9日 仲良し母子の勝負。
…………おお、おおお。みごっとに逸れよったな、台風。
「ママ、今日は『けーほー』こない!」
うん、警報から来ることってないよな。警報出されるもんやもんな。
「台風がこない、ね。警報は『出てない』っていうの」
おお、ママさん、ちゃんとそこんところ指摘しはるんや。
団地の一角。ここの女の子かわえぇねん。カヤちゃんって言うねんけどな、髪も柔らかそうで、ほっぺとかぷにぷにそうで。いや、いっかいも触った事無いけど。あと声がかわえぇねん。つまり、総合してかわえぇねん!
「幼稚園行けるぅ!」
「はいはい、行けるからご飯食べようね」
まだ食べてへんかったんかい。もうカヤちゃん準備万端やで? 黄色い鞄下げて紺の帽子かぶって。制服までバッチリやん。完璧やん!
あ、でも、いそいそと椅子に上る姿はめっちゃ可愛い。やっぱお腹は空いててんな。晴れるための願掛けでもしてたんかな。「準備してんから晴れといて!」みたく。幼稚園行かせろオーラや。オーラ。
「こーら、帽子と鞄取んの。幼稚園は逃げないよ」
「早くいきたいの!」
「なら、早くご飯食べなきゃね。帽子と鞄はご飯食べるのに邪魔だから、そっちに置こう?」
「邪魔じゃないもん」
いや、めっちゃ目のあたりまで帽子ずって来てるやん。ゴム緩いんか。緩いんやな。
「ほら、見えないでしょ? 鞄持ってたら腕も動かしにくいでしょ。だから、横に置いとくの」
むーって顔も可愛いで! あれ、うち可愛いしか言ってない気がする。
「……ゴム付け替えなきゃ……」
うぉい。ママさん、独り言聞こえてんで。単純に付け替えるの忘れてただけかいな、あれは。
「いただきます!」
「はい、召し上がれ」
うわすごい笑顔。ごまかし笑いか! ひょっとしてごまかそうとしてんのか! 独り言言うてる時との違い半端ないぞ! ママさん意外と演技派やな。
「落ち着いて食べなきゃ服にかかっちゃうよ。染みつきのお洋服で幼稚園行くんですか~」
「早く生きたいもぉん」
「ママが食べ終わらなかったら行けないでしょ」
「早く食べて!」
「やだー。ママは味わって食べたいのー」
マイペースか。お母さんも結構可愛ないか。なぁ。カエちゃん。
「それにね、今行ってもまだだぁれも来てないわよ。独りになっちゃうよ? 嫌でしょ?」
「……いやー」
「だから、お昼ごはんまでにいっぱい遊べるように、朝ごはんをいっぱい食べなきゃ。良くかんだら元気が出るからね。いっぱい、良くかんで、食べてね」
「はーい」
……ママさんの謎のこなれてる感やろ。え、なに、保母さん? 幼稚園の先生? それともあれか、独学で、カヤちゃんが素直なだけなんか。
「マーマ、ご飯のときは、テレビ見ちゃダメなんだよ!」
「……時間がないから」
おー、カヤちゃんも押し始めた。
「知らなきゃいけないことを知るために、必要なのよ」
おおおお、大人の言い訳来た。
「テレビ食べながらご飯食べちゃだめって、ママ言ったもん!」
「それは言ってないかなー」
うん、テレビ食べながらーはないな。とても食べれへんな。
「えっ、と、見ながら食べちゃダメなの!」
「そうね。ごめんなさい」
おお。プチンてテレビの電源切らはった。カヤちゃん一本取り返したぞー! 満足そうやな! そんなところもかわえぇで!




