

 満足! かな?

「も一個作ろ」

 暇人か!

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