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光→僕

 久しぶりの睡眠をしたからか体が幾分か軽いが、僕の現状を考えるとその疲れも戻ってくる気がした。

 出来れば多く眠りたところだが、できる限り遠くに逃げたいのだから仕方がない。



 深夜になり、表通りも光がいくらか消えているがそれでも喧騒は絶えない。

 この都市に移ってから少ししかたってなく住人の行動にはまだ理解しがたい部分があるが、ここには一切の休みがないということは理解せざるをえなかった。



 歩きながら彼女のことを考えと自然と小さくため息が出た。美しい薔薇には刺があるというけれど、巧妙に刺を隠すなんてのは卑怯なんじゃないだろうか。あれではにゃんにゃとやらも逃げ出すだろう。



 ふと僕を呼びかける声が聞こえたので振り向くと、呼び込みをしているはずのカフェの店長だった。椅子に座りコーヒーを飲んでいる姿を見る限りではいつもの休憩というやつだろう。一度仕事をしているのか聞いたところ、聞くなと言われたことがある。


 「相変わらず徘徊してるのか?」

 「ええと、まあ、そうですね。」


 彼はこの都市に来てからよく声をかけてくれる人だ。前に画材を落としていたときに思わず声をかけてから顔を合わせれば話すようになった。


 「今日も絵を描いているんですか?」

 そう聞くと、まあね、と言ってカップの底を見せてくれた。少し残ったコーヒーが、そこに薔薇を描いていた。


 「触れるときは刺に気をつけないと聞けないよ。」

 「すでに傷が出来てしまいました。」

 「どちらに?」

 そう言うと、店長は店に入っていった。残されたカップの底は猫が描かれていた。





 逃げなきゃ。彼女がまた歩きだした。ここは明るい。

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