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ミウとリウと曼殊沙華  作者: 矢間カオル


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46話 伯爵の計画

ついさっきまで、怒りを含んだ物言いだったバルケル伯爵が、急に態度を変えた。

ミウに話かける言葉が、がらりと変わって優しい口調になる。


「ああ、なれるとも。ミハイルは王女と結婚してこそ幸せになれるのだ。だが、とても悲しいことに、王女は病気でな。どうだ? ミハイルを助けると思って、お前の血を分けてくれぬか?」


「ミウの血を分けてあげたら、リウは幸せになれる?」


「ああ、もちろんだ。王女の病気が治って元気になれば、ミハイルも安心して暮らせるからな。これから毎日お前の血を王女に届けたいと思うのだ。ミハイルの幸せのために、ここは承知してくれるか?」


「いいけど・・・、どうして毎日? ミウの血で王女様の病気は治らないの?」


「・・・実はな。王女の病気はすごく重い病気なのだ。お前の血が五本でも治らなかった。だから、毎日毎日一本ずつ飲めば、病気は治らなくても元気でいられるだろう?」


バルケル伯爵は、王女が二ヶ月後には死んでしまうことを内緒にしておきたかった。

どうせ死んでしまうのだから、血を分けてあげる必要はないと、ミウが言い出さないか心配したからであるのだが・・・ 


「五本で治らないのだったら、もっとたくさんあげたらいい。」

ミウの言葉はこれだった。


ミウの涙は止まっていて、まっすぐにバルケル伯爵を見つめている。


「もっとたくさんとは?」


「ミウの父さんが言ってた。ミウの血は特別だって。ミウの血をたくさん飲むと、どんな病気も治るし、命の交換もできるって。五本で治らないのだったら、それは血が足りないから。だったらもっともっと、たくさん飲めばいい。」


「本当にいいのか?」


「リウが・・・、リウが幸せになるんだったら、それでいい。」


「ミ、ミウさん!」

思わずアルメリアが横から口を出した。


「ミウさん、そんなことをしたら、あなたが死んでしまいます。」


「アルメリアは黙っていろ!」

バルケル伯爵の怒鳴り声が響く。


「ミウさん・・・」

これから起こる惨劇が、アルメリアの頭の中に浮かび上がる。


バルケル伯爵は持ってきたカバンの中から注射器を取り出した。


このままでは、ミウさんはお義父様に殺される・・・


バルケル伯爵は目の前のミウに集中し、頭の中でどちらがより多くの利益をもたらすかを計算しはじめた。


もし魔物が死んでしまっても、王女が助かるのなら、その方が得になるのではないか?

魔物の命と王女の命、そんなもの比べるまでもなく、どっちが重要かは明らかだ。

初めの計画では、王家に恩は残せても二ヶ月後には縁が切れてしまう。

だが、王女が死なずに生きるとしたら話は別だ・・・。

上手くいけば、一生王家と深いつながりが持てるかもしれないのだ・・・。

ああ、これは良い。

ますますわしに大きなチャンスが巡って来たのだ・・・。


バルケル伯爵は自分の計画にうっとりと酔いしれていた。

だから、アルメリアがそっと部屋から出て行ったことに、気が付かなかった。




アルメリアは、王都に来たのは初めてで、土地勘が全くない。バルケル伯爵とリウが泊まっている宿の場所もわからない。

だが、ここまで三人を連れてきた馬車の御者なら知っているはずだと思った。


屋敷の出入り口には、警備をしている騎士がいる。

「お義父様に用事を頼まれたので私は出ますが、あなたはここでしっかりと警備を続けてくださいね。」


馬車の御者には

「お義父様が宿に忘れ物をしたそうです。私が取りに行くように頼まれました。急いで宿まで行ってください。」


バルケル伯爵の信頼が厚いアルメリアの言葉を、二人とも信じた。


馬車はリウがいる宿に急いで向かった。宿は幸いなことにすぐ近くにあった。


「すぐに戻って来ますから、ここで待っててくださいね。」


アルメリアは宿の受付まで急ぎ、ミハイルの部屋番号を聞くと、走った。

貴族女性が人前で走るなんてもっての外であるのだが、そんなことは気にしていられない。

一秒でも早くリウに報せなければならない。

部屋番号は二階の二〇七号室。


あった!

ドンドンドン、

焦る心を映すように激しくドアをたたいた。


「ミハイル様、開けてください。私です。アルメリアです。早く、急いで!」


そのときリウは、明日に帰る荷物の準備をしていたのだが、激しくたたかれたドアの音よりも、アルメリアの声に驚いた。


何故、アルメリアが王都にいるんだ? 


ガチャリとドアを開けると、アルメリアが泣きそうな顔で立っていた。


「ミハイル様、早く行かないと、ミウさんが殺されてしまいます。馬車を待たせていますから早く乗ってください。」


「ミウが? いったいどうして?」


「お話は馬車に乗ってからで。それよりも早く、急いで!」


「わかった。」

リウは荷物をそのままに、アルメリアと一緒に馬車まで走った。


馬車の中で、アルメリアは息を切らせながら事情を説明する。


「お義父様は、私とミウさんを王都の屋敷に住まわせて、毎日一本ずつ血を届けるつもりだったようです。ですが、今日、王宮内の神殿に連れていかれて・・・」


「ミウと君は、神殿の中にいたのか?」

リウが驚き目を瞠る。


「はい。何も聞かされずに、連れていかれて・・・、お義父様に、ミハイル様と王女様の結婚式を見せられたのです。」


「そ、そんな・・・」

リウはその衝撃に耐えきれず、頭を抱えた・・・。


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