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[連載版] ダンジョン最速配達員 〜冒険者ギルドを追放された俺、最短ルート検索スキルで伝説の運び屋になる。〜  作者: 白昼夢


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3/5

第3話:拾った相棒は、伝説のドラゴンでした




 卵から現れたのは、小さな、あまりにも小さな生き物だった。



「キュイ……」



 泥にまみれた黒い鱗。

 宝石のような、黄金色の瞳。

 背中には、まだ開いたばかりの頼りない羽が二枚。



 それは、どう見ても『ドラゴン』の幼体だった。


 俺は唖然として、その小さな命を手のひらに乗せた。



「……ドラゴン? なんでこんなダンジョンの四層に……」



 だが、そんな疑問よりも先に、俺の心に不思議な感情が湧き上がってきた。

 それは、かつて自分自身に感じていたものと同じ、強く、深い孤独の気配。



「お前も……独りだったのか」



 俺がそう呟くと、黒い小さな生き物は俺の指に小さくすり寄ってきた。

 その温かさが、冷え切った俺の心に染み渡る。



 これが、俺の相棒。



 名前は、その小さな鳴き声から『ピック』と呼ぶことに決めた。

 だが、感慨に浸っている場合ではなかった。

 



『警告:近隣に大型モンスターの気配。回避ルートを再検索……』



 スキルが激しく警告を鳴らす。


 卵を割った時の魔力の波紋が、周囲のモンスターを呼び寄せてしまったらしい。

 俺は迷わずピックを胸元のポケットに押し込んだ。



「行くぞ、ピック! 振り落とされるなよ!」



「キュイッ!」



 帰り道は、地獄だった。

 拾ったばかりの小さな相棒を守りながら、ボロボロになった身体で第四層を駆け抜ける。

 スキルが示す「最短ルート」は、前よりもさらに厳しく、危険な道を選んでいた。



 ――いや、違う。



(……これは、ピックが選ばせているのか?)



 走っている最中、不思議な感覚があった。

 スキルが道を示すよりもわずかに早く、ピックが俺の胸元で小さく鳴くと、視界の黄金ラインがそちらへと吸い寄せられるのだ。

 

 それは、まるで世界そのものが俺の味方をしているかのような、不思議な一体感だった。

 死に物狂いでダンジョンを駆け上がり、王都の門へたどり着いたのは、夜も更けた頃。

 ギルドの裏口の扉を叩くと、バルドさんが驚いた顔で出迎えた。



「おいおい、帰ってきちまったのか! お前、第四層まで行ってたんじゃ……そのボロボロ具合はどうした」



「……色々あって、相棒を拾いました」



 俺は胸のポケットから、小さく顔を出したピックを見せた。

 バルドさんはそれを見て、目を剥き、そして大笑いした。



「はっ! ドラゴンか! しかも星竜種じゃねえか……とんでもねえもん連れてきやがったな!」



 その言葉の意味を理解する間もなく、俺はそのまま力尽きて、ギルドの倉庫の床に倒れ込んだ。




 翌朝。


 俺が目覚めると、ギルドの中は奇妙な静けさに包まれていた。

 倉庫の扉を開けると、そこには昨日会った依頼主のパーティや、数人の冒険者たちが、バルドさんを囲んで何やら話している。



「……本当か? あの新人が、第四層から単独で戻ってきたんだって?」



「しかも、ドラゴンを連れて?」



 俺の姿を見つけると、ざわめきが広がった。

 以前の俺なら、その視線に怯えていただろう。

 だが、今は違う。

 肩の上で、ピックが小さく「キュイ!」と鳴き、俺を鼓舞してくれる。

 依頼主だった魔術師の男が、俺の元へ歩み寄ってきた。

 彼は俺の手を強く握り、深々と頭を下げた。



「君のおかげで、仲間は助かった。……君は『お荷物』なんかじゃない。最高の配達員だ」



 周囲の冒険者たちからも、驚きと、そして微かな「敬意」の混じった視線が向けられる。

 俺の名前が、ようやくギルドの端っこに刻まれた気がした。



「……ありがとうございます」



 その時、俺の視界の隅で、スキルがまた黄金色に輝き出した。


 新たな依頼。


 しかも、今度はギルドの掲示板には載っていない、バルドさんから直々に渡された「特急便」だ。



 目的地は……ダンジョン第五層。

 しかも、配送物は「未鑑定の魔導遺物」



「行くか、ピック」



 俺は荷袋を背負い直す。

 冒険者になれなかった俺の、最短ルート。

 その先には、まだ誰も見たことのない景色が広がっているはずだ。

 俺は胸を張って、ダンジョンへと続く門を潜った。

 今度は、誰かに追い抜かれる側じゃない。

 誰も追いつけない、最速の配達員として。





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