08 村人と仲良くなるのは難しい
インサニアでございます。
本日の遅めの昼食はバーベキューですわ。炭火でじっくり大きなお肉を焼いていますのよ。
「いやー、熊肉っておいしいですわー!」
ヴィア様が森に行って捕まえてきたのはゴールデンハニーベアー。
はちみつが大好物で、腕ははちみつ漬けの肉になっており甘みのある肉になっている。
いや、生きてる動物の肉がはちみつ漬けになったりするものではないとは思うんですけども、まぁファンタジーってやつですわね。
はちみつ効果で筋肉質な熊肉も柔らかく、ほのかにはちみつの香りがするお肉。うーん、コメが欲しいですわね。
稲科っぽい植物のワイルドライスを来る途中に見つけましたけど、アレは米ではありませんでしたわね。白米より栄養価は高いのわかるんですけど、わたくしが食べたいのは白米なのですわ。
うーん、こういう世界ですと東の地方を探すと中華っぽい日本っぽい国があったりするもんですけど……。この世界地図、平面でしたわね。
世界の中心にわたくしたちが暮らす大陸がドーンとあって、世界の果ては崖のようなデザインでしたわね。
実際に世界の果てを見に行って地図を作ったかどうか怪しいところですけれども、そうなってしまうとアジアンな食材を探すのは難しいかもしれませんわ。
「んー…そういえば、そろそろ村人が戻ってくるんじゃないのか?」
二人でほぼ完食したころ、思い出したようにヴィア様が村の方に視線を向ける。
「そうですわね、サニー」
「はい、お呼びでしょうか?」
声をかけると、村の真ん中に村人たちが戻ってくる。向こうできれいな服に着替え、栄養のある食事のおかげで肌つやが良くなっている。
「うんうん、いい感じに健康になってきたようですわね」
「しっかり食事、運動、勉強を重ねていましたので」
さすがサニー。メイドとして有能ですわね。
「その結果…少々問題がおきまして」
サニーの表情が曇る。
村人の中で一人雄たけびを上げて走ってくる男がいた。
うん、あれはわたくしに掴みかかった奴ですわね。
「私の弟子だそうです。もちろん私は弟子をとった覚えはありません」
「まぁ、いいですわ」
昨日に比べたらずいぶんと筋肉量が増えて、逞しくなりましたわね。
「俺はお前を認めねぇー!」
まだそんなこと言っていますのね?
振りかぶったこぶしはわたくしの顔を狙っていますわね。レディの顔面狙うって紳士のすることではありませんのよ?
えーっと、たしか彼はジョンでしたっけ。
「レディの顔を狙うんじゃありません!」
腰を落としてジョンの腹部に掌を叩きこむ。
まったく、紳士としての心得も教え込まないといけませんわね。
「お嬢様ー!手加減してください!」
「あ、やってしまいましたわね」
整地が済んでいたせいで吹き飛ぶ彼を止める緩衝材が無いですわー!
「サニア、もう少し周りを見んか」
崖から落ちる直前でヴィア様が捕獲してくださいましたわ。
わたくしがやらかすと踏んで崖側で待機していてくれるんですから素晴らしいですわね。
「すみません。でもこういうのは最初に力関係を示しておいた方がいいかと思いましたのよ」
「わからんでもないが……中身が出なくてよかったな」
「その辺はちゃんと加減していますわよ。加減しなかったら穴空いてますもの」
……あれ?村人たちから向けられる視線が冷たいですわ。あと、おびえている感じもしますわね?
なんかわたくしやってしまいましたの?
「…すっげ、サニーさんよりやばい一撃だぁ!」
……あら、ジョンってばギフト持ちでしたのね。
『鋼の肉体』
鍛えれば鍛えただけ、強く硬くしなやかな筋肉が育つ。ちょっとしたナイフの攻撃も耐えきれる肉体を作ることもできる。
鍛え上げれば普通の人相手で肉弾戦では負けなくなるが、内臓などは鍛えられないので内部衝撃をぶつけてくる攻撃には弱かったりする。
「わたくしはサニーの主人ですのよ?従者より弱い主がいると思って?」
「割といると思います、お嬢様」
「従者って主人を守るためにいるんじゃないのか」
ヴィア様とサニーの声を右から左に受け流しながらジョンに近づく。
「わたくしの事、認めなくても結構ですわ。
ただ、この村に住まわせていただきたいだけですの。なにせほら、もうわたくし家を建ててしまいましたもの!
ぜーったいに出ていきませんわ!おーっほっほっほ」
なんか滑ったみたいに周りの反応が寂しかったので、高笑いもほどほどに村人の家を設置することにしましたわ。
見本の家がそのまま住める家になった時の皆様の表情は見ていて面白かったですわね!
学園にいたころは、友人たちは特に反応してくださらなくて寂しかったんですのよね。
でもここなら怒るお父様も、教員もいませんもの。使えるものは何でも使って自由に過ごしますわよー!




