プロローグ
読書大好き、の私が初めて書く側から小説に向き合うことになりました。
アイデアで、(これは駄目だろ)と思えるようなものがありましたら、
ご指摘をお願いします。
ただし、中傷的、抽象的なものはやめて下さい。
人は戦争、争いを繰り返してきた。
それは、人類誕生から八百万年たった現代にも続いていることだった。
約百年前、人類は南北に分かれて大規模な戦争を始めた。この戦争により、大量の血が地面に流れた。
今は停戦しているが、十年前ぐらいまでは続いていたのだ。
最後のほうでは人工生命体も戦線に配属されたのだが、人口の減少が著しく、結局は停戦になっているのだ。
この均衡はいつ解けるか分からないので、現在でも人工生命体の研究は進められている。そして、戦場へ送り出す兵士たちの育成にも力を入れていた。
『大和学園』――日本で最初にできた国立の魔法教育機関である。
日本国籍を持つ者にしか、その門を潜ることを許さない日本人による日本人のための学校である。
中高一貫校であるが、有名な魔導師の推薦により試験を受け、合格できたら途中から入学できる制度もある。
しかし、「魔導師の推薦もらってるんだから、凄腕なんだよね?」という学園長の憶測で、試験をするので合格できるものは、皆無だった。
街中で、その胸を張って誇れる制服を着ているにもかかわらず、なるべく目立たない様に、人の少ない道を歩く男子生徒がいた。しかし、彼の思いが天に届くとは限らない。人目を気にして視線をあらゆる方向にさまよわせていると、人が避ける円の中心で少女がナンパされていたのだ。一般校の女生徒と見受けられる被害者は確かに女性らしい可愛らしさを持っている。さぞ、おモテになるのだろう。
一方で迷惑な野郎は男子生徒と比べ物にならないぐらい筋骨隆々でむさ苦しい。チラチラと周囲を横目で威嚇する様は蛙を睨むヘビである。そのせいで、姫を助ける英雄が出てこない状況であった。
それを確認すると、男子生徒は心の中でため息をつきながらもナンパ男に声をかけた。
「あの、大変無礼を承知で言わせてもらいますと、モテないからって強引にいくと悪循環なのは明白でしょうに。いいセラピストを知ってるので紹介しましょうか?」
男子生徒の言葉にもちろん、男はキレた。丁寧口調が煽られてるように感じ、男の逆鱗を刺激したようだ。
「お前、誰に向かって口きいとるんじゃ!」
そう言いつつ男はその男子生徒に掴みかかってきた。その動きはさながらアメフトのタックルである。
(当たる!)そこにいた数人がほとんど全員がそう思ったが、逆に吹っ飛んだのは男のほうだった。
宙を舞った後、男はすぐさま地面に叩きつけられた。既にのびた男を見て、男子生徒ともう1人以外は驚愕をその顔に貼り付けてしまった。
制服から察するに大和学園の生徒であるその少年は当然のように立っていて、周囲はそれを異様だと騒ぐ能力すら持ち合わせていない。ただ一人平然と立っている。
その静かな空間を一つのシャッター音が動かした。
大声に釣られた野次馬達は正気を取り戻し、路地には状況に相応しい騒がしさが取り戻される。警察を呼ぶ声、医療機関への電話、少女を心配する声。そしてそれらよりも大きな、男子生徒を称賛する声で満ち満ちている。
彼は照れるというよりは寧ろ、迷惑と言いたげな面持ちをしている。輪の中心に居ては登校出来ないから当然と言えば当然だ。祝福はありがたい。しかし、時間を奪われて遅刻しそうな現状を喜んでも居られない。加えて言うと、人通りの少ない道を選んだにも関わらず無駄に目立ち、この道の利用者が増えかねないことも彼のストレスとなっている。
眉間の皺が深まる彼に少女も声をかけられずにいた。
声をかけようか、はたまた今はよした方がいいのか。いやしかし、接点などないのだから今を逃せばお礼も言えぬ。
これまた眉間に皺をよせる少女の横を別なる女学生が通りすぎた。大和学園の制服を纏ったその右肩には旧時代のカメラがぶら下げれており、学生鞄らしいものは見当たらない。
「早くしないと遅刻するから」
彼女は思慮に更けている彼の手引いて、もう片方の手で作った魔方陣の上にのせた。
「ほら、ボサっとしないで。走れ走れ」
力一杯手を引かれた彼は目を前に向け、少女の作る陣の上を走って行ってしまう。
直に警察が来たので、その場の収拾は早くついた。事情聴取に時間を奪われて余熱も冷めきっていた。
遅めの登校の途中、女生徒は空を見上げてみた。助けてくれた者が去った方角を向くと、ただ咲き乱れる桜が揺れているだけである。