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ミウとリウと曼殊沙華  作者: 矢間カオル


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57話最終話 ミウとリウと曼殊沙華

僕は今、アッシュリンド王国に戻り、バルケル伯爵領に向かっている馬車の中にいる。


十日前、ディシュバンさんにセルデの港に連れて行って欲しいと頼んだら、快く僕の願いを聞き入れてくれた。ディシュバンさんは本当に優しくて親切な人だ。

波が静まる時間を見計らって僕を船に乗せてくれて、港まで送ってくれたんだ。


ディシュバンさんは宿に泊まって、翌日に島に帰ったんだけど、イーステア王国の漁師は、たまに、こういうことをしているのだと言った。


おそらく賢者様と酒を酌み交わしたのは、ディシュバンさんのお父さんだろうって言ってた。


僕は港に着くとすぐに馬車を雇って、次の宿場町まで移動した。

そして馬車を乗り継ぎ乗り継ぎ、今に至る。


ああ、もうすぐバルケル伯爵領だ。

父上には会いたくないが、兄上とアルメリアには会って挨拶がしたい。




バルケル伯爵邸に着いて、兄上から話を聞いて驚いた。


父上がアルミナ島に幽閉されただって? 

話には聞いたことがあるが、一生縁がない島だと思っていたのに・・・。

欲に目がくらんだ父上の末路が、アルミナ島だったとは・・・。


僕は、身内の不幸を嘆くよりも、ミウを殺したあの父に、当然の報いが返って来たのだと思った。

そして、もう二度と会うことはなく、僕の人生がかき乱されることもないのだと思うとほっとした。


厩舎に行くと、リミーが僕の顔を見て嬉しそうに嘶いた。

僕は愛馬リミーに乗って、魔物の森に向かった。


ミウに、会えるのかどうかは、まだわからない。

でも、どうしても期待してしまうんだ。

だって僕が生き返ったから。


あの場所で曼殊沙華の花の力で、僕は生き返った。

だったら、ミウだって、同じことが起きてもおかしくないだろう? 

あの場所で、胸に供えた曼殊沙華の花の力で・・・。


僕とリミーは、森を抜け曼殊沙華の草原に出た。

相変わらず真っ赤な花が咲き乱れ、まるで赤い海のようだ。


ああ、もうすぐだ。もうすぐミウに会える・・・。


家が見えた。僕たち二人の家だ。

ミウは中にいるのだろうか・・・。


ドキドキしながら馬を降り、リミーを厩舎につないだ。


ああ、心臓がおかしくなりそうだ。

どうか、ミウ、生きていてくれ。


祈る気持ちで一歩一歩、玄関のドアに向かって歩いた。


ガチャリ・・・

ドアが開いて中から出てきたのは・・・、ミウだった。


白いシャツに茶色のズボン、水色の肌に、大きく尖った左右に突き出た耳、吊り上がった金色の瞳と雪のように白く長い髪・・・

いつもの姿で、洗濯物を入れた籠を持って出てきたところだった。


「ミ、ミウ!」

僕は思わず叫んだ。


ミウがドサッと籠を落として、驚いた顔をして僕を見ている。

胸元の青いガラス玉が揺れてキラリと光った。


ミウ、驚きすぎて、声が出ないの?  

