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第3話 初めての試練


村を出てから数日が経った。

森の小道は密集した樹々で覆われ、

日差しはほとんど届かない。


カイル・ヴェルグレンは剣を握り、足元の

枯れ葉や小枝に気を配りながら歩いた。

恐怖は完全には消えていない。


「気をつけて、カイル」

ライナ・セリスの声が森に響く。

銀色の髪がわずかに揺れ、青い瞳が

暗闇の奥を鋭く見据えている。


「わかってる」

少年は短く答え、再び剣を握り直す。

あの魔獣を倒した経験はあるが、まだ自信は

持てなかった。偶然の産物に過ぎないのだ。


森を進むうちに、足元の地面が急に柔らかく

沈み込む場所に出くわす。

「沼地だ……!」

ライナが警告する。水深はまだ浅いが、

一歩誤れば泥に沈む危険がある。


カイルは慎重に足を運ぶ。剣を前に構え、

障害物を押しのけながら進む。

心臓は早鐘のように打ち、呼吸が荒くなる。


突然、木々の間から黒い影が飛び出した。

「魔獣だ!」

カイルは剣を振り、反射的に盾となる枝を押しのける。

ライナは掌から光を放ち、火球を飛ばす。


魔獣は体長三メートルほど。体は鱗で覆われ、

口から吐く息は熱を帯びている。

「左側から!私が囮になる」

ライナの指示に、カイルは素早く動き、

魔獣の死角から斬撃を放つ。


鱗に弾かれながらも、一瞬の隙を見逃さず、

剣は深く魔獣の腹を貫いた。

魔獣は激しく咆哮し、後退する。

カイルの心臓は破れんばかりに高鳴った。


戦闘が一段落すると、二人は森の奥に足を進めた。

「油断は禁物よ」

ライナの声は冷静だが、確かな緊張感が宿っていた。

カイルは深く頷く。これから何が待ち受けているのか、

想像もつかない。


夜、二人は焚き火を囲んで休息した。

火の揺らめきが二人の影を森に映す。

「カイル、今日はどう感じた?」

ライナが問いかける。


「恐怖もあった。でも……戦えた」

少年は小さく笑みを浮かべる。自分の成長を、

初めて実感できた瞬間だった。


ライナは微笑む。「少しずつ、自分を信じられる

ようになってきたわね」

その言葉は、少年の胸に深く染み渡る。


翌日、さらに森の奥に進むと、巨大な影が現れた。

体長は前回の魔獣の倍以上。黒い鱗は光を反射し、

鋭い牙と爪が不気味に光る。


「やるしかない……!」

カイルは叫び、剣を構える。

恐怖と絶望が押し寄せるが、闘志もまた燃え上がる。

初めての本格的な試練だ。


ライナは冷静に魔法を詠唱し、火球や氷の刃を作る。

魔獣の視線を自分に集め、カイルの攻撃の隙を

作り出す。戦術を理解し、瞬時に判断する力。


カイルは呼吸を整え、剣を振るう。

一度は弾かれるが、再び隙を見つけて斬撃を貫く。

魔獣は呻き、後退する。

少年の心は恐怖と喜びで震えた。


戦闘後、二人は息を切らしながらも、

笑みを交わす。初めて共に戦った戦友としての喜びだ。

「あなたとなら、やっていけそうだ」

カイルは真剣な眼差しでライナを見つめる。


「私もよ、カイル」

ライナの瞳には優しさと決意が混じる。

森の奥深く、二人の絆は少しずつ深まっていった。


その後も、二人は試練を乗り越えながら進む。

毒草の沼地、落とし穴、潜む魔獣――

何度も危険に直面し、互いを支え合いながら歩む。


カイルは思う。力だけでは駄目だ。

知恵も、判断も、仲間も必要だ。

そして、恐怖に打ち勝つ心がなければ、

この世界では生き残れない。


試練を乗り越えるたび、少年の心は少しずつ

強くなる。剣の握りも、魔法の見方も

以前とは比べ物にならないほど変わった。


森を抜けるころ、夜空には満天の星が輝く。

カイルは小さく呟く。「俺、少しずつ変わってる……」

ライナは隣で微笑む。

「そう、だから私たちは戦い続けるのよ」


初めての試練は終わった。しかし、旅の本当の

困難はこれからだ。運命の歯車はすでに動き出している。


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