「ミウ、生きていたんだね。僕は君を、迎えに来たんだ!」


「リ、リウ!」

ミウが僕の名前を呼んで走って来る。


僕だって両手を広げてミウに向かって走り出す。


「ミウ、会いたかった。」

僕は、ミウをこの手で抱きしめた。

ミウの温もりが僕に伝わってくる。

ああ、僕はやっとミウを取り戻したのだ。


「リウ、リウ、会いたかった。」

ミウはぽろぽろと涙を流して僕の名前を呼んだ。

僕だって涙が溢れて止まらない。


「ミウ、愛している。僕たち本当に結婚しよう。」


「王女様は?」


「あの結婚式は形だけの嘘だったんだ。王女様は、本当は別の人と結婚したかったんだ。だから、もう、関係ない。ミウ、愛してる。」


僕はミウの唇に僕の唇を重ねた。

もう、二度と離さない。絶対に誰にも奪われない。

僕はミウをギュウっと抱きしめた・・・。





その後、僕たちは愛馬リミーに乗って伯爵邸に向かった。

僕が手綱を握り、ミウは僕の後ろに乗って腕を回し、僕の身体をぎゅっと抱きしめた。

服越しにミウの体温を感じる。

ああ、ミウが生きているんだって実感できて、すごく嬉しくなる。


馬に揺られながら、ミウは自分の身に起きたことを話してくれた。


家に着いてベッドに寝かされたことは、うっすらと記憶に残っていたらしい。

でも、その後、引きずり込まれるように眠ってしまった。


目が覚めたら、すごく喉が渇いていてお腹も空いていて、でも、力が入らなくて歩けなくて・・・、這いずるようにして台所に水を飲みに行き、食べものを食べたそうだ。


それからしばらくは、食べては寝てを繰り返し、元に戻るのに、数日かかったと話してくれた。


「リウは王女様と結婚したんだと思ってたから、もう二度と会えないって思ってた。だから、迎えに来たって聞いて、すごくびっくりしたんだよ。」

嬉しそうにミウはそう言った。


僕はイーステア王国の話をして、そこでなら、ミウ族と人間が結婚できるんだって話したら、「良かったあ」って、ミウは嬉しそうな声を上げた。


森を抜けると用心のために、ミウは人間の姿に変身した。

イーステア王国なら、周りの目を気にせずに、ミウのそのままの姿で暮らすことができるのにね・・・。




伯爵邸に着くと、兄上もアルメリアもすごく喜んでくれて、アルメリアはぽろぽろ涙を流して歓迎してくれたんだ。


僕たちは一晩部屋を借りて、翌朝リミーに乗って、セルデの港町に向かって旅立った。


一ケ月後の約束した日に、港の宿でディシュバンさんと合流した。

ディシュバンさんも、この国では人間の姿に変身している。


「めんどくさいが、命には代えられないからな。」

ディシュバンさんは、そう言って笑った。


僕はミウを紹介した。


「僕のお嫁さんになるミウです。」

「ミウです。お世話になります。」


「そうか、お前さんの恋人は生きていたんだな。良かったな。」

ディシュバンさんもすごく喜んでくれた。




翌朝、漁船に乗り込み、僕たちはイーステア王国の土を踏んだ。


「わーっ、ミウと同じ人がいっぱいいる。」

父親以外のミウ族を初めて見たミウは、目を丸くして喜んでいた。

そしてミウは、安心して人間の姿を止めて、本当の自分の姿に戻った。


それから僕とミウは、ディシュバンさんに教えてもらいながら、役所に行って手続きをした。

この国の住人になるための手続きはややっこしかったけど、ミウと結婚できるんだって思ったら苦にならなかったよ。


そのときに知ったんだけど、この国は王族はいるけど、それ以外は皆同じ身分で、貴族という身分はないそうだ。平民という言葉もなく、皆一律に、国民とか市民とか呼ばれているらしい。


金貨はまだ残ってたから、ディシュバンさんにたくさんお礼をして、残った金貨で厩舎付きの小さな家を買った。

僕たちが着る婚礼衣装はどこで買うのか聞いたら、「ほとんどの人がレンタルだよ」って、ディシュバンさんの奥さんが教えてくれたから、僕たちもレンタルにした。




そしてようやく僕たちは、この国の神殿で結婚式を挙げた。

立会人は、神官様じゃなくて、ディシュバンさんと家族の人たちにお願いした。


ミウは真っ白なウエディングドレスに身を包み、すごく嬉しそうで、でもちょっぴり恥ずかしそうにしていた。


ミウ、君はとってもきれいだよ。

恥ずかしそうにもじもじしている姿も、すごく可愛い。



僕たちは、ミスティカ神ではなく、名前がない神様の前で、永遠の愛を誓ったんだ。


「ミウ、これからはずっと一緒だよ。もう、僕は君を離さない。永遠に愛してる。」

「リウ、ワタシも永遠に愛してる。」


ミウが少し照れた顔で愛を誓った。

ふふっ、やっぱりミウはとっても可愛い。


僕はミウの唇に、そっと優しく誓いのキスをした。




 数多い小説の中から、「ミウとリウと曼殊沙華」を見つけて、最終話まで読んでくださり、誠にありがとうございました。

 初めから、ハッピーエンドで終わる予定でしたが、話しの途中がとても暗くて・・・、こんなに暗くて読者の皆様が離れてしまわないかと、実は心配しておりました。

 ですが、暗い内容にも関わらず、めげずに最後まで読んでくださった皆様には、感謝の気持ちでいっぱいです。面白かったと思っていただけたら、なおのこと、たいへん嬉しく思います。

 私が書きたかったテーマは、稚拙ながらもなんとか書けたかなと思います。読んでくださった皆様に、何かを感じていただけたら幸いです。

 よろしければ、評価、ブックマークをよろしくお願いいたします。

